サマーシーズン到来!!
夏といえば何を思い浮かべますか?
……そう、怪談!!!!!
実際は季節に限らず賑わいを見せている「怪談」ですが、最近仙台でも怪談イベントが精力的に行われているのをご存知でしょうか。
今回、怪談イベントを主催する方の声を聞きたいと思い立ち、「東北怪考」の主催・熊谷拓生さん(以下熊谷)、そして「仙杜怪談」主催・佐熊迷策さん(以下佐熊)にお話を伺いました。
▲写真左から熊谷拓生さん、佐熊迷策さん
熊谷拓生(左)
バンド「jualalai」「HILDOID」のメンバー計6人で構成される団体「東北怪考」の主催。
佐熊迷策(右)
宮城県で怪談・奇談・民話を収集する。
参加した方が「聞く・語る・交流」のできる怪談オフ会を目指し「仙杜怪談」を主催。
━怪談イベントを仙台で主催しようと思ったきっかけを教えてください。
佐熊:岩手には遠野物語、青森・福島でも怪談会があったり宮城でも怪談師が育ってきていたりと、東北っていうのは怪談の土壌がすごいあるんですよね。
しかし実際の怪談イベントを観てみると、ゲストの怪談師がメインでお話されて、お客さんが怖がるという図式のものが多くて。自分はみんなが怪談を話せる会をやりたかったんです。
19歳の頃から怪談を収集していますが、取材をしてみると自分自身の怪談エピソードを話したいという方が多くいるんですよ。その中で怪談を話したり生まれる土壌もあることだし、そういう会をしたいな、と思ったのがきっかけです。
実際やってみたらやっぱり話してくれる方が多かったですね。
熊谷:僕自身、昔から怪談が好きで、特に吉田悠軌さんのファンだったこともあり、東京で開催されている怪談イベントにも足を運んでいました。そんな中で、「いつか仙台にも吉田悠軌さんをお招きできたら」と思ったことが、イベントを始めるきっかけでした。
もともとは、吉田悠軌さんをお呼びするという一度きりの企画のつもりだったのですが、実際に足を運んでくださったお客様が喜んでくださっている様子を見て、「もう一度やってみよう」と思い立ち、2回、3回と続けていくうちに、気がつけば2021年の初開催から今年で5年目、次回で第9回目を迎えるまでになりました。
吉田悠軌さんによる怪談。「怪談ライブBarスリラーナイト公式YouTubeチャンネル」より
━怪談に興味を持ったのはいつ頃ですか?
熊谷:いわゆる怪談が好きっていうのは、怖い話やホラーが好きなのでっていうのがあるんですけど、僕は40代後半なので僕の年代とか僕の上の年代って、「あなたの知らない世界」※1とか、子供の頃から見てた世代なんですよ。稲川淳二さんの怪談イベントも行ってましたし。
実際に「怪談」に深く触れるようになったのは10年くらい前からかな?北野誠さんの茶屋町怪談※2を知ってからです。当時まだ売れてなかった田中俊行さん、松原タニシさんがピックアップされてた頃にYouTubeで彼らの怪談を聞いて面白いなと思ってました。
吉田悠軌さんについては「緊急検証!」シリーズ※3から知りました。
北野誠さんと松原タニシさん出演回。「茶屋町怪談」より
田中俊行さん公式チャンネル「トシが行く」より
佐熊:僕は幼稚園の頃からです。祖母が怪談の本を持ってたんですよ。稲川淳二さんの本や千葉幹夫先生の『わたしは幽霊を見た』とか。身近に怪談がこんな感じにあったというのがまずあって、自分から怪談を語ろうと思ったきっかけになったのは小学生の時に買った『新耳袋』なんです。読んでみて、今まで見聞きした怪談より身近に感じられるエピソードがあったんです。
※1:1970年代に日本テレビ放送網にて、一般視聴者による恐怖・心霊体験を再現ドラマ化して放送されたテレビ番組。
※2:2015年からMBSラジオで放送されているホラー番組。
※3:CSファミリー劇場で放送されていたオカルト番組。2024年12月27日の放送をもって最終回を迎えた。
━好きな怪談師はいらっしゃいますか。
佐熊:やっぱり東北で活動されている怪談師の方は全員リスペクトしています。
青森からいけば弘前乃怪の鉄爺さん、鶴乃大助さん、高田公太さんとかから始まって、福島だと会津夕星怪談会のよめぼうさんとかずぼうさん、怪談収集家の煙鳥さん。宮城に縁のある怪談師の由乃夢朗さんも好きですね。
由乃夢朗さんのYouTubeチャンネルより
熊谷:これまで「東北怪考」にお招きしてきた怪談師の皆さんは、大好きな方々で、これからも興味が尽きることのない存在です。
中でもあえて一人挙げるとすれば、やはり吉田悠軌さんです。書籍も10冊ほどではありますが所持してますし、個人的にも深く惹かれている怪談師のお一人です。「東北怪考」にとって、なくてはならない大きな存在だと感じています。
━怪談、怪談イベントの魅力を教えて下さい。
熊谷:怪談イベントの魅力は「非日常」を味わえること、そしてその体験を参加者みんなで共有できるところだと思います。映画などにも通じるものがありますが、家に帰るまで、そして帰ってからも何度も思い返せる——そんな余韻を楽しめるのが醍醐味かと思います。
怪談を聞いているその瞬間の怖さはもちろんですが、家に着いてからもじわじわと心に残る…そんな“怖さの余韻”に浸れるのが、怪談イベントならではの魅力だと思います。
YouTubeや配信で楽しむのも素晴らしいですが、やはり“生”で観て聴く怪談は、体感として得られるものが格段に違うと思います。
佐熊:はじめに考えてみたときは「怪異の疑似体験ができること」かな、と思ったんですが、じゃあなんでお金を払ってまで来るかっていうのを考えると、「怪異を体験した人」や「怪異を語る方」に会いたいというのがあると思うんですよ。
しかも「仙杜怪談」は原則的にクローズドなイベントで、いらっしゃって語る方はほぼ地名とかそういうのをリアルに出しているので、自分の身近にそういう怪異があるっていうのを含めて、異次元体験ができる装置になってるんじゃないかな。
「仙杜怪談」という空間で異次元体験ができて、お家に帰ってその平穏が取り戻せるっていうのが多分「仙杜怪談」の魅力だと思います。
━主催して良かったことはありますか。
熊谷:枚挙に暇がないほどたくさんありますが、何よりも大切にしているのは、お客様に喜んでいただけること、そして演者の皆さんにも“出演してよかった”と思って頂けることです。その喜びを実感できた瞬間が、僕らにとって何よりのモチベーションになります。
中でも印象的だったのが、以前、体にご不自由のあるお子さまがいらっしゃるお客様から、こんな話をきいたとDMいただいたことです。お子さまは修学旅行に参加できなかったそうなのですが、「東北怪考」のイベントをご覧になった際に「怪談っていいね」とおっしゃっていたとのことで、そのことをDMでお伝えくださいました。スタッフ一同、本当に嬉しく、大きな励みとなったエピソードの一つです。
佐熊:よかったことは単純に取材ができる回数が増えたことですかね。「仙杜怪談」というイベントをしてるこういう者ですって言うと、取材ができるっていう。
XのDMで「こういう話あるんですけどどうですか」っていうお声がけされて取材した方もいらっしゃいますし、そういう方に限って一人で7、8話持ってくるんですよね。
あとは今回のようにウラロジ仙台さんに取材して頂き「東北怪考」の熊谷さんと出会えたりと、人の繋がりが増えたことです。
━主催として心掛けていることを教えてください。
熊谷:何より大切にしているのは、お客様と演者の皆さまにご満足いただくことです。
イベントの告知段階からワクワクしていただけるよう、フライヤーのデザインには特に力を入れています。また、当日もお客様に心地よく過ごしていただけるよう、できる限り細やかな配慮を心がけています。
スタッフは、長年の付き合いがあり、信頼関係のある気心の知れたメンバーだけで構成しています。そのおかげで、お客様や演者の方々に対してもスムーズで統一感のある対応ができていますし、「一を聞いて十を知る」ような頼れる仲間たちには、いつも支えられています。
佐熊:「仙杜怪談」は「話す・交流する」イベントなので、その部分でトラブルを出したくありません。
例えば、怪談を聞いてる時にヤジが飛んだり、談話中に「それは違う」って言われてしまったりとか、交流してる時にナンパのような言動などがあれば注意します。
あとは居心地のいい空間を作ることですかね。私のイベントって、会議室で2時間半話すんですよ。
私がトップバッターで怪談の概要を話して、その後参加者の方に怪談話をしてもらい、また最後に私が話していた怪談の結末を話すという構成になっていて、怪談話の合間に細かな休憩時間を設けて参加者の皆様が感想を話し合ったり交流できる機会を設けるというのが主催として心がけるものですかね。
━イベント告知などありますか?
佐熊:今年の8/13(水)~8/16(土)金蛇水神社で開催されるイベント「金蛇百鬼夜行」の8/13 第一夜「みやぎ怪異譚」にて宮城妖怪辞典の佐藤卓さんと怪異談義を行います。

また、9/27(土)に佐熊が主催致します「仙杜怪談」1周年祭を行う予定です。
通常の怪談交流会にあわせ、佐熊が独演を行うのと、怪談宴会の三部構成を企画中ですので宜しくお願い致します。
熊谷:今年の10月4日(土)に「東北怪考」の「 第八考」 を開催します。詳細は今後発表しますので「東北怪考」のX(旧Twitter)にてご確認ください。

インタビューを終えて
お二人の根底にある怪談好き、そして演者と参加者、観客に対するリスペクトが十分伝わるインタビューでした。
お二人をはじめとした怪談ファンの活動によって仙台も怪談イベントが根付き、カルチャーとして発展していくのではないでしょうか。今後の活躍からも目が離せないですね。
インタビュー・執筆:花
お二人のひんやり体験エピソード
※注意書き※
この先怪談エピソードがあります。苦手な方はご注意ください!
ラストは、お二人のガチ怪談で本インタビューを締めさせていただきます。怖いものが苦手な方はお気をつけて。それでは、どうぞ……
━ご自身が体験した恐怖体験(不思議な体験)はありますか。記事に掲載可能なエピソードがあれば教えて頂きたいです。
佐熊:自分に霊感というものはないと思っていますが、集中して変わった体験をしてしまう時期というのがあります。
大学生の頃もその一つでした。
自分はとあるテナントビルにある、コーヒー屋でアルバイトをしておりました。
朝に出社して開店の準備をしますが、バックヤードから店内を通りバイト先まで向かいます。
その途中に、雑貨屋さんがあったのですが、当然いつもは誰もおらず他のテナント同様真っ暗です。
ある日、その店の前を通ると照明は消えているのに、動く人影がありました。
避難誘導灯のごくわずかな明かりの中で見えた姿は、長い髪をした後ろ姿のようでした。
2回目ということもあり、「あ、やっぱり棚卸か早出の方がいるんだ」と思い、バイト先の先輩にそのことを伝えました。
それから間が空き、久しぶりに朝勤務となり、バックヤードから店舗へ向かう通りがら、ふと雑貨屋さんを伺った時。
店舗の少し前に人影がありましたが、動いておらず、私をじっと見ているようでした。
びくっとしましたが、同じビル内で働いている人同士と思い、軽く会釈をした瞬間、その暗い影が、瞬時に店と通路の境界をすり抜けて飛ぶように移動してきました。短く悲鳴を上げ、足が止まってしまい、見えたくないのにその顔を凝視してしまいます。それは、髪は肩くらいまで伸ばし、明るく染めた女性の影なのですが、髪以外が真っ暗で、というと、自律型ロボが浮かんでいるようにも見えます。バイト先に行くとまだ誰もいなかったため、誰かが来る迄一ヶ所作業ができませんでした。
イメージにもありましたがそのビルでは意外と飛び降りが多く、自分が働いていた
頃に女性が1人…と聞いたことがありますが、それが、その雑貨屋さんの店長さんで
ノルマがきつくて思い悩んだ挙句…というまことしやかな噂も聞きましたが、それからすぐに自分も店を辞めてしまったので真相はわかりません。ただ、今でもあの髪以外が真っ暗な人型をしたものが、瞬時に自分のそばに来た時のことは忘れられません。
うつむくように立っていたので、まだ接客をしようとしていたのか、それとも飛び降りた際に原形を留められなくなってしまった顔を見せたくなかったのか。亡くなっても気を使ってたのか…?とは自分の妄想に過ぎませんが、なんだか少し悲しいような寂しいような思いのする出来事でした。
熊谷:小学三年生の夏休みの話です。
当時、うちの地域では「ラジオ体操のあと、午前10時までは家で勉強していること」という学校の決まりがありました。外で遊びたい盛りの小学生には少しつらくて、私も毎朝10時になるのを、窓の外を見ながら待っていた記憶があります。
ある朝のことです。まだ9時半くらいだったと思います。ふと外を見ると、近所の小学一年生の女の子が駆けていくのが見えました。「ずるいな」と思いました。そのとき、私の中で何かがはじけて、「注意しに行くんだ」と自分に言い訳して、気づけば外へ飛び出していました。
一本道の田園風景をその子のあとを追って走っていたんですが、途中で姿が見えなくなって。
代わりに、右手にあった家の垣根の方から、私の名前を呼ぶ声が聞こえてきました。三回、はっきりと。でもそれが、すごく不気味で、怒っているような、恨みがこもったような声でした。思わずそちらを見ると、垣根と家の壁のあいだに、白い塊のようなものが見えたんです。
シーツをすっぽりかぶったような、映画『A GHOST STORY』の幽霊みたいな姿で、地面に足はついていませんでした。その塊は、まるで滑車でもついているかのようにスーッと横に滑っていて。このまま垣根の切れ目を越えたら、姿が全部見えてしまう…そう思った瞬間、「見えたら、夜眠れなくなる!」という恐怖心に突き動かされて、私は全速力で家へ引き返しました。
玄関を開けてすぐ、「幽霊を見た!」と叫んだんですが、母も兄も取り合ってくれませんでした。
「まだ10時前でしょ」なんて言われて。兄には「幽霊って夜に出るもんじゃないの?」と言われ、それを聞いた私はなぜか「確かに」と納得してしまいました。
ただ、それで恐怖が完全に消えたわけではありません。
後日、友達と話しているうちに、夏休み前にその家の女の子を泣かせたことを思い出しました。
「もしかして仕返しだったのかな」と思い、本人に聞いてみたんですが、のらりくらりとかわされて、最後にはその子のお姉さんににらまれて、うやむやになってしまいました。
その出来事は、しばらく私の中で忘れられていたんですが、高校生になって友達と怪談話をしていたときに、ふと思い出しました。
話が盛り上がり、学校帰りに皆で現場に行ってみました。そしたら、あのとき白い塊がいた垣根と家の壁のあいだには、数センチの隙間しかなかった。
人が立って隠れられるようなスペースなんてなかったんです。
そのことに気づいたとき、ようやく「やっぱりアレは、人じゃなかったのかも」と思いはじめました。
今でもときどき思い出します。あの声です。男でも女でもないような、でも確実に怒っていて、恨みのこもったような声。
当時の私は「誰かにそんなに恨まれるようなこと、したかな?」と本気で考えました。
あとで知ったんですが、先祖の霊が子孫に危険を知らせるとき、あえて恐ろしい声で呼びかけることがあるんだそうです。
だから最近では、「守ってくれていた存在だったのかも」と思うようにもなってきました。
昼間の明るい田園風景の中で起きた、あまりにも現実味のない出来事。
でも、白昼夢じゃ片付けられないほど、あの声と白い塊の記憶は、今も鮮明に残っています。