仙台在住の漫画家さんって、どんな生活してるの?【 FILE2:「あいの結婚相談所」作者・加藤山羊先生】

仙台で活躍する人を大調査!『活躍びと探偵事務所』へようこそ 

「仙台 で活躍しているYouTuberって、普段どんなことをやっているの?」
「仙台駅東口にあるあのお店の店主さんは、どうしてああいう取り組みをしているんだろう?」

活躍びと探偵団は、宮城・仙台で面白い活動に取り組み、活躍している『活躍びと』の表舞台から裏で併せ持つ一面を隈なく調査するコーナー。このコーナーではワタクシ、活躍びと探偵の金田一・アレクサンダー様がウラロジ仙台の記者・ライターとしてではなく、探偵として、調査ターゲットのウラ側まで調査するわよ〜!

普段の取り組みや、どんな想いで活動をしているかという「オモテの顔」はもちろん、表舞台では見せない一面や、ちょっとした裏話などググっても簡単には出てこない「ウラの顔」。

アレク様
都内と同じように、宮城県内にも無数の『活躍びと』が存在しているはず。彼らが持つ多様な側面を、調査ファイル(記事)として皆さまにシェアしていけたらと思っているわ♡

※調査ファイル内では、フェミニンな言葉遣いは封印することにしているの。
フフ、それがまさにワタクシの「オモテの顔」なのだわ…。

そして今回はウラロジ仙台編集部メンバー・花が助手として調査に参加するわ。

彼女、今回の活躍びとの大ファンみたいよ。

アレク様、本日はよろしくお願いします!
アレク様
ファンだからって浮かれずキッチリ助手の務めを果たしなさいね!

今回の活躍びと・仙台で活動する漫画家・加藤 山羊先生

今回は仙台に住み漫画家として活動中の加藤山羊先生を大調査!

普段は三児の母として家事や育児をこなしながら漫画を制作されているパワフルな方で、過去の作品を自ら電子書籍化するなど積極的な活動をされています。

基本プロフィール

原作者である姉の矢樹純先生と共に『ビッグコミックスピリッツ 増刊号』(小学館)にてギャグ漫画「合コン地獄変」でデビュー。ストーリー漫画へ転向し、『イノセントブローカー』やホラー漫画『女囚霊』等を発表。代表作である『あいの結婚相談所』は2017年にドラマ化された。最新作短編集『やぎのふしぎ』がKindleストアコミックシーモアなどの電子書籍ストアにて発売中。

Twitterで加藤先生の最新情報もチェック!

聞き込み調査

聞き込み調査では、加藤先生と共に原作担当として作品を発表されてきた長年の相棒であり加藤先生のお姉様にあたる作家の矢樹純先生前提情報を証言していただきました!

▼矢樹純先生プロフィール

加藤先生と共に原作担当として「合コン地獄変」でデビュー。
漫画原作者として「あいの結婚相談所」、「バカレイドッグス」シリーズ等を発表。

現在は小説「夫の骨」にて2020年日本推理作家協会賞を受賞し小説家としても活躍中。

矢樹先生
子供の頃から《自分より格段に行動力がある》という印象でした。そんな妹だから漫画家になるという道を選べたんだと思います。妹に一緒にやろうと誘ってもらっていなかったら、自分は創作を仕事にすることはありませんでした。

漫画家の加藤山羊への印象は《努力家》だということです。 彼女は美大や絵の専門学校に通った経験はなく、デビューはギャグ漫画でしたが、その後ストーリー漫画に転向してからは作画に要求される技術レベルが格段に高くなっていきました。
連載中、下の子をおんぶしながら、上の子にいたずらされないように子供の手の届かないカウンターで立ったまま原稿を描いていると聞いて、自分には絶対に真似できないと思いました。クロッキーやデッサンなど、基本のトレーニングを今も毎日しているそうで、漫画への熱意を持って継続して努力する姿勢は素直に凄いと思います。

ただならぬ努力ですね。
矢樹先生
あと、妹についてもう一つ強烈な印象は《怖い》です。自分は子供の頃からかなりの怖がり(なのに怖いもの好き)だったのですが、妹の赤カブト(※漫画『銀河-流れ星 銀-』に登場する人食い熊)のモノマネに泣いて逃げ回ったり、妹に頼んで描いてもらった怖い絵が怖すぎて頭を離れなくなったりしました。
アレク様
赤カブトのモノマネ…?凄い強烈なエピソード。興味深いわね!

こっそり!尾行調査

さっそく加藤先生の生活をこっそりと1週間観察してみました。

一体どんな生活をされているのでしょうか?

(※締め切り前日・当日は日付をまたいだり、朝までのこともあるみたい…。)

繫忙期のスケジュール(休日)

日中は集中!パターン

土日のどちらか、朝から子どもを夫にお任せして出かけてもらうこともある。(新型コロナウイルス感染症の感染拡大前は泊まりで連れ出してくれたことも)自分の昼休憩以外はずっと仕事。子どもの帰宅後、夕食はみんなで食べて、その後も仕事…。

見守りしながら…パターン

休日子どもが一日中家にいる時は、子どもたちは互いに遊んだり(ごっこ遊びが多い)喧嘩したり。適度に見守りつつ、仕事。コロナ下の自粛中ではこのパターンがぐっと増えました。繁忙期のスケジュールは以上になりますが、落ち着いている時期は子供が就寝後の仕事はしない様子。

休日で完全オフの時には家族と過ごせる時間も増えるので、県内ドライブに出かけるのが楽しみのようです。

突撃!本人へ聞き込み調査

うーん、オフの日以外は毎日大変そう。

早速、ご本人にお話を伺いました!

加藤先生、ズバリ申し上げます。普段からお子さんの面倒も見ながら、夜遅くまで漫画制作のお仕事をしていますね?矢樹先生から聞き込みした情報にもありましたが、家事・育児と並行してのお仕事は大変そうです。
加藤先生
はい、その通りです。子どもを持ったことで夢を諦めた、という風にはしたくないという思いで、授乳しながら原稿を描いたりしていましたね…。とはいえ夫の協力やアシスタントさんの助けが無ければ初期に詰んでいたと思います。本当に感謝です。

アレク様
加藤先生の努力家な一面についても矢樹先生から伺いました。

加藤先生
私はわりと不器用な人間で。それに気付くのも遅く、天賦の才が無いということに気付いたのは大人になってからでした。「努力は裏切らない」という信念はありますが、好きなことだから頑張れる、というのはあるでしょうね。また才能というのは努力でいくらでも磨くことができるとも思っているので、足りない分を頑張らなきゃな、と思っています。

仕事場の壁一面に貼られているデッサンの画像からも、日々の努力の様子が垣間見えます!(ちなみに左側に貼られているのはウラロジ仙台のライター・花が過去に送ったファンレター。時々読み返して下さっているようです)

加藤先生は元々青森出身で、その後に上京なさっていますね。現在は結婚のご都合もあり、漫画家として活動しながら宮城で生活されていますが、宮城についての印象などお聞かせください。
加藤先生
青森と比べて寒くないというのとあまり雪が降らないという印象ですね。(雪かきなどが無くて)楽と言えば楽だけど、ちょっと寂しくもあったりします。なので宮城で降ると「雪だ~!」と嬉しくなります。

漫画家のお仕事の流れ

原作者の矢樹先生とどの様にやり取りしながら漫画を制作されるのか教えて下さい。

加藤先生
1)原作者からは文章で書かれたシナリオが届きます

2)絵にするに当たり確認事項や提案があれば原作者にLINEやメールで問い合わせ、なければそのままネーム(漫画制作にあたりコマ割りやキャラ、セリフ等の配置を決める下書きの設計図)に入ります。

加藤先生
3)ネームを進めながら疑問点や変更の提案があれば原作者に確認します。

4)ネームの段階で担当編集者さんにお見せします。ここで変更などあれば、原作者と話し合って修正します(絵だけの部分であればこちらで修正します)

加藤先生
5)下書き〜ペン入れまでは原稿用紙に手描きで行い、PCに取り込みます。

加藤先生
6)ベタ、トーン、修正、素材を用いた背景と効果はデジタルで行います。

加藤先生
7)編集さんに原稿の完成データを送信します。

矢樹先生いわく「行動力があるからこそ加藤先生は漫画家になれた、そして彼女に誘われなければ自分は創作の仕事をすることはなかった」とのことですが、ご自身ではどう思われますか?
加藤先生
確かに「一緒に漫画をやろう」と言い出したのは私からでした。ただ、私も姉が居なかったらおそらく漫画家になっていなかったと思います。姉の才能を信じていたんですよ。「姉は絶対面白い作品を書くはずだ」という確信があったので。

アレク様
加藤先生と矢樹先生のお互いの才能へのリスペクトを感じられるエピソードですね。

加藤先生のホラーの原点

アレク様
個人的に前情報でお伺いしていた「赤カブトのモノマネ」のエピソード、凄く気になったのですが…?

加藤先生
憑依系のモノマネをすることがよくありまして。私の子供たちが小さい時に本気で脅かしたら皆泣いてました(笑)。怖い話をすることも得意で、漫画で描くことに限らず人を驚かすことが自分でも好きなんでしょうね。
今お聞きした「怖い話をするのが得意」と仰る通り、先生ご自身ホラーがお好きでホラー漫画も数多く発表されていますが、ホラー好きとしての原点や影響を受けた作品などはありますか?
加藤先生
ホラー漫画は※1「ホラーM」や「サスペリア」等をよく読んでいました。また子供の頃ビデオレンタル店が近くにあったので、創作の原点となる日本の「リング」や「女優霊」といったホラー作品をよく借りていました。漫画だといがらしみきお先生の「I」とかも怖くてゾクゾクしました。※2楳図かずお先生の作品の影響もあると思いますし、※2御茶漬海苔先生の作品も好きでした。

※1「ホラーM」「サスペリア」
…日本のホラー漫画雑誌。数多くのホラー作家を輩出した。

※2楳図かずお先生・御茶漬海苔先生
…日本のホラー漫画家

ホラー作品の原点やエピソードを教えて頂いた所で、ドラマ化もされた作品「あいの結婚相談所」についても詳しくお聞きしたいと思います!

代表作「あいの結婚相談所」について

▼「あいの結婚相談所」あらすじ
「成婚率100%」の結婚相談所を営むミステリアスな元動物行動学者・藍野が、思いがけない方法で依頼者を結婚に導く物語。「結婚の意志が決定するまでは直接の接触は禁止」としてオンライン通話でのやり取りしか出来ない依頼者達がどの様に結ばれていくか、1話完結型でコミカルかつ感動的に描かれた作品。

2017年には俳優・山崎育三郎さん主演でドラマ化された。

アレク様
「あいの結婚相談所」がドラマ化された時の感想を聞かせてください。ドラマ化されたことで心情や漫画の制作など変化したことはありましたか?

加藤先生
「あいの結婚相談所」は、情報量も多く構成が難しいので毎度ネームを描くのも原稿も一苦労でした。ただ、本当に面白い作品にしようと思って頑張っていたので、ドラマ化の話が来た時には飛び上がるほど嬉しいと同時に「間違ってなかったんだ!報われた!」という気持ちになりました。その後は自分達は面白い物を描いているんだ、と自信をもって描けるようになりました。

「あいの結婚相談所」作中に宮城県在住のキャラが登場するエピソードがあり、その回がドラマ版でも放送されましたが、こちらのエピソードは宮城に住んでいることが経験となって生まれたのでしょうか?

加藤先生
「あいの結婚相談所」に宮城県在住のキャラが登場したいきさつですが、実はシナリオ構成上、全くの偶然でした。ですが、この回は当時宮城に住んで7年で、その中で震災も経験し、皆で一緒に立ち上がっていこうという気持ちを込めて描いた回でした。その回がドラマでも取り上げられたことは、とても嬉しかったです。

今後の目標

アレク様
今後の目標などをお聞かせ下さい。

加藤先生
姉の矢樹が小説家としてブレイクした為、漫画原作を作って貰い一緒に漫画を作る機会が現在なくなり寂しい気持ちはあるのですが、これをいい転機だと捉えて一人で漫画作りを頑張らなきゃなと思います。
現在SFのネームを制作中なので、もし形になり発表されたら応援宜しくお願い致します。

なんと!今回、ウラロジ仙台宛に加藤先生による描き下ろしサインを頂きました!

「あいの結婚相談所」に登場する藍野所長と助手のシスター、そして「やぎのふしぎ」の作品に登場するジロー君刑事が描かれています。

直筆サイン…!感激です!

調査完了!

今回、加藤先生のインタビューを通じて仕事と育児、そして日頃の努力を惜しまない姿勢に尊敬の念を抱きましたね。

花は最近、仕事や家事での疲労感に苛まれ「今日は休もう…」という日を繰り返すことが増えてきていた様なので改めて自分のやる気スイッチが入ったみたいよ!

今後もたくさんの活躍びとに出会えるよう、弊探偵事務所では調査を続けていきます。

調査日(2021年11月2日)
調査協力:矢樹純先生 Twitter:@yagi_jun
調査・執筆:金田一アレクサンダー様
執筆サポート&編集:花