タテカンを楽しく、もっと自由に!東北大学 立て看同好会【インタビュー】

ずっとずっと夢中になれる!魅惑のサークルたち

「あいつら全員、同好会!」は、宮城・仙台で活躍するおもしろ同好会・サークルの活動内容やその起こり、裏話などをインタビュー記事として特集していくコーナーです。

同好会・サークル活動は仕事や学校の授業ではないからこそ、バカみたいに夢中になってしまう魅力が隠れているはず。面白くて、しょうもなくて、とっても愛おしい……そんな活動を続ける人々をご紹介していきます。

今回は、東北大学立て看同好会の代表・和泉(いずみ)さんにお話を伺いました。

地下道でもインパクト大のタテカン!普段はどうしてる?

──直近では、2022年10月に開催したウラロジ仙台主催のマーケットイベント、地下道-3150にも出展にご協力いただきありがとうございました!オリジナルの立て看板(以下・タテカン)、インパクトすごかったです。

その節はお誘いいただき、ありがとうございました。

──青葉通地下道で開催したイベントでしたが、実際に参加してみてどうでしたか。

いやぁ、楽しかったです。大学以外の方にも我々の活動や作品を知ってもらえるのはすごくありがたい機会で、イベント開催中には僕たちがつくったタテカンの写真を撮ってくれてる方を結構見かけたのもあって、嬉しくなりました。

▲メンバーの皆さんには準備期間から関わっていただき、開催中の設営にもご協力いただきました。

──学外にタテカンを立てたのはこのイベントが初だったとのことですが、普段は大学で掲示物の申請を出してから立てるって流れなんですかね。

大学側が用意してくれた申請様式に立て看板掲示許可願というものがあって、それを申請してから立てるようにしています。

──タテカン専用の申請様式があるって、面白いですね。一般的にはポスターを大学内に貼るときなんかは、「広報物掲示許可願」的なものを出すと思うんですけど。

確かに他の大学からしたら、不思議な文化かもしれないです。ポスターなどとはまた別の扱いなので。

東北大学では新歓の時期、大体どのサークルも勧誘用のタテカンを出しますし、本来はそのためのものなのかなと。そういったサークル勧誘や、吹奏楽部の定期演奏会の発表の告知で出すこともあるみたいですが、タテカンを立てること自体を目的にしてるのは多分我々だけですね。

──私が通っていた大学は学生の数が少なくて、比較的小さいキャンパスだったんです。だから、サークルの勧誘でもチラシ配るぐらいでしたし、そういう話は新鮮に感じます。学生の数が多い大きめの学校はタテカンを出す風潮があるんでしょうかね。

東大(東京大学)なんかでも、そういうのいっぱいあるらしいですし、あとは京大(京都大学)も有名ですよね。

同好会のはじまりは東大・京大へのリスペクトから

──東大や京大などがアップしているものと比べると、東北大学のタテカンの作風はユーモア寄りというか、わかりやすいものが多いなと感じているんですけど、それって、設立当初からそういう毛色だったんでしょうか。

そうですね、うちの同好会の毛色は設立当初からそういう感じだったはずです。2018年頃、京大のタテカンをめぐるあれこれがネットニュースやSNSで話題になったんですけど、それで「大学内でタテカンを立てる」という活動の知名度が一気に上がった印象があります。その流れを受けて、同じくらいの時期に活動を始めたのが、うちの同好会の起こりだったそうです。

──なるほど、「私たちもこういうことをやりたい!それなら東北大学にも立て看同好会を作っちゃおう」と。

そうみたいです。もう大学院生くらいだと思うんですが、当時学部生だった発起人の先輩と、その仲間が2〜3人くらいで集まって最初に作ったのが初代の「どこでもドア」。開閉しないタイプの、地下道-3150に出店したものです。

ただ、2020年には東北大学のサークルとして認可されているんですが、活動を始めた当初は正式なサークルではなかったみたいなんですよ。活動を始めたての頃はタテカンを立てるための許可申請が必要なのも知らなかったと思いますし。だから、事前告知もなく急に大学にどこでもドアが現れた!って驚いたんじゃないかなと思います、学生も、先生たちも。

──正式なサークルとして認可される前はゲリラ的だったから、衝撃だったでしょうね。ちなみに和泉さんが入部したのは、どのタイミングでしたか?入部のきっかけもお聞きしたいです。

2021年4月に入部しました。僕が入学したばかりの頃ですね。元々、高校生の頃にTwitterで京大が毎年入試シーズンに出している看板の画像を見かけて気になっていて。

受験シーズン、東北大に行きたいと考えた時に、「東北大にもこういうサークルがあったらいいな」と思って調べたら、本当にあって驚きました。だから、受かったら入りたいなって。

未経験でも大丈夫 先輩もついてるぜ

──それで、実際に入学&入部ですね。和泉さんは元々造形活動的なことが好きだったんでしょうか?絵を描くとか、木材でDIYとか。

いや、全然なかったですね(笑)。別に絵もうまくないし。美術の授業でちょっぴり、レタリングとかやったくらいで。

──えっ、そうなの。地下道-3150の時は道路許可などの申請関係がとにかく大変で、我々からみんなに制作開始のゴーサインを出すのがかなりギリギリになってしまったじゃないですか。開催の2週間前とかになってしまって……。

ですね。ちょっと大変でしたね。

※公共空間で何かを掲出する場合、「こういったデザインのものを掲出します」と多方面から許可を得なくてはいけないのです。そのため、青葉通地下道で描きおろしの新作タテカンを掲出するにあたってはラフデザインの許可が降りてから清書を行わなくてはいけませんでした。

──申し訳ないと思いつつも、あのタイトスケジュールの中でも仕上げてくださってすごいなと。入部するまでそういう経験はなかったけれど、最近では結構手慣れてきた感じでしょうか。

そうですね、細かいところを塗る作業なんか、去年よりは絶対上手になってると思います。先輩が制作のコツとか教えてくれますし、やってみたら、慣れるもんですね。


▲開催日まで残り少ない日数で仕上げてくれたタテカン「NO TATEKAN」。公共空間であらぬ誤解が生まれないよう、仙台市の職員さんたちとも話し合って決まったデザインです。

▲普段制作時に使っている道具も見せてくれました。なお、冬場は水が冷たくて筆を洗うのがつらいそうです。

──先輩から教えてもらえるのはありがたいですね。ちなみに、今アクティブに活動してるメンバーは何人ぐらいいるんでしょう。

おおよそ20人くらいでしょうか。今は1〜2年生がメインで制作に取り組んでいる感じです。定期的な活動も特にないので、高頻度で制作している人を全て把握しているわけではないんですけれども。

──作りたいタイミングで集まるみたいな感じですか。

自分が作りたい時や、あとは誰かが作っているのを手伝いに行くときとかですかね。

──自由度が高くて、いいですねぇ。

他校のタテカンサークルと違ったゆるやかさ、参加の気軽さ

──あと、これは勝手なイメージで齟齬があったら申し訳ないんですけど、タテカンで有名な東大や京大は何らかのメッセージを伝える使命感があってやってるというようなところもあると思うんですよ。学生運動の名残といいますか。規制を巡る問題もあるので、活動はなかなか大変なようですが。

僕としては強く思想を掲げること自体は悪いことではないと思っていますが、東大や京大と比べると現状、我々の作風はメッセージ性や政治色を薄くしているようなところがあります。このスタンスに賛否あるとは思いますが、我々としては学生がタテカンを作って掲げるということ自体に意味があると思っているので、形だけでも受け継いで残せていけたらと思って。

──なるほど、「タテカンを立てる」というカルチャーそのものを残していくのが大事。それを美術サークルとかじゃなくて、あくまでタテカンで表現する意義や魅力みたいなものって、なんだと思いますか。

そうですね、 僕はやっぱり美術部とかの方が、絶対絵描くのとかはうまいと思っているんです。もちろん、同好会の中でも絵が上手な子はいるんですが。でも、絶対にインパクトでは負けないと思っているんです。あの大きさで、ああいう表現を掲げられるのはタテカンの良さだと思います。

▲大学の敷地内に立てている様子。インパクトやばい。

あとは、参加するハードルの低さも魅力のひとつでしょうか。イラストが得意な後輩も多いし、同学年には美術部と兼部している子もいますが、タテカンづくりは絵が上手いかどうかより、純粋にみんなで塗ったりするのが楽しい!基本的に共同制作なので。

その雰囲気もあってか、結構、公式Twitterを見て入部してくれる人が多いんですよ。

▲こちらのドイツの国旗ネタはTwitterでもバズったそう!和泉さんいわく、InstagramよりTwitterの方が反応が良いとのこと。

 

──「変なことやってる人たちいるな」って。

はい(笑)。そういえば今、作業場で制作している後輩の中にもそうだった子がいるはずなので、ちょっと話を聞いてみましょうか。

そこで、作業場にいた工学部1年生の木村さん、経済学部1年生の佐々木さんにもお話を聞いてみることに!

▲左から佐々木さん・木村さん(1年生)、前半に話をしてくださった和泉さん(2年生)

「早く台無しにしたい」「3DS流行らせたい」将来有望な立て看ルーキー登場

──制作中にすみません、お邪魔しま〜す。今日はどんな看板を作るところなんですか。描きかけだけど、すごく綺麗な風景画……?

木村さん:これはある映画のワンシーンを再現したものなんですが……早く台無しにしたい。

──これを、台無しに!?

木村さん:そういう構想があるんです。台無しにしたいな……。早く……。

──岡本太郎みたいなこと言うじゃん……。ところで、佐々木さんは今日のところは木村さんの制作のお手伝いで来てくれているとのことですが、自身のアイディアで看板をつくる時もあるんでしょうか。

佐々木さん:実は、まだ主体的にはつくれていないんです。ただ、アイディアはいくつかあって。まず、大学内で3DSを流行らせたいんです。

──なんだって?

佐々木さん:厳密には3DSのすれ違い通信機能をまた、流行らせたくて(笑)。マリオパーティみたいな、通信プレーでワイワイするゲームが好きなので、「このあたりに立っていればすれ違い通信できます」みたいなタテカンを立ててそこで待ってたら……

──実家から持ってきた3DSで、誰かがすれ違い通信してくれるかもしれない。デザイン性が高いアイディアですね。ちなみに、お二人の入部のきっかけは?

木村さん:Twitterで見かけて、面白そうだなって。美術部ではなくこの同好会を選んだのは、作品でちょっとふざけられそうだったところでしょうか(笑)。人間っぽさ・俗っぽさは立て看同好会の方が、活かせると思いましたし。

佐々木さん:僕の場合、Twitterで京大入試シーズン恒例のタテカンの写真を見たことがそもそものきっかけでした。それで、いざ大学に入学してみたら東北大学にもタテカンをつくる同好会があるんだって知って、興味をもったんです。

──後輩が和泉さんと全く同じ道、辿ってるよ。

和泉さん:全く同じですね。もう、同好会の代表になるところまで一緒だったりして(笑)。

▲「こんな感じ?」「オッケー、大体でいいよ!」と話しながら制作。めちゃくちゃ楽しそうです、早く台無しにしてください!

──本当に自由度が高くて楽しいのが伝わってきて、いいですね。今後チャレンジしてみたいことなんかはありますか。2023年度も「地下道-3150」を開催したいと考えていて、また皆さんにもご参加いただきたいなと思っているので、その時にやってみたいことでも。

和泉さん:大学祭では例年、真っ白な「ご自由にお書きください」という添え書きをつけた参加型のタテカンを出しているので……思い切って、タテカンの制作体験とか、いいかもしれませんね。高校生なんかとも一緒にやってみたい。参加した子が東北大学に入学してきて、また一緒に作れたりなんかしたら嬉しいなあ。

──そうなったら、感動しちゃいますね!では、最後に東北大学を受験しようとしている方や、これから入学する皆さんへ何かメッセージをお願いできますか?

和泉さん:東北大学に入ったら、ぜひ東北大学立て看同好会に入ってほしいです。一緒につくろう!他の大学だったとしても、タテカンは、どんどん作って立てよう!

協力:東北大学立て看同好会の皆さん/ Twitter
執筆:恐山R

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  • マニアックなものを作っているサークルがいるらしいんだけど
  • 私の通う大学には謎のサークルがあるので話を聞いてきてほしい
  • こんなサークルは仙台市内の大学にもある?

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