好評のオルタナティブ映画メディア、第3回のレビューは現在MOVIX仙台で上映中、「ファンファーレ!ふたつの音」(監督:エマニュエル・クールコル)です。
主演の一人、ピエール・ロタンは2025年フォーラムで上映されていた「秋が来るとき」でもおなじみ。これまでとは若干毛色が違う……
ある世界的に活躍している指揮者が骨髄移植を必要とする病気になり、型が合致する可能性が高い血縁者を探す中で血は繋がっているが生き別れていた弟を見つける。その弟とは性格も環境も全く異なる中、共通点である「音楽」を通じてお互い理解を深め、それぞれの人生が動いていき……。
まず述べておきたいのは、この映画におけるシーン構成のテンポの良さである。思い切りの良い、前へ前へと進んでいく編集のドライブ感が、「人生」そのものであるこの物語を突き動かしていく。
大成功した指揮者の兄と時給11ユーロで働き工場の吹奏楽団に所属する弟、というそれぞれの社会的階層や生活環境などの人間ドラマは、「これぞ人生」と言わざるを得ないほど残酷で、時に痛々しい。兄弟がお互いに会い、話し、歩み寄っていく中で、思うようにならない(作中の言葉を使うと「クソッタレ」な)現実が、どんどん露わになる。中盤の布を隔てたシーンはまさに、それを端的に表現する。
それでも、そんな現実にも、音楽は存在する。
あまりに違いすぎる兄弟を、一つにしてくれるのは音楽だけなのだ。
それはクラシックでもいい。ジャズでも、ダンスミュージックでも。音楽がありさえすれば。
(裏を返せば、音楽「でしか」一つになれないのだけれど)
「音楽が好き」ということで、誰かとわかり合えた経験を持つ人間にはきっと響く映画であり、音楽好きと観に行って語りたい映画でもある。
以下、若干のネタバレを含みます。
一見すると幸せに満ちた雰囲気ではある。
しかし、この映画はどこまでもリアルで、現実的で、冷静にみると救いはない。
映画のラスト、ふたりは客席と舞台上に別れているということがそれぞれの世界を象徴している。
一方、このシーンはそれだけではない。その境界を超えて流れる、まさにこれしかないという一曲がそのことを教えてくれる。
そんな救いのない人生の中にも輝きはある。そしてきっとそこには、音楽もあるのだ。
これはそんな、音楽を愛した人間に贈られた映画だ。