【イベントレポ】韓国語をもっと好きになろう!「古川綾子さんに学ぶ、韓国語と韓国文学の魅力」に行ってきました

文化

韓国語&韓国文学の魅力に触れるセミナーに行ってきた

안녕하세요!(こんにちは!)のちゃです。

今回は、実際に翻訳家として活躍されている古川綾子さんのお話が聞けるとのことで2023年4月6日(水)、仙台フォーラス7階のevenで開催されたセミナー「古川綾子さんに学ぶ、韓国語と韓国文学の魅力」に行ってきました!今回はそのレポートです。

韓流ブームもあり、ハングルや韓国語を勉強している方も多いと思うので、ぜひご覧ください♪

日本・仙台での韓国ブームの広がり

コロナ禍での自粛期間中に、K-POPやサブスクリプションサービスなどで韓国ドラマに触れ、韓国語を勉強する人や実際に使うのが上手な人が増えてきました。私もそのうちの一人です。仙台でもその影響か韓国に関するお店が増えてきましたね。韓日関係は今まで以上に交流が友好的になっていきそうです。

また、2023年4月28日より仁川空港〜日本線も復活しているので旅行に行くのもおすすめです。

仙台市の姉妹都市である光州広域市も仙台市と同じくグルメな街だそうで、姉妹都市締結を記念した「仙台路」と名づけられた道路があったり、仙台市で行われる国際ハーフマラソンでも韓国の選手をお招きしていたりと実は仙台と韓国は意外と身近に感じられる関係なのです。

私自身の個人的な目標は2022年のうちにTOPIC(韓国語能力検定)を受けることだったのですが、私生活での環境変化など様々な理由で達成することができませんでした……。ただ、試験は受けられずともパンフレットの翻訳など、韓国語の勉強は細々と続けています。

具体的には2022年に韓国の光州広域市(クァンジュクァンヨクシ)と仙台市の姉妹都市締結20周年を記念した行われた日韓交流イベントにて宮城県公式英語観光サイト「Visit MIYAGI」の冊子をゲットし、翻訳アプリなどを使いながら翻訳を試みてます!

宮城に来て数年経ちますが、知らなかった宮城の魅力をこのVisit MIYAGIを通じて知ることができて一石二鳥です!そんな中、実際に翻訳家として活躍されている古川綾子さんのお話が聞ける「古川綾子さんに学ぶ、韓国語と韓国文学の魅力」の開催告知を見て興味を持ったので、足を運んでみることにしました。

古川綾子さんはどんな人?

今回のセミナーは翻訳者の古川綾子さん、イベントや展覧会などのキュレーターとして活躍する長内綾子さんのダブル綾子さんによる対談形式の講演でした。



古川綾子(ふるかわ・あやこ)さん
韓国文学の翻訳者、講師。神田外語大学韓国語学科卒業。延世大学大学院韓国語教育科修了。第10回韓国文学翻訳新人賞。神田外語大学講師。訳書に『走れ、オヤジ殿』(キム・エラン、晶文社)、『そっと 静かに』(ハン・ガン、クオン)、『未生、ミセン』(ユン・テホ、講談社)、『外は夏』(キム・エラン)『わたしに無害なひと』『明るい夜』(チェ・ウニョン、以上 亜紀書房)などがある。『未生、ミセン』で第20回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。NHKラジオ ステップアップハングル講座2022年7月〜9月を担当。

 

長内綾子(おさない・あやこ)さん
1976年、北海道生まれ。武蔵野美術大学建築学科卒。2004年にアーティストの岩井優らとSurvivart(サバイバート)を設立し、若手アーティストの展覧会やトークイベントを多数開催。その後も、国内外でのプロジェクト、展覧会等に様々な形で携わる。2011年11月、東日本大震災を機に仙台へ移住。2012年から2022年3月まで、中小企業とクリエイターを対象とした仙台市経済局の支援事業「So-So-LAB.(旧・とうほくあきんどでざいん塾)」で、事業の企画立案および運営に従事。現代アートとビジネスの両方の現場で、問いを立て応答を引き出す場の設計、およびキュレーションを行っている。

 

現在、母校の神田外語大学韓国語学科で講師もしている古川綾子さん。近年は東方神起などのアイドルにハマったK-POP第一世代(1996-2004年代)の親を持つ生徒が増えてきて、幼い頃から韓国語に触れてきた学生も多いそうです。

のちゃ
そういえば私もお婆ちゃんが冬のソナタブーム(2003〜2004年ごろ)から韓国ドラマ見てたから、少しは韓国語を知ってたな。

翻訳者になったきっかけは大学入試?!

現在、韓国文学の翻訳者、韓国語の講師として大活躍されている古川さん。今回のセミナーでは、韓国に興味をもった意外なきっかけや今のお仕事に就くまでについてお話してくれました。

元々海外文学が好きで司書になりたかった古川さんは、大学進学時に併願として神田外語大学韓国語学科を受験。それまで韓国語も韓国についても何も知らなかったそうです。集団面接時に自分以外の受験生が韓国語や韓国の魅力について熱く語るのを見て「韓国という隣国の言葉を学ぶことがそんなに楽しいのか!」と圧倒され、すっかり韓国に魅了されてしまった古川さんは合格していた第一志望の大学を断ってまで神田外語大学に入学したとのこと。

(ちなみに、受験時に一緒に面接した学生は入学時一人もいなかったとか……)

卒業後は韓国の半導体の会社で営業と通訳を任され、韓国語を学び始めて4年が経っていたが夜間学校に通い、さらに勉強を重ねていき、本当は韓国語を教える仕事がしたかったため私学院で教育免許を取得したそうです。「やっぱり昔から本が好きだったのが強みだったのかもしれないですね」と長内さん。

ジャンルによって違う、翻訳の基本

一言で「本」と言っても本にも様々なジャンルがあります。これまでたくさんの本を翻訳してきた古川さんによると、ジャンルによっても翻訳の仕方が変わってくるとのこと。

その中でも、「字幕」「コミック」「文芸」の翻訳についてのお話が面白かったので紹介します。

【字幕】1秒で人が目に追える文字数は4文字。その中でどのように表現するか。

4文字ルールがあるため、長い表現でも4文字に収まるように表現を変えないといけないこともあるそうです。

のちゃ
韓ドラとか見ていて、たまに字幕が端的で本来の言葉はもっと素敵なのに!と思った事があるのは、この4文字ルールが原因だったのか!

【コミック】吹き出しに収まる文字数で、ローカライズ(地域化)が必要!

韓国語はパッチム※があり、日本語より音に対しての文字数が少ないとのこと。

特に名前はパッチムを使ったものが多く、日本語に直したときにはどうしても文字数が多くなってしまうためコミックの吹き出しに収めるのは大変なんだとか。

のちゃ
私が好きなアイドルも韓国語だと3文字だけど日本語だと7文字になるな……マンガも描いたことあるから大変さがすごく分かる

※〈子音+母音+子音〉などで構成される最後の音をあらわす子音または子音字母のこと。

場所を始め、登場人物が持っているものなども日本に合わせてローカライズしないといけません。作品の中で、登場人物が持っていたアイテムが韓国限定の商品だったことで、リテイクが返ってきた事例もあるそうです。

のちゃ
最近だと、韓流ドラマ「梨泰院(イテウォン)クラス」の日本版として「六本木クラス」というドラマがありましたね。仙台はどこのローカライズに当たるんだろう?やっぱり光州広域市かな?

【文芸】伝達方法は文字のみ。的確に伝えられる表現力が必要。

小説家は基本的に自分の小説が他国で翻訳されて出版される想定をしないことがほとんどで、その地域にいるからこそ分かることローカルネタをぼんやりと書くこともあり、それを日本の人にも伝わるように説明することが必要だそうです。

のちゃ
確かに!例えば『光のページェントの時期は定禅寺通がキラキラと輝いていた』って文章があっても、他国だと光のページェントがどんなイベントか分からないですね。

この翻訳のルールは韓国だけでなく、他国の言語でも通じることですね!海外作品によく触れる人はそういったポイントに注目してみると、より面白いかもしれません。

韓国文学の特徴

韓国文学は社会の不条理や時代性が物語のテーマとなることが多く、フェミニズムや社会の正しさを問い、ネガティブなことや普段言いにくいことなどもみんなで考えるきっかけになって欲しいという想いが込められたものが多いそうです。

のちゃ
フェミニズムや社会の正しさをみんなで考えようというところも韓国文学が日本で流行り出した要因なのかもしれないですね。

韓国文芸の韓国語ならではの表現

韓国語は一人称や二人称に区別がなく性別が分かりにくいのが特徴。この特徴を活かして意図的に書かれていると判別が難しいそうです。また名前も一目見ただけでは分からないものが多いのも特徴なんだとか。

ここでちょっとしたクイズです!

下記の文章の登場人物「イギョン」と「スイ」の性別はどちらでしょうか?これは会場でも実際にお話しされました。

正解は……どちらも女子!

のちゃ
イギョンもスイもどちらの性別でもあり得るから難しい!文章全体から登場人物の性別を読み取らないといけないんだな

ちなみにこの後この小説の結末が気になって閉店間際の本屋さんにダッシュしました。

短編小説集なので通が隙間時間にさらっと読める作品です。

スイとイギョンが出てくる「あの夏」はスイとイギョンの甘い青春のような恋愛模様から成長して大人になって吸いも甘いも知ったからこそ変化していく関係が描かれています。

そのほかにも時事ネタが多く含まれていたり家柄やステータス、格差に関する表現が多かったりするのも韓国文学の特徴です。時事ネタは韓国で実際に起きたことなのかフィクションとして書かれているものなのか分からないことも多いみたいです。

翻訳に正解はない!自分なりの正解を見つけよう!

古川さん曰く、「翻訳に正解はない」とのこと。

決まった正解を探すものではなく、どう翻訳するかによって個性が出るものなのだそうです。自分なりの翻訳の正解を見つけてみるのも楽しいですよ!

▲こちらはセミナー内で紹介された同音異議を用いたお話の例文。

韓国語にも日本語同様に同音異義語の言葉遊びが楽しいものがあったり略語があったり勉強すればするほど楽しいものが多いです。

古川さん、長内さんのおすすめ「韓国文学ショートショート」は左から開けば韓国語の原文、右から開けば日本語の翻訳が読める短編小説です。

翻訳された文章を楽しんだ後、原文を自分なりに翻訳することもできるので、翻訳対象がないという方は韓国文学ショートショートから始めてみるのも良いかもしれません。

仙台で韓国語や韓国文化を楽しみたいなら!

その他にも今回のイベントでは韓国文学出版社同士の繋がりや日本でヒットする韓国文芸のキーワードなどもお話しいただきました。

今回主催の駐仙台大韓民国総領事館では韓国語講座やキムチ作りなど仙台にいながら韓国を感じられるようなイベントや韓国語を毎日楽しく学べるカレンダーの販売も行っています。

▲韓国語カレンダー。こちらは卓上の中級編。初級編や大きいカレンダーもあります。

共同主催の東北日韓友好交流連合会TOFAでは「韓国語を利用した仕事をしたい」と思っている人を支援する活動をしているようです。趣味から仕事にしてみたいと考えている方は活用してみてはいかがでしょうか?

執筆:のちゃ