【仙台と縁がある作家の本を読みたい】ぜーんぶズルい。沁み渡る一冊【空飛ぶくじら/スズキスズヒロ】

知識

イントロダクション・純粋な本の紹介をするぞ

こんばんは。恐山らむねです。

皆さん、読書してますか?

実は読書がそこそこ好きで、今年に入って8冊は活字本を買って読みました(特別、多くはないけども)。

そこで、たまにはちゃんとした本の紹介をしてもいいのではないか、と思い立って記事を書いています。

先日、根本先生の「宇宙船の落ちた町」を紹介半分・ネタ企画半分実施した記事を上げましたが

今回はネタ企画なしの、純粋な感想記事になりますので

「そういうのを待ってました!」の人も、「ネタ仕込んで無いんだねぇ」の人も、ぜひお楽しみください。

 

たまには漫画を読みたい

 

さて、私の普段読む本は自己啓発本や旅行・観光系の雑誌が多いです。

あとは、デザインの勉強で専門の本を読むこともあります。

 

昔は漫画に夢中で、よく買って読んだものですが、

最近とくに「続きモノ」を購入するのが、ダルくてダルくて。

アニメも同じです。続きモノを観るのがつらい年齢になってきたということかもしれません。

でもたまには漫画も読みたいよね。そこで、血眼で探しました。

 

  • 宮城・仙台にゆかりのある作者
  • 短編オムニバスなどの1巻で完結する漫画

 

上の条件に該当する漫画が、ありました。

 

 

「スズキスズヒロ作品集 空飛ぶくじら」

スズキスズヒロ/イースト・プレス発行

 

実は血眼になる前に、

フォロワーの在仙の漫画家の先生が単行本を出していたから「読みたいと思ってたんだよね」

というのを思い出し、本屋へと向かったわけなんです。

 

2019年12月に発売されたばかりで、新しめの短編オムニバス作品集です。

 

スズキ先生、何者!?

 

私の中で、スズキ先生は絵がめっちゃうまくて、ラーメン二郎を好んでいるという印象しかなかった(なぜ?)のですが、

巻末の作者紹介を見てみると…

 

1992年生まれ

ワイとタメやないか…(1993年早生まれ)

スズキ先生は立派に漫画の単行本がリリースされるようになるまで頑張っている。

一方私は、訳のわからない人間になってきている。焦ってきました。

>第二種電気工事士・危険物取扱者

勝てへん…

人と自分を比較するのはよくないですが、カラーコーディネーターはおろか、漢検のひとつも資格を取得していません。

学生時代、簿記の資格筆記試験をサボったのが記憶に新しいです。だめだこりゃ。

資格及び、収録されているおはなしのひとつ「銃声を削り出す」から見るに、工業系のことを学ばれた経歴があるんでしょうか。

謎が深まるばかりです。

 

空飛ぶくじら 第二編「銃声を削り出す」

青野をはじめ、工業高校でワルだった男子4人組。

あれから18年。親の工業製品加工の稼業を継いだ青野のもとへ、4人組の中でも途中で高校を退学となった住田が訪ねてくる。

そんな住田は、ひたすらに陰の道に進んでいたが、青野はそんな彼から頼みを引き受けることになる。

 

スズキ先生の絵は女の子が特に可愛らしくて魅力的。

しかしその女の子の可愛さとは裏腹に、この話では中年のおじさんばかり出てくるのですが、これまた面白い話でした。

工業的な作業のあるシーンを、セリフのみならずコマの中で丁寧に解説。

ポンチ絵表現が好きなので、未知の分野のことを図解で読めたので、そういった意味でも大変興味深いストーリーと構成でした。

 

おすすめはこのエピソード

 

私的におすすめのエピソードは「木村先生」

一冊の中でトップバッターとなる、お話です。

 

空飛ぶくじら 第一編「木村先生」

年配高校教師の木村先生は、

子どもが地面に落書きするかのように、ある日こっそりチョークで地面に絵を描こうとする。

その場面を、教え子である井上カホに見つかってしまい____….

 

この話で登場する「カホ」は高校2年生。物語の季節は冬。進路指導や進路についての面談が始まるシーズンです。

 

「私まだ17年しか生きていないのにこれからどうしたいとか今決めろって そんなの無理です」

 

カホは、進路面談をサボって、映画見に行っちゃうようなタイプ。そんなカホへ、木村先生がかけてくれる言葉たちが、これまた滲みるんです。といっても、湿っぽい話ではなく、明るく前向きになれる。そんな展開。

ウーン、女子高生に戻りたい。

 

表現に関する主観的な話

 

何がいいって、あらゆる点で、一冊まるごと、「ずるい」んです。

理由は大きくふたつ。

  1. 「映画のはじまりのようなタイトル・イントロ」
  2. 「絵柄のキャッチーさに引き込まれる」

映画のはじまりのようなタイトル・イントロ

 

コマを掲載できないのでうまくお伝えできないのですが、

まるで表紙の絵…映画館で映画を見るような気持ちにさせてくれる、イントロが一話ごと、気持ちよく入り込んできます。

 

どんなコマ表現なのかは、コミックスでお楽しみいただきたいので詳細は割愛させていただきますが、

ワクワクするはじまりは、人間誰しも大好きだと思います。引き込まれて見てください。

 

絵柄のキャッチーさに引き込まれる

 

これがまた、「ずるい」の大きな要因のひとつ。

子どもから年配の方まで受け入れられそうな絵柄でありながら、

サブカル系で漫画好き層のハートをも鷲掴みにしそうな、いやらしくないキャッチーさ。

 

「おやすみプンプンとか〜。映像研には手を出すな!とか〜。みんな読んでるしぃ」

そういった具合に捻くれている人にこそ、スッと受け入れられるタッチかもしれません。

 

他にも、ちょくちょく仙台・東北といったワードが登場する場面も必見です。

 

心がじわっとなる、かといってお涙頂戴では無い。

 

続きモノが苦手な方。

ぜひこの機会にさくっと読めるのに満足感たっぷり・スズキスズヒロ先生の短編集はいかが。

 

執筆・恐山らむね