喉から這い出る轟音 ボイスパフォーマー・原田仁と東北のアーティストによるsession|「原田仁 Live in Sendai」ライブレポート

※弊Webメディア・ウラロジ仙台、いつもはこんなかっちょよくレポート記事をまとめたりしないので、今回が特別です。

本稿は2024年6月1日(土)、ボイスパフォーマー・原田仁をメインゲストに開催されたセッションイベント「原田仁 Live in sendai」の記録である。オーガナイザーは「eerie noise records」hiroyuki chiba、会場はお馴染み仙台市青葉区木町通・Live Music Cafe DIMPLES

以下はhiroyuki chibaのnoteからの引用だ。ただならぬ気合いを感じる。

1990年代bassist原田仁をはじめて観たのは宗修司とのプロジェクトBAZOOKA JOEだ。まだ20代の私にはギタリストもいないこのbandを観てカルチャーショックを受けた。その後高円寺でROVOの前進となるbandでベースを弾く原田さんを観た。とにかく原田さんの視線はドラマーを見続けていた。私はその時、原田さんの音に対する姿勢を学んだ。

私がノイズミュージックを開始して自身が開催するイベントにゲストとして出演していただく事になり私は20代の頃に戻って原田さんの演奏を聴いた。原田さんの魅力は常に会場にある全てを引率していくのだ。明らかに何かがある。

引用元/https://note.com/hiroyuki_chiba/n/n1d724e4d9e1a

今回は出演アーティストのライブと、アーティスト同士のセッションを楽しめる二部構成。

オーガナイザーのchibaに本日の要となるセッションについて聞くと「何が起こるか分からない感じ。何も打ち合わせしていないのでどうなることやら」と笑って答えてくれた。炎のguitar・nobにも話を聞くと、「原田さんは4年ほど前にライブで呼んで(福島に)来てもらえて。妖精マリチェルさんも炎の結成初期からお世話になっている」とのことで、顔馴染み同士だからこそフィーリングで生まれるものもあるのだろう。<あえて示し合わせない>のが本公演の鍵になりそうだ。

また、今回出演する福島のnoise collecttive・炎はメンバーを解体し、それぞれ他の演者とグループを組んでのセッションが予定されている。vocal・コブラは「色々考えたけど、今日のセッションはエフェクターを使わずに声で一本勝負かな」という。

 

本稿ではゲスト・原田仁からも音楽に関する貴重なお話も伺ったので、現場の記録写真と一緒にぜひお楽しみいただきたい。どんな化学反応が見られたか、振り返っていこう。


 

原田仁Live in sendai

2024/6/1(sat)
open18:00 start 18:30 ticket ¥2500+order
place Live music cafe Dimples
https://dimples.live/

solo act

原田仁

妖精マリチェル
hiroyuki chiba.

&

Special Sessions

hiroyuki chiba. & nob(from 炎)
nob(from 炎)&原田仁
妖精マリチェル& 原田仁
コブラ(from 炎)&have (from 炎)& 妖精マリチェル
原田仁& hiroyuki chiba.


 

Liveパート 

 

▲今回のhiroyuki chiba.はエネルギッシュさだけではない!PANを振り、ノイズサウンドが空間を右往左往するようなコンセプトで臨んだという。空間全体で「感じる」ライブとなった。

PAN…音がどの位置から聴こえてくるかを調整するパラメータのこと。 ノブが中央の位置ならセンターから、右に回せば回した分だけ右の方から、左に回せば回した分だけ左の方から音が聴こえてくるようになる。


▲「Deficients Live in Sendai」でも出演のあった炎は前回より力強い演奏に。ドラムマシンとサンプラーのパート分けについて聞くと、モジュラーシンセ担当のhaveによれば、「トラック自体がセッションから生まれることも多く、スタジオで音出しをしながら自然にパートも割り振られていく」のだという。

▲「岩手……じゃなくて、妖精の里から来ました!」と妖精マリチェル。サイケデリックなファッションに加えて背中には翼を引っ提げ、まさに妖精。エレクトロニックなふわふわ・ピロピロした音と鈍い音が10畳に満たないステージ上を飛び回る!

原田仁・轟音パフォーマンスの秘密

ボイスパフォーマー・原田はKORG KAOSSILATORと身一つでステージに登場。シンプルなセットとは裏腹に、力強いボイスパフォーマンスで会場を沸かせた。終盤はビートのBPMを250以上に。轟音とビートで織りなすグルーヴ感から、観客も楽しげに体を揺らしていた。

ー今回の「原田仁 Live in Sendai」、いかがですか。他の演者のライブや、空気感など含めて。

原田:素晴らしいですね。特に、炎のライブには驚きました。変則的なトラックって、短いタームにするのが普通なのですが、炎は長いんですよね。すごく面白い。

ー東北でライブをされる機会は結構あるのでしょうか。

原田:2022年ごろ、花巻に行ったのが記憶に新しいです。バンド「ROVO」ではARABAKI ROCK FEST.によく出演しています。

 

こちらはARABAKI ROCK FEST.出演時映像ではありませんが、イメージとしてご覧ください。

 

ー本日のノイジーな音、エフェクターがかかったような音など多彩な「声」が織りなすライブ、面白かったです。ステージ上で使用されているのはKAOSSILATORとマイクのみに見えたのですが、何かエフェクターなども併用されていたのでしょうか。

原田:いいえ、全て声ですよ。空気を吸って、音を出す。シンプルにいえばテクニック、本当にそれだけなんです。ディジュリドゥで使う奏法に近いかな。普段、ブルースハーモニカ演奏の仕事もしているから、その経験も活きているかもしれないですね。

※オーストラリアの最も伝統的な楽器。一般的には腹式呼吸を使うのが基本の奏法だとか。

いろんな音を出しているのは「いっぱいいろんな人格があったらいいな、楽しいな。2人以上の声があると面白いだろうな」と思ってやっている感じです。とにかくアホになりきるの(笑)。

ーええ、全部!かなり大きな音も出ていましたし、すごく体力を使われるのではないですか。

原田:実はそこまでの大声は出していないんです。特定の周波数を出すような感じ、それこそ「そういうテクニック」!

異色のセッション・パート

第二部ではアーティスト同士がタッグを組んだセッションLiveを披露。

▲コブラ(炎)、have(炎)、そして真ん中に妖精マリチェル。即興で「ディンプルズ」「誤嚥性肺炎」「ディムの寿司」など独特なリリックが紡がれた。「普段の出勤から退勤までに関連するワードを言っていこうかなと思っていたんですけど、実際は言葉を一つ一つ出していくことにしました。単語がゲシュタルト崩壊していくイメージで!(コブラ)」とのこと。

 

▲nob(炎)、原田仁、妖精マリチェルチーム。原田氏、まさかの笛。そして荒ぶる妖精。

 


▲「nobくんとずっと一緒にやりたかったんだよ!」と感嘆の声を漏らすchiba氏。居住地域を超えたノイジー・コラボレーション。

 

 ▲ラストは原田仁 & hiroyuki chibaで。轟音&轟音!

エクスペリメンタル・みちのく

観客としては何が起こるかわからないセッションパートは驚きと発見の連続。退屈な毎日があるからこそ、刺激のある夜はいっそう楽しいのだろう。今後もウラロジ仙台ではそういった色を含ませた地元音楽シーンに注目していきたい。

 

執筆:恐山R