はじめまして、オショロコマと申します。映画大好き。
このコーナーでは、「今、仙台で観られるおすすめしたい映画」を紹介します。
第一回は大好きな監督であるウェス・アンダーソン監督の『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』です(フォーラム仙台にて2025年10/16まで上映予定)。
ザ・ザ・コルダのフェニキア計画
名作<マスターピース>、である。それもどこか、そういった重い言葉が似合わないタイプの。
徹底した画面作りへのこだわり、独特の世界観でファンを捉えて離さないウェス・アンダーソン監督(『天才マックスの世界』『グランド・ブタペスト・ホテル』『犬ヶ島』)の新作は、オープニングからその後のクレジットへのシークエンスでもうすでに、その期待を全く裏切らない。
ウェス・アンダーソン監督最新作!映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』本予告
とある架空のヨーロッパの国、フェニキアの大富豪であるザ・ザ・コルダ。
彼が実行しようとする「フェニキア計画」が反発する勢力によって妨害を受ける中、聖職者になるべく修行をしていた娘が呼び戻される。彼女は遺産の相続人として指名され、渋々ながら共にその計画への出資者たちを訪れ、計画を実行していこうとするのだが……
という筋書きだけを書くとスパイアクションになりそうな、そんなストーリーである。
しかし、それはこの映画の一つの要素にすぎない。
何と言ってもウェス・アンダーソン監督の特徴である画面作り(先ほどの予告編からも伝わると思う)、それはこの名作でも存分に発揮されている。冒頭からまずはっと息を飲み、その豪邸の中にある絵画をはじめとする本物の芸術品<マスターピース>の数々が、次々に画面を彩っていく。あくまでもさらっと、それでいて目を引く小道具も見逃せない(ホームページによると、それはカルティエでありダンヒルである)。
そして、その画面で展開されるのは、一種神話にもつながり得る物語なのだ。
6度の暗殺未遂を経験した大富豪、という時点ですでに、主人公の特異性が際立っている(もはや常人の域ではない)。そんな彼が、唯一の娘であるもう一人の主人公と旅をして過ごす中で起きる様々なエピソードは、そもそもが「失敗」から始まっているが故に、どれも人間的である。ヒューマニズム、というとこぼれ落ちてしまうような、愚かであり、それゆえに温かさをもつ物語。それがどんなものであっても、起きたままに肯定する。さも「失敗」することが人間という生き物の特性である、とでも言いたくなるくらいの。
また、その物語に「いる」としか言いようのない存在感を示す俳優陣も豪華である。主演のベニチオ・デル・トロのみならず、MCUファン的に見逃せないのはベネディクト・カンバーバッチ、スカーレット・ヨハンソンも重要な役割で出演しているところだ。
これまでのウェス・アンダーソン監督作品のファン、は既に観ているかもしれない。観てなければ早いうちにと言いたい。
一本も見たことがない方に対しても、最初の一本としておすすめできる一作だ。
そして何と言ってもこれらは、ぜひ映画館で観てほしいと思う。
その磨き抜かれた細部までを、全て愛おしむために。
追伸:
クラシックの使い方が印象的な映画は名作だと思う(一番最初に思い浮かんだのは『バトル・ロワイヤル』)。本作もその例に漏れない。
執筆:オショロコマ