【インタビュー】自分自身と向き合える 本屋 裂け目 | 仙台市 国分町

おでかけ部

大沼です。春の本屋特集と言うことで、今回はとある謎の多い本屋さんを取材しました。

今回インタビューする本屋さんは、【本屋 裂け目】です。

なぜ私が、裂け目が気になったのかというと、まずはお店のロゴを見ていただければわかっていただけると思います。

なんじゃこりゃあ!!!!!!

ひと目見ただけで伝わってくるこの強烈な世界観はなんでしょうか。これが本屋さんのロゴだというのだから驚きですよね!?

こわい。こわいけど、かっこよすぎやしないか?

ロゴのデザインに一目惚れした私は、他媒体のインタビュー等も徹底的にリサーチ。
今回は「それらの一歩先」をお聞きしてきました。

裂け目、千葉さんとお話したい!

▲【裂け目】店主千葉さん


ーお店の名前の由来や、開業〜現在へ至った経緯を教えてください。

千葉:店名の由来はそんなに深い意味はありませんが、普段の日常とは違う場所とか、地続きでない違う空間といったイメージなんです。それは、「安全な場所」とか、「好奇心をくすぐられる場所」みたいな意味もあるかもしれません。そうしていろんな言葉を考えた中で、【裂け目】という名前に決まりました。


私は大学卒業後に東京で会社員をしてました。2022年ころに神戸の「1003」

https://1003books.stores.jp/)という本屋に入った際に、見たことのない本ばかりで驚いたんです。「こういう本があるのか」と思っていろいろ調べているうちに、ZINEやリトルプレスに興味を持って、そういったものが地方ではなかなか手に取る機会がないので、それを販売するような本屋であればやってみたいと思うようになりました。お店は仙台市内でできる場所を探しながら、2024年3月9日にWEB上に【裂け目】をオープンし、通販を開始したのが始まりです。

私は古本の取り扱いもできる(古物商の資格を持っている)ので、何度か市場に行ったところ、「本屋をやってみたいと言う人がいる」とgallery TURNAROUNDの関本さんに繋いでくれた方がいて、そういう巡り合わせがあって、2025年8月2日、even内に店舗としての【裂け目】がオープンしました。

gallery TURNAROUND(大手町)がプロデュース・運営するスペース。

 

ーお店のロゴについて教えてください。

千葉【裂け目】という名前なので、そこに引き込まれるとか、逆に入っていくみたいな意図で作ってもらいました。出来上がったデザインを見てみたら、丸みがあって可愛かったんで、いいなと思ったんです。これなんかは(千葉さんの名刺)裏表にイラストが違ってて、気が利いてますよね。

 

 

ー千葉さんは可愛らしいと思ってらっしゃるんですね。そう聞くと確かに、丸々としてて可愛いと思えてきました。お店のロゴをタイプデザイナーである石川ともこさんに依頼したのはなぜですか?

千葉:お店をやるにあたって、内装やロゴなどを誰かに依頼したいと思っていて、知り合いから紹介してもらいました。石川さんも僕が本屋を始めようとしていることに興味を持ってくださったので、お願いすることになりました。

 

 

ー商品のラインナップについて教えてください。

千葉:特にジャンルは絞ってなくて、広く取り揃えてますね。ただ、あまり大きな本屋さんで扱わないような本のほうがいいかなと思ってます。必然性があれば全然置きますけど。そうでないならほかの本屋さんにお任せするという感じです。大きい本屋さんだとどうしても配られてくる本から多いものを面出しして並べたりしなくちゃいけないのですが、うちはそうじゃない。そうじゃないなりにやりようがあるので。だからといって尖っていこうというわけではなく、役割分担みたいな話だと思ってます。

あとは、ZINEですね。今では大手の本屋さんでも取り扱うようになってきていますし、東京はもちろん、地方都市でも「文学フリマ」のような即売会でそういったものを作って売る文化が根付いてきています。そういったものがおもしろいと思って本屋を始めたので、気になった本があれば作者の方に連絡をして仕入れています。

 

 

ー他のインタビューで千葉さんが、商品として仕入れる本について、「自分にとって居心地の悪い考え方の本も必要」とおっしゃっていましたが、それについて教えてください。

千葉:個人書店の良いところは、置く本と置かない本を決めることができることです。大きな本屋さんでは、自分の考えと合わない本でも置かざるを得ません。たとえば僕は、政治的思想が著しく偏っていて自分とは合わないと思うものは、お客さんに薦めることも難しいので、置かないです。読みたい人は、別なところで買えばいいし。読みたい人がそういった本を読む自由は尊重されるべきだけど、僕がそういう本を置く必要はないと思っています。

 

 

そのうえで、そこで「居心地の悪い」といっていたのは、たとえば自分の加害性に気づかされるようなものなどを意図しています。男性が家父長制の中で女性への差別的な構造に加担してきた歴史を知ったり、障がいを持つ方やクィアの方々の苦闘の歴史を知ることは、かっこつきの「普通」に生活できる人であれば見過ごしてしまうこともあるし、それを知ることで、何か責められているような気分になるかもしれない。

そういう情報を見ないで自分の好きな情報だけ見て過ごすことも可能だけど、知らないうちに自分たちが【加害者】になっている、今後なるのかもしれない。本はそういった状況を知るための機会として有効なのではないでしょうか。私自身は、社会の中の不平等や加害のようなものについて、大学で社会学を勉強した際に初めて知ることができました。そういった勉強でなくても、本の中にはそういったことを知ることができるものがたくさんあるので、それを興味深く、おもしろく読んで知っていただけたらいいなと思っています。

 

 

ー千葉さんがそこまで他者の意見を面白がることができるのはなぜですか?


千葉
ラジオの影響があるかもしれません。TBSラジオという東京のローカルラジオ局の番組を高校生くらいのころからよく聞いていて。その中でも特に「文化系トークラジオLife」という番組では、いろいろな出演者の方が様々な立場で意見を交わしていて、そのおもしろさや刺激というものが、今にも繋がっているかもしれないです。

※文化系トークラジオLife……TBSラジオで放送されている生放送のラジオ番組。社会や文化について「あれってどうなの?」や「これってどう思う?」という話題について、いろんな世代の人たちがトークを繰り広げるラジオ番組。

また、大学では社会学を学んでいて、そこでも社会の構造や多様な視点でものごとを見ることの「おもしろさ」を知りました。

 

ー千葉さんが感じるZINEの魅力とは何でしょうか?

千葉熱量ですね。熱量が一番。熱量というのはなんというか、その分野についての知識の量の多さということもあるかもしれないけど、「これを書かないとヤバい」とか「作んないとヤバい」という気持ちが乗ってて、読んでそれを感じ取れる物が良いです。極端な話、誰に頼まれたわけでもないのに作る必要がないじゃないですか。それでも手掛けて何冊も作ってしまうと言うところが面白いという気もしますね。

ーもしZINEを裂け目に置いて欲しいときはどの様にご相談するとよいでしょうか?

千葉:そうですね、お店に直接営業をしてくれると仕入れやすいという気持ちです。

「この本はこんな事を書いていて、こういう風に作りました。◯◯冊刷りました。値段は◯◯円で、こういう条件で販売したいです」と言ってもらったほうが私は、(あ、この人この本をどうしてもいろんな人に見てほしいと思っているんだな、どうしても売りたいんだな。)と思えて、「あ、じゃあやりましょうよ!」って言いやすいです。基本的に提示された条件を断ることはあまり無いです。だから委託でも買い切りでもどちらでも大丈夫ですし、それがあればスムーズに「仕入れる」という方向に行くことが多いです。逆にあまり控えめにされると、ちょっと困るかも。

 

 

あと、もしお店に置くとなると、私の場合は値段設定が安すぎるとどうかなと思っている部分もあります。立派に作ってあって、安いのは買う側からするともちろんありがたいですが、みなさん装丁などにこだわっているので、そういう場合は大体今扱っているものの平均くらい……1500円くらいに落ち着くと思います。

それよりも安いものももちろん構いませんが、ZINEというだけで買い慣れていない人からするとお金を出すことに抵抗感も少なからずあるので、安くて薄いみたいなものは、どれだけ良いZINEでもなかなか書店で並んだ状態から選ばれるのは難しいんですよね。なので、そういったものはおそらく書店で販売するというよりは、即売会などで販売する方がお客さんも買いやすいのではないかなと感じています。

 

 

ー裂け目では読書会なども行われていますが、今後どんな本を取り扱っていきたいですか?

千葉あまり僕自身にこだわりはありません。今までは選書するにあたって、私の意見が入っていますが、一緒にやっているSurvivartさんとも相談しています。でも本当は読書会に参加してくれる方が、「こんな感じのがやりたい」とか「こういう本を取り扱いたい」と思っていることをやれるほうがいいと思ってます。僕の意見とかよりも読む人が面白がってくれるのが一番嬉しいです。

それこそ今ご参加いただいてる方には「次こんな本を読書会で使用したいんですけど、皆さんが読書会で取り扱いたいご希望の本はありますか?」みたいにお聞きしてます。その際ご希望のものがあればぜひ言っていただければ。または、お客様の方から持ち込んでいただいても全然大丈夫です。お客様から聞く感じだと、実は古典や名著とかのほうが引っかかりがあるのかなとなんとなく思ってますね。読書会で扱うからそれを店で仕入れて売ろうみたいなこともあまり深くは考えていないので、自由に選んで楽しんでいただけるのが嬉しいですね。

 

 

ー千葉さんが他媒体のインタビューでこの出版不況のなかで本屋さんを始める中で、本じゃなきゃいけない理由を聞かれた際に、「本でなきゃいけない理由はないが、強いて言うなら文字として残る。」とおっしゃっていたのが印象に残っております。たとえば100年後先まで残っていて欲しい本はありますか?

千葉ないっすね(笑)。いまから100年前の本っていうと、フランツ・カフカの『城』とか梶井基次郎の『檸檬』とかだと思うんですけど、それと同じ価値を持つものがあるかどうかは同時代に生きていたら判定できないんじゃないかと思ってます。

それは決して面白いものがないと言っているわけではなく、面白いものはたくさんあるけど、100年後読まれることの意味がなかったりする事も全然あるかもしれない。本を作ってる人からすれば長く読まれたいでしょうけどね。絶版や復刻を繰り返している本だってありますから。でも極端な話、後から不祥事がわかってしまったりして、長く読まれたくても無理があったりすることだってあるでしょうし。

 

 

残ってて欲しいというより、今読んで感動できることのほうが大切だと思ってます。そのくらい長く読まれる本がこの店から見つかったら嬉しいですけどね。自分が本屋をしてるからって本じゃなきゃいけないなんてことはないと思います。本当はもっと「本じゃなきゃいけない!」って言ったほうがいいとも思いますけど。現実はそうじゃないですよね。本って普通に高いですからね、買う側からすると。本って「普段読まないから肩身が狭い」とか「買わないのがよくない」ということを競争するためのものではなく、面白いから読むもので。

極端な話、たった1冊の本だけをめちゃくちゃ深く読んで、その人にとってとても大切な事が知れたなら別にそれで良くない?って思ってるんで。だから「これ読んで欲しい」とかは全然ないんですよね。何が面白いかぐらい自分で決めたいものですよね。

もちろんオススメを聞かれたら、それはもう100%の力でお勧めします。僕にはそれぐらいしかできませんから。それでも面白くなかったら面白くなかったでいいし。確かに、人に勧めたのにその人が面白がらなかったりハマらなかったときはショックだし、申し訳ないと思う事もあります。でも自分の中に湧いた気持ちだけは絶対に大切にしてほしいんです。各々が各々の好きな本を読んでください。

 

 

ー仙台の人々の本への向き合い方はどのような感じですか?

千葉:僕はほかの場所でやったことがないので、正直分からないですけど、うちのお店に関しては、みなさん気を使っていただいてるのかなという印象があります。皆さん「静かにしなきゃいけないんじゃないか」と思われているかもしれませんが、あまり僕はそう思わなくて、あまりお客さんに対して「こうしてほしい」と思うことは無いですね……。やってほしくないこともゼロではないですが、そんなにありません。立ち読みしてても僕何も言わないし。あまりにも長〜く立ち読みされてたらたまに「面白かったですか?」って聞くかもしれないけど。でもそんなこともほぼありませんね。だから喋ってても別にいいと思ってますし。

でもたまに、お客様の方から「選書とかいいですね」って褒めてもらえることもあります。結構皆さん本を買う人も買わない人も丁寧に見ていただいているんだなと思います。

 

ー裂け目は立ち読み大丈夫なんですか?

千葉:全然大丈夫です。まぁ、その場で1冊読み切られたらちょっと困りますけどね(笑)。中古の本なんか…特に写真集なんて正直買えるほどの値段じゃないものだってあるので、そういうのってパラパラ見たいじゃないですか。たとえば、立ち読みとかでその本を見て、それがめっちゃその人に影響があったらそれは買われることより嬉しいじゃないですか。

 

▲志賀理江子さんの「螺旋海岸」

 

…たとえばこんな。(千葉さんにある写真集を取ってきてくださいました。)

それは志賀理江子さんの「螺旋海岸」という写真集です。現在は石巻にアトリエがある日本を代表する写真家の作品集。宮城県の人にとっては、感じ入るところもたくさんあると思います。新品で買うことは今はできませんが、中古では買えるところもありますし、うちにもあるので、知っていただくきっかけになるのであれば、それもいいことなのではないかと思っています。この本を見て、自分も写真を撮ってみたい、何かを作りたい、やってみたいと思うことができたとしたら、それはとても素敵なことではないでしょうか。

※「螺旋海岸

写真家志賀理江子さんによる写真集。

宮城県名取市北釜に移り住み、土地の空気や歴史に自分を同化させることで写真というメディアとは何か、土地とともにある暮らしや表現について追求した1冊。

参考資料︰志賀理江子 螺旋海岸|Lieko Shiga RASENKAIGAN せんだいメディアテーク https://share.google/97tsrY60AWbDxisGh

【立ち読みした感想】

海岸が写ってる写真がたくさんありました。夜に撮られた写真が多く、石や花、木や人など、自然のモチーフがさまざまな色でライトアップされてて色鮮やかでした。私がこの本を見て特に好きな写真は、ご年配の男性と女性が横に並んでいる写真です。その男性の腹部を大きな木が貫いており、その木が背中で花のように大きく咲いているように見えるという衝撃的な作品。ライトアップの色が赤色で、生き物の心臓の鼓動を感じて、エネルギーを感じ取れてとても大好きだと感じました!(大沼)

 

……特に若い方とかお金をそんなに使えない方もいらっしゃるでしょう。別に過度に優しくしてるお店ということではないんですけど、良心の範囲内で読むぶんには大丈夫ですよ。

 

 

ー裂け目では今後どの様な目標がありますか?

千葉:そうですね、イベントなどもできればと思っていますが、お店としては来ていただけるように本を揃えておきたいなと思っています。興味があるとき、本が欲しいなと思ったときに来てもらえたらそれで充分です。

いい本屋さんなんてたくさんありますからね。でもそんな中で、寄りたいと思った時にフラっと来てもらえるぐらいのスタンスで居たいと思いますね。

インタビューを終えて


千葉さんの本とお客様に対する想いが感じられる熱いインタビューでした。

千葉さんが本の売り込みをしすぎないことで、お客様は、自分がどんな本が好きでどんな話題を面白がることができるかを自分の目と感覚を通じて自身の気持ちに向き合うことができる空間が自然と形成されている本屋さんでした。

皆さんもぜひ、本屋裂け目を新たな本と出会うきっかけにしてみてはいかがでしょうか?

本屋裂け目 情報


本屋 裂け目 ホームページ:
 https://share.google/FyI1huH2GaYIjEdCc

所在地:宮城県仙台市青葉区国分町3-2-3 プレイスハンズビル 4F even内

営業日
木曜日〜土曜日……12:00~19:00
日曜日………………12:00~18:00

X(旧Twitter):https://x.com/sakemebooks

Instagram:https://www.instagram.com/sakeme_books?igsh=eW81b2oxem95YW51

note:https://note.com/sakeme

裂け目の中(店主の記録):https://open.substack.com/pub/sakemebooks?utm_source=share&utm_medium=android&r=7weydr

ロゴデザイン・石川ともこさん( https://x.com/a_110moco )

関連リンク集:lit.link/sakemebooks

余談

最後に、私がこのロゴを見て感じたことを書きます。

何もない空間に現れたのか、元からその場所にあるのかは誰も知る由もない謎の丸。その丸の小さな隙間に挟まっている棒人間のピクトグラム。彼は自ら入りに行っているのか、それとも引き込まれているのか。彼の顔には表情がなく感情が読めないことと、丸の形がどこか怪物の横顔のようにも見えるような気がして、ミステリアスでもあり不気味に感じます。

その横には『裂け目』という文字が佇んでいて、まるで丸の隙間の中に引きずり込まれるピクトグラムの彼を助けもせずじっと見続けるようです。そして「裂」や、「目」という視覚的にも生物的にも非常に恐怖感のある文字が大きく並んでいて、ピクトグラムの彼がこの後辿る運命を暗示しているかのようです。

取材日:2026年3月14日

インタビュー・執筆:大沼
写真編集:恐山R