【愛宕橋・河原町・長町エリア】知ることを畏れるな!仙台市・河原町周辺で民俗学ピクニック【縛り地蔵から蛸薬師まで】

場所

編集Sさんのふるさとに「オカルト」はあるか?

仙台市さんからご依頼を受けて企画した「青葉通で遊ぼう!」の一環で、仙台のオカルトや都市伝説、もしくは妖怪の調査・検証を担うことになった編集Sと恐山R。

<振り返り>ディレクターたちからのオーダー

第2回「青葉通で遊ぼう」で開催した青葉通にまつわるありえないほどマニアックなクイズ大会で勝利したチームから、ウラロジ仙台編集部へ記事執筆のリクエスト!

オカルトや都市伝説、もしくは妖怪の調査・検証をお願いされたのであった。

(不思議なストリートアートのクルーについて調査するアイデアもあった)

 

恐山R
夏頃のぐんにゃりチャットでSさん、河原町周辺生まれって言ってましたよね。その辺にエリアを絞って、不思議な伝承が伝わる場所とかに行けないかなあ。霊障が怖いので、ばちばちの心霊スポットは避けるとして。2人とも取材のあと大怪我なんかしたらディレクターたちも悲しむさ。
S
そうそう、おばけは……怖いから!
恐山R
本音出ちゃった。
S
うっ。にしても、なんかありますかねえ?お寺とかは多いはずだけど……。
恐山R
みんな、若林区・太白区周辺のエリアでオカルト系の話が伝わる場所とかなんか知ってる?個人的に米ヶ袋の縛り地蔵は行ってみたいな。昔から気になっててさ。
S
えっ、なにそれ。広瀬川のほとりに……縄でぐるぐるまきのお地蔵さん!?えっ、地元民のはずなのに知らなかった。他のみなさん、どうでしょう?
太白区といえば……八木山橋とか!
猫子
八木山橋しか知らないなあ。
S
なんでみんなはガチのところばっかり挙げるんですか〜!?!?心霊系はダメって言ってるのに〜!(爆泣き)
かい
最近、蛸薬師如来の話を長町ガチ勢の地元民から聞いてきましたよ。タコが洪水から薬師如来像を守った言い伝えから、周辺の人達は長らくタコを食べてはいけなかったという。
S
蛸薬師如来って、あの蛸薬師?めちゃくちゃ馴染みのある神社で、昔からお参りとか行ってました!地元に結構、あるもんですね。そんな伝説、知らなかった……。
恐山R
河原町や長町の周辺にはそういう伝承・伝説が残っているスポット、結構ありそうですね!もう少し事前に調べて行ってみよう〜!

今回まわるエリア

というわけで、Sさんには馴染み深〜い愛宕橋・河原町・長町エリアでまわるプランを組んでみました!


※上記の手書き地図は2024年10月現在のものとなります

 

 

さあ、おそろしいピクニックのはじまりです……

 

 

※今回の記事は「青葉通で遊ぼう」プロジェクトの景品ではありますが、本当の意味で「労働力プレゼント」のため、こちらのコンテンツに有償要素は含まれておりません。

ドキュメンタリー風のVlogもあるよ

ぜひ、記事と併せてお楽しみください。

愛宕橋エリア

周辺散策

S:ここ、何橋ですかね。

恐山R:愛宕大橋ですってよ。

▲車やバスの中から「スピードおとせ」の黄色いサインを見ると、「もうすぐ長町南のあたりだ!」って、思いません?

▲愛宕大橋から眺める広瀬川は絶景!最高だ、もう終わりでよくない?

 

恐山R:なんだここ、階段で橋の途中から住宅地に降りられるんだ。

S:まだ1箇所も巡ってないのに降りたくなっちゃうよー!

<怪奇現象①降りたくなってしまう階段に魅入られる>

▲愛宕大橋を降りたら実写版『岸辺露伴は動かない』に登場しそうな辻に路地!ロケ地は絶対ここじゃないんだけどな。

 

▲愛宕大橋の端っこにあるオブジェ。SさんのSかな?(適当)


恐山R:Sさん、どうですかこの辺は。なかなか、ゆっくり歩いて通らないようなエリアでしょうけど。

S:本当にそう!激シブな建物もたくさんあるし、こんなに緑がたくさんあったんですね。気づかなかったなあ。

宗禅寺〜鶏塚伝説〜

さて、今回の訪問予定地のひとつ宗禅寺にやってきました。


▲宗禅寺(仙台市太白区根岸町1-1)

 

恐山R:あれっ、最初は米ヶ袋の「縛り地蔵尊」に向かっていたはずなんだけど、なんか先に宗禅寺についた。立派なお寺ですね〜。

 

<怪奇現象②ありえん方向音痴発生>

ここで、かい君が親切にルート順を考案してくれたのに我々は素で道を間違えていたことが発覚。

〜回想〜

親切にルートを効率的に周るアドバイスくれてたのに。そんなこんなで、この後は再び愛宕大橋を渡ることに。_______________呼ばれている、愛宕大橋に……。

 

S:まあ…..「青葉通で遊ぼう」のときも我々、事件起こしてますからね……。それで、この宗禅寺には怪猫から主人一家を救った鶏さんのお墓があるはずなんですよね。……これかな?「是レ人間の墓にあらず」。

鶏の墓の由来

寛文十三年(1661年)約三百三十六年前、宗禅寺の檀徒の庄子某の、飼っていた鶏が、毎夜、宵啼(よい なき)をして止めないので鶏の夜啼は、「不吉」として鶏を殺して廣瀬川に投げ、其の死屍が宗禅寺下に流れつき、其の夜、住職の枕に鶏が立ち、「私は主人の命 を助けようと一生懸命知らせたが言葉が通じないので、早く主人の命を助けて下さい」と云ってたので住職は、其の朝早く川に行って見ると鶏の死体が実際にあったので、すぐ庄子家に行って見ると主人が朝食を食べよ うとしているので飯台を見ると、家人の作った汁鍋の上を其の家の猫が飛び越えた。其の途端(とたん)、尻尾から汁が鍋に落ちたのを見てすぐ食べるのを中止させ猫の跡を付けて見ると、竹藪の竹の根に昆虫の毒、トカゲの毒を腐食させてあることが発見し本当に申し訳なかった事から、其の鶏の死体を寺に持って来て葬り其の霊を厚く弔い、現在も「是レ人間の墓にあらず」とあり。

〇動物が主人の命を救った美談です。

引用:宗禅寺の立て看板より

 

恐山R:鶏さん、いいやつだなー。庄子さんも広瀬川にポイしたの後悔したんだろうなあ。

S:ね、あんな大きい川に……。それでちょうどこのお寺に流れついたっていう。

縛り地蔵尊でランチタイム

さて、再び愛宕大橋を渡って、お次は 最初に行くはずだった 縛り地蔵尊へ。

<怪奇現象③あちらから狙われている>


▲斜度がある道で「向こう側からこちらの位置がバレる」「遮蔽物がなさすぎて射線が通っちゃう」とか言い始めた方(Vlog参照)。

 

 

S:あ、あれじゃないですか。縛り地蔵!

 

 

恐山R:うお〜〜!念願の!……え、遊具あるけど。

 


▲遊具、お顔もシュール。親子連れも普通に遊びに来ていたから地元の人には馴染みのスポット?

 



▲縛り地蔵尊(
仙台市青葉区米ケ袋3-5-13)

縛り地蔵尊の由来

伊達騒動の最中、伊達兵部宗勝を討とうとした伊東七十郎重孝は、寛文八年(1668)米ヶ袋の刑場で斬罪に処せられた。その土壇場まで堂々と振る舞い「3年以内に兵部殿を亡きものにして見せる」と云い残して予告通り仰向けに倒れたのだという。兵部一派は3年後、悪行が暴かれ本当に滅びてしまった。この地蔵尊は、正義のために非業の死を遂げた七十郎の供養のために建てられたと伝えられており“人間のあらゆる苦しみ悩みを取り除いてくれる”と信じられ、願かけに縄で縛る習わしから「縛り地蔵尊」と呼ばれている。この縄は毎年一回、縁日の日にだけ解かれるという。

参考:縛り地蔵尊前の立て看板より

 

恐山R:つか、首を斬られた後に仰向けになるってどんな感じ?そんなにすごいことなんか。

S:ほら、介錯がいて。こういう体勢になるでしょ。そうなったらさ、普通は仰向けにいくの難しいじゃないですか。

▲体を張って解説してくれたSさん。 

恐山R:ワハハ。

S:ジェスチャーが面白くて絶対理解してないでしょ。

 

……ここで、縛り地蔵を眺めながらランチタイムと洒落込みます。ちゃんとお参りしてからね。

 

▲河原はスポーツ広場になっている。サギ(野鳥)も川辺で遊んでいて、自然豊か。

縛り地蔵を眺めながらお昼ごはんをたいらげ、大自然を堪能した我々は次の目的地へと向かうべく、愛宕橋駅へ戻る。その道すがら見かけた酒屋の店主さんにも、縛り地蔵について尋ねてみた。

恐山R:縁日の日に縛り地蔵の縄がほどかれるの見たことありますか?

店主:そうそう。一年に一回、縄を全部ほどくの。住職さんがきて拝んでくれるんだよ。

S:縁日はあのお地蔵さんがいる敷地のあたりでやってるんですか?

店主:近年は道路を使うのが険しいからね、露店は広場(河原)の方に出しているよ。

▲このお地蔵様は空襲で一度焼けていて、出資を元に今のコンクリート造りのお堂に建て替えたという。酒屋の店主さんによれば「昔は簡単な屋根がかかっているくらいだったから、立派になったねえ」とのこと。貴重なお話ありがとうございました!

河原町エリア

墓石を石橋の一部にしてほしかった遊女

昼食後、地下鉄(南北線)に乗って、河原町駅にやってきました。

恐山R:Sさんのふるさと、河原町!

S:もろ、生まれ故郷です!でも今日行くエリアは当時、行動範囲外だったかな。このあたりはあんまり遊んだ記憶とかもないですねえ。で、なんでこの辺に来たんですか?何か特別なスポットがある?

恐山R:閻魔堂横丁の怪という逸話が気になりまして。これがどうも、どうやら石名坂のあたりに伝わるお話らしいんですね。

閻魔堂横丁の怪

昔石名坂下・船町の辺りに遊女屋が栄えた頃,石名と名乗った遊女が自分の罪障消滅のため,死後自分の墓石を橋の一部として通行人に踏んでもらってくれるよう遺言したが実行されなかった。その後墓石が倒されたままになっているのを近所の請負師が見かねて園福寺に移してやったが,遊女の霊は遺言通り石橋にされないのを怨んだものか,余計なことをするなとばかり請負師の妻の夢に毎晩現れて望みが叶えられるまで悩ましつづけた。その石碑が現在どうなっているかはわからない。

引用:https://www.nichibun.ac.jp/cgi-bin/YoukaiDB3/youkai_card.cgi?ID=C0411218-000

 

恐山R:てな感じで、午前にまわったスポットのように特に立て看板があるわけでもないはずです。閑静な住宅街という感じで遊女屋があったおもかげも、ありませんね。

S:そうですねえ。人っ気も少なくて。お墓、どうなっちゃったんでしょう。

恐山R:せっかくなんで、逸話の中に登場する園福寺にお参りに行ってみましょうか。

▲園福寺(宮城県仙台市若林区石名坂59)

 

▲ちゃんとお参りも忘れず!

 

S:仙台三十三観音二十番札所ですって。仙台三十三観音、かいさんに全部巡ってもらうか〜。

恐山R:無茶ぶりだなあ。

さて、石名さまのお墓はどうなったのか。取材後に調べてわかったことですが、仙台市のホームページにこんな記述がありました。

園福寺[えんぷくじ](石名坂)

曹洞宗、満谷山。長町の滝沢寺の末寺。天正年間(1573~1619)に、利府の沢乙にあった天台宗の廃寺を再興して開山したという。
本尊の観音像は堊玉(あくたま)観音と呼ばれ、奥州東征をした坂上田村麻呂の母とも側室ともいわれる利府菅谷の長者の娘、堊玉姫の護持仏が移されたものだという伝説がある。
また、石名坂の名の起源といわれる江戸初期の花魁(おいらん)石名の碑がある。石名はこの地出身といわれる江戸吉原の名花魁で、追善供養のため吉原の楼主や遊女たちが奉納した大般若経600巻が保存されている。
仙台三十三観音二十番札所。

引用:https://www.city.sendai.jp/waka-katsudo/wakabayashiku/machizukuri/miryoku/terameguri/aramachi.html

石碑あったんか〜〜〜〜〜〜〜い!!!!!!!!!

読者のみんな、ぜひお参りして探してみてくださいね……。

 

石碑にお参りもせず呑気にお寺の敷地内にいた鯉を眺めていた我々。石名さまが見たらどう思うでしょうか……。

長町エリア

ラストは長町駅前にやってきました。

▲民俗学とは関係ないけど、この壁画は長町の再開発に際して開催されたワークショップで平成の小学生たちが考案した「長町の未来の姿」なんだって。かわいいね。

蛸薬師如来

S:わあ、懐かしい。初詣の時は茅の輪くぐりがあるんですよ。八の字で、出入りするんです。

▲蛸薬師如来(宮城県仙台市太白区長町4-2-12


▲お堂の他に、さすって健康祈願する仏様も鎮座。

 

主にいぼとりや難聴回復祈願で有名だという蛸薬師如来。その名の通り、あちこちにタコ様のお姿が……。

恐山R:不謹慎かもしれませんが「タコが洪水から薬師如来像を守った言い伝えから、周辺の人達は長らくタコを食べてはいけなかったらしい」という話をかいくんがしていたし、縁日とか出店でたこ焼きとか出せないんですかねえ、やっぱり。

S:そういえば、たこ焼きの露店は見たことがないかも……。私自身、お参り行ったら買い食いとかはせず帰っちゃうタイプなんだけど、たこ焼きの露店見たことない。え、そういうこと?

振り返り・まとめ

S:一日で回れる程度のエリア内にこんなに曰く付きのスポットがあるなんて、生まれてから今までずっと仙台で暮らしているのに全然知りませんでした。特にいわれがないところでもあまりに緑陰が深くて夜は絶対ひとりで通れねえみたいな場所がたくさんあって……

仙台がまだまだポテンシャルを隠し持っているのを実感しましたね。路上観察的にも興味深くてほぼロケハンだったかもしれない。

恐山R:本当にそうですね。この茂ってるところはゾクっとする部分もありました。

恐山R:私もこのへんのエリアはドライブや買い物で通過するぐらいなので、じっくり歩いて見てまわるとこんなに楽しいのだとはじめて知りましたし……

 

そして、終盤で気づいたこともありました。

 

<怪奇現象④長町駅前に蛸薬師>

 

恐山R:蛸薬師のタコさんが長町駅前でこんな姿に……。

S:いや……それは、おそらく……たいはっくるの……

 


 

いかがだっただろうか。今回は編集Sの郷里周辺で言い伝えのあるスポットをチェックポイントにピクニックと称したフィールドワークを敢行した。

現地で分かったこと、後から調査で分かったこと。

​───────そして、中には謎で良いままのこともある。

 

たいはっくる傍の輪っかについてなにかご存知の方がいたら、ウラロジ仙台編集部まで。

 

企画ディレクション:池ノ上、本田、レノン(「青葉通で遊ぼう」屋内異文化交流チーム)
企画・執筆:恐山R
取材同行・探索協力:編集S