【インタビュー】仙台出身の怪談師・由乃夢朗さんが語る呪物の魅力

文化・アート部

2026年2月14日、仙台出身の呪物コレクターの由乃夢朗さん(以下・由乃夢朗)が執筆した著書『呪物紀行 由乃夢朗編』の発売を記念したトークイベント&サイン会が喜久屋書店仙台店にて行われました!

クローズドなイベントで本物の呪物を目の前にしながら貴重なエピソードを聞くことができてゾクゾク&ワクワクしました!

そして、夢朗さんからお声がけいただきインタビューを行うことが出来ました!今回は夢朗さんの怪談への姿勢、想いなどをお聞きします。

 

由乃夢朗 プロフィール

仙台出身の怪談・呪物蒐集家。
イベント出演をはじめYouTubeでの配信を行っている。

X(旧Twitter):https://x.com/yumerou_cos
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCYxKXlCmZAnfCZqCc6kLHXg

著書『呪物紀行 由乃夢朗編』リンク
https://www.standards.co.jp/book/book-11396

―今年の2026年2月8日には仙台で初の単独公演が行われました。同じ地元・仙台の怪談イベント「東北怪考」などでゲスト出演するときとは異なる楽しさや、感想などあれば教えてください。

由乃夢朗:僕ひとりの公演でも、これだけのお客さんが来てくれるんだというありがたさを感じましたね。
今回の僕の単独ライブの趣旨は、口外禁止のヤバい話満載ってことでしたんですよ。
僕は完全に「実話怪談」にこだわっていて、実話系の中でも特に怖いと思えるのって、裏社会に絡む話なんです。 

本当に怖いものを追求していくと、幽霊だけじゃなくて本当にひどい残酷な思いをして死んでいく人の話ってのがやっぱりちょいちょい出てきて、それがやっぱり裏社会に関わっちゃうことがあるんですよね。たとえば、漁船で祀っていた船霊様(漁船内で祀る神様)から沢山の人の歯が出てきてそれがとんでもなくやばいワケアリな物だったり……公で話すとヤバいものを中心にピックアップしました。

そういうのを今回主に話したので、東北怪考さんで話すのとはまた全然違うテイストの内容を披露できて、お客さん的には結構満足していただけたんじゃないかなと思います。

呪物を集める際の二つの基準

―著書『呪物紀行 由乃夢朗編』拝読させていただきました。全体を通して呪物へ対する真摯な姿勢が伝わる文章がとても印象的でした。呪物を収集する際に、大切にしている基準や信念はありますか?

由乃夢朗:怪現象が起きているかどうかという価値観と、何かが宿っているかもしれないという価値観、この2つで判断しています。
呪物を手に入れる手段は、相談される形で譲り受ける場合と、自ら買う場合があります。
この「譲り受ける」という場合は、判断基準に信念とかそれほど大層なものが介入するわけではないんですけれども、やっぱり本当に起きている怪現象と結びつきがあるかどうかで判断します。

あとは、その対象にオカルト的な価値を感じられるかどうか。怪現象を引き起こしてなかったとしても、例えばそれまで祀っていた神様として岩手の「オシラサマ」とかすごく魅力的ですし、そういう古い神様を祀っていたものなんかも、引き取ってほしいということなら喜んで引き受けます。 

遠野市立博物館『オシラサマ』の一部 撮影:恐山R

遠野市立博物館『オシラ神信仰』キャプション 撮影:恐山R

オシラサマ……東北地方で信仰されている蚕(かいこ)の神や眼の神、子供の神、農耕の神。

引用:岩手県立博物館サイトより

実際に禍々しい経緯で引き取った呪物

呪物の魅力

―「呪物」という存在に魅力を感じた理由を教えてください。

由乃夢朗:大きく二つありまして一つがまず、怪現象を検証しやすいというもの。

心霊スポットは現場に行かないといけないけど、呪物って家に持って帰れるんですよ。 だから、検証ができるという。実際に変なことが起きるってことが多くて、僕にとっては見えざる世界を勉強したり知ったりするためのものであるっていう魅力がまずあります。 

もう一つは、そういった霊的なものを抜きにしても、その呪物が作られた背景には、人間のドラマがあるんですよね。
 調べれば調べるほど、人がどんな思いでそれを作っているのか、そういうものを探ること自体が面白いし、そこで見えてくるものに人の熱を感じるというか。何かを信じる世界観や熱を感じるんですよね。
そういった魅力を僕は感じています。

―宮城、仙台という土地は、夢朗さんにとってどんな存在ですか。

由乃夢朗:僕の故郷なので、空気も水も肌に合うなっていうのはまずありますし、歴史が面白いですね。 

県内の某有名な橋のこととか、少しほじくり返すと、闇の部分の歴史も土の中から一緒に出てきてしまいそうな勢いで情報が集まりますし、松島の「乙女の祈り」のような有名な心霊スポットも、まだ誰も開拓してないような掘り出してない「何か」があるんじゃないかとてワクワクしてしまう場所です。

乙女の祈り……何かに対して恨む気持ちを綴った文章が刻まれた松の木があるとされる心霊スポット。2026年現在は伐採され切り株のみが存在しているという。

屈指の心霊スポットである某橋で地元の人に取材をする由乃氏

ウラロジ仙台編集メンバーからの質問

質問者・大沼

夢朗さんのイラストを拝見いたしました。ホームページで見た【ブラインドガーディアン】とバトスピのカードイラストの【偽天使ファルソ】がとても好きです。
イラストやCG制作、モデルさん、怪談と呪物集め……たくさんのことに取り組んでいらっしゃる夢朗さんですが、そんなにたくさんの仕事に取り組める理由はありますか?

由乃氏のイラスト

由乃夢朗:全ての業種を一緒にやってた期間っていうのは多少ありましたけれど、基本的に昔はイラストの仕事をずっとやってて。

今はその仕事をちょっと離れて、今はオカルト1本でやってるぐらいの感じになってます。 モデルっていうのもちょっとやっただけの話であって、そんなにやっていたわけじゃないので。 ただ一時期は平日はゲーム会社、 土日は取材に行くか、トークイベントに行ってるっていう。 完全に休みがないような状態が2年間ぐらいはありました。

イラストの仕事を主にソシャゲの界隈からたくさんいただくようになって、結構ギャラもすごく良かったんですよね。 これで食っていけるなと思ったんですけど、昔ながらのゲームの方が大好きで、ソシャゲの世界のゲームにはあまり興味があまり持てなかったんですよ。 

だからそこでイラストを描けるっていうのは、すごく楽しかったんですけれど、これを一生やろうとはちょっと思えなかった。
そんな中、怪談とかするようになって、めちゃくちゃ楽しいって思えるようになったんですよね。 

それまでの人生で僕がこういう体験したってことを人に話しても、忌み嫌われることが多かったんです。 友達とかにも「またそんな話か」みたいな感じで言われちゃうことが多かった。 そんな中、いろんなところにアウトプットするようになって、忌み嫌われるどころかお金を払ってまで聞きに来てくれたり、本に僕の話を載せてくれる機会があったり……水を得た魚のように楽しくて、自然とそっちの方に力を入れるようになってきたんです。

 さらに追い討ちをかけるように、その後イラスト業界にAIというものが入ってきちゃいまして、ここからギャラとか待遇が下がりました。そういうこともあって、今はもう完全にオカルトに振ってるところは大きいです。

質問者・艶姫猫子

怪奇現象が起きた時に、「この怪奇現象はあの呪物のせいだな!!」とわかるものなんですか?

 

由乃夢朗:いや、基本的には全くわかんないですね。 うちの家はもともと事故物件でもあるし、呪物がいっぱいあるし、その上いろんな取材をしているので。 何かわかんないことがほとんどなんですけど、たまに「これだ!」ってわかることがありまして。

あまりカーテンを開けてない場所があるんですが、久しぶりにそこのカーテンを開けたら赤ちゃんぐらいの大きさの手の跡がいっぱい付いてたんですよ。
「クマントーン」という赤ちゃんにまつわる呪物を保管しているので、それかなぁ、と。もしくは以前僕は座敷童子を見た経験があるので座敷童子の方の可能性もあります。

いずれにせよ、このどちらかだろうなと思っています。

クマントーン……タイの呪物。亡くなってしまった赤子が本来積むべきだった「功徳」を死後も積めるようにという仏教的思想のもと作られている。

参照:『呪物紀行 由乃夢朗編』

AIには生み出せない、生きている人の「熱」を感じたい

―AIの技術が発展していることについて、夢朗さんはどんなことを考えていますか。

由乃夢朗:AIというというものが出てきて、あらゆるクリエイターが翻弄されていると思うんですよ。 「私の仕事がなくなってしまうんじゃないか」とか。

人が作ってる熱量が愛されてきたし、自分たちもここにプライドを持ってやってきたのに、それはすべてインスタントなものになってしまった。だから、オカルトに関しても、取材力や考察力を高めていかないとAIに負けるなって思いましたよ。

例えば、現地を取材するとか地元の人から話を聞くとか、それはAIが決してできないことだと思うんですよ。
オカルトの魅力を世の中に伝えていくにあたって、自分の名前と顔を出してやっていくっていうのは大事なことだなと思いました。「人間の熱でできていますよ」というメッセージを発信していきたいです。 

―呪物をエンタメとして扱うことについて、どう思われますか?

由乃夢朗:呪物って「怖い」っていうイメージしかなくて、結構勘違いされることが多いんですよ。 僕は「怖い」以外の知的欲求を満たす楽しさであるとか、もっとかわいそうな存在でもあるっていうことも伝えたいんですけども、やっぱりなかなか耳を傾けてもらえない。でも、「エンタメ」という入り口を通すと、みんな耳を傾けてくれるんですよ。
だから、その入り口として僕はすごく歓迎しています。

僕自身もすごく楽しんでる部分もありますし。 ただ、やっぱりエンタメという表面的なところだけで終わるのは良くないので、着地点として自分の考えを持つことを大事にしているし、そこもセットでアウトプットできたらなとは思っています。

ただ、他の人のやっているエンタメの中には「これはちょっとな」って思うことは結構あります。 呪物に対して誤った知識をそのまま正解であるかのように発表してしまっている場面を見てしまったときなど、ちょっと悲しい気持ちになったりもして。

呪物や現象に対して答え合わせをできる人があまりいないという問題があるから起こってしまうことではありますが、きちんと情報を精査することで答え合わせできる場合もあるのに、間違った情報が出てしまうということが僕の目で見ている限りかなり多いので、そこは自分の活動の中でエンタメという入り口も通してちゃんと僕が発信していきたいなと思っています。

―これから挑戦してみたい活動や目標があれば教えてください。

由乃夢朗:実際の「死」が関わる話がただのホラーで終わって良いわけがない。同時に弔いにもなるようなスタンスを、より色濃く打ち出すにはやはり執筆活動だと思ってます。

他に、より具体的な挑戦でいうと、YouTube生配信で一人百物語をしようと思ってます。計算すると12時間くらいはかかりそうですが去年、生配信で一人で12時間雑談をし続けてわりと平気だったので、やってみようと思いました。

―怪談やオカルト文化を好きな人に伝えたいメッセージをお願いします。

由乃夢朗:オカルト全般が「エンタメ」を免罪符にAI・ヤラセ・作り話が目立つようになってしまいましたが、僕は昔ながらのガチンコで勝負していきたいと思ってます。その熱を感じ取って頂けたら嬉しいです。怪談や呪物のご提供をお考えの方はぜひ、由乃夢朗まで!

「呪物紀行 由乃夢朗編」には仙台の某橋にまつわる生贄の話も掲載されている。

2026年8月仙台でのイベント出演決定!

今回お話を伺った由乃夢朗さんですが、この度2026年8月16日(日)、仙台の「誰も知らない劇場」にて開催される「誰も知らない劇場  魔の集い編」に西浦和也氏・黒木あるじ氏と共に出演することが決定!

チケットは5月9日(土)より発売開始ですので気になる方は是非チェックしてください!

▼イベント情報URL
https://x.com/DareshiraNight/status/2047510852434071801

取材日:2026年2月14日
インタビュー・執筆:花
写真:花
画像提供:由乃夢朗様