旅日記:思いつきで仙台から福島市を目指したら所要時間6倍になった

おでかけ部

こんにちは。佐々木かいです。

特に予定も無かった8月のとある日曜日、たまたまWEBで見かけた福島市のブックカフェ「本と喫茶 コトウ」さんがとても素敵そうだったので、「行ってみよう!」と思い立ちました。

今回は、隣の県を気ままに目指す小旅行の記録を書いていきたいと思います。

大の乗り物好きで地図を読むのも街を歩くのも好き、そして日頃から思いつきで行動しがちな私に「自由」を与えるとどうなるのか、しばしお付き合いください。

序章:遠ざかる最短経路

元々は遠出をするつもりなど無かったので、仙台市南部の自宅を車で出発したのは10時半頃。夏休みも終盤で目立った渋滞も無く、仙台南ICから東北道に乗れば1時間くらいの気ままな一人ドライブになるはず、だったのですが……。

出発早々、高速道路で向かうことに気乗りしなくなってきました。

ここからの話は宮城県南部の道路事情を知らない方を置いてけぼりにしかねないので、フリーハンドで地図を描きました。昔、自宅から小学校までの地図を手書きで提出しなければならなかったのを思い出します。近年はGoogleマップで良いらしいですね。勢いだけで描いたので小汚いし縮尺もメチャクチャですが、ご容赦ください。

さて、仙台南ICから菅生PAを経て村田ICまでの東北道は地味に「難所」です。急なカーブや坂道が続き、交通量も多いので抜きつ抜かれつも目まぐるしく、妙に神経を使います。
仕事の行き帰りや誰かを乗せて通る分には気になりませんが、今回は気ままな一人ドライブです。行きはまだしも、交通量の増える夕方に消耗しながら帰宅するのはなぁ……

……

気がつくと、私は仙台南ICに向かうのをやめていました。

何のことはない、一般道で行けば良いのです。少し時間はかかりますが、高速料金も節約できますからね。国道4号も岩沼市までは渋滞しがちですが、金蛇水神社あたりを経由する県道で柴田町に抜ければ(神社で特別な催事でも無い限り)スムーズです。

しかし、名取市に入った辺りで再び迷いが生じました。

私は県南部に親類縁者が多く、このルートを過去に何度も往復しています。名取市の愛島より南側は片側1車線の単調な道が続き、走りやすいのですが、これがまた……毎回眠くなるのです。

睡魔と闘いながら運転するのも疲れるんだよなぁ……。

とか何とか考え始めて早々、私はJR名取駅西口のコインパーキングに車を駐めました。
そうです。行き先は福島の街中なので、そもそも車で行く必然性はありません。列車に乗り換えてしまえば良いのです。駐車料金は24時間で500円。最近やたらとバブリーな仙台市中心部の相場に比べると、お手頃に感じます。

1/6 自動券売機の罠

名取駅の改札口

名取から福島まで東北本線の普通列車で行くと1時間少々かかり、片道1221円(ICカード利用時)。列車を使う利点は何と言っても、ウトウトしても乗り過ごすほど熟睡しなければ問題ないことです。スマホを見ようが本を読もうが、他のお客に迷惑をかけない範囲の自由が保障されています。

さらに!福島までのルートは一本道ではなく、途中の槻木から阿武隈急行線(阿武急)に乗り換えて向かうこともできます。ちなみにJRだけで向かうよりも30分ほど時間はかかり、運賃も20円ほど高くなります(区間によっては阿武急経由のほうが安くなることもあるようです)が、旅路に加わる潤いを考えれば誤差の範囲です。

残念ながら、阿武急は交通系ICカードを利用できません。したがって、駅の自動券売機で紙の切符を買って乗ることになります。

しかし、名取駅の券売機を操作してみると、どうやら丸森駅より南への切符を買えない(選択肢が表示されない)ことが判明しました。「みどりの窓口」で問い合わせれば買えると思いますが、ちょうど混み合っていたので、素直にJRで真っすぐ向かうことにします。

そんなこんなで、名取11時14分発の白石行きに乗りました。白石駅では隣のホームで福島行きの列車が接続し、福島駅には12時25分に着くはずです。

2/6 整理が苦手で、影響されやすい男

列車に揺られていると、バッグに一冊の本が入っているのを思い出しました。

フリーライター・スズキナオさんの『新幹線から見えたすき家へカレーを食べに行く』(太田出版、2026年)。WEBメディア「デイリーポータルZ」の連載を書籍化したエッセイ集です。

新幹線の車窓からの風景。誰かが暮らす町、自分の知らない店、会ったことのないたくさんの人々。

ちょっとセンチな気分で「眺めていただけ」のそんな場所へ、実際に行ってみたらどんな気持ちになるだろうか――。

旅・人・店・趣・食……歩いて飲んで記録する、<令和エッセイの名手>スズキナオのなんだかちょっと不思議な「旅」の記録。

引用:太田出版HP 『新幹線から見えたすき家へカレーを食べに行く』

日常と地続きにある非日常(誰かにとっての日常)を飾らない筆致で綴る本書は、普通列車の旅のお供にピッタリではありませんか。バッグの中身をろくに整理しない私、偉いぞ!

エッセイを読み進めていくうち、私もスズキさんのような、普段通りすぎている日常風景にスッと分け入り、溶け込むような旅をしたくてたまらなくなりました。整理整頓の苦手な私は、何かと影響されやすいタイプでもあるのです。

列車はすでに大河原を過ぎていましたが、福島駅に着くまでに何か「小粋な」寄り道はできないものか……。例えば、途中の駅からうまい具合に路線バスが伸びていたりしませんかね?

み〜つけた……(20世紀少年?)

福島駅の3つ手前の桑折(こおり)駅から、福島交通の路線バスが出ているのを!

バスが発車するのは、白石からの列車が着いて8分後という神接続です。桑折町の市街地から国道4号を南下し、福島競馬場の前を通って福島駅東口まで30分ほど。列車なら14分ですが、気軽な寄り道にうってつけのバスが都合良くありました。

これに共感していただける方は(冒頭の東北道仙台南IC以南の話よりも)少なそうですが、予備知識のほとんど無い状態から面白そうな別ルートを見つけ、全体の行程にも支障が無いと分かった時、脳内からは何とも言えない快感物質が出ます。これも今流行りのドパ……ということでしょうか。

白石駅で福島行きに乗り換え。階段の昇り降りが不要で便利です。

誰と競っているわけでもないのに勝利を確信した私は、白石駅で福島行きの列車に乗り換えて県境を越え、桑折駅に初めて降り立ちました。

3/6 ローカルバスで浸る、隣県の日常

JR桑折駅

桑折駅は人口約1万人の福島県桑折町にある唯一の駅で、JR東日本のHPによると2024年度の1日の平均乗車人員は548人です。

駅前には立派な広場が整備され、老舗の風格を漂わせる酒屋さんもありますが、日曜の昼間とあって人影はほとんど無く、ただ蝉の声だけが響いていました。

やがて、駅前から伸びる通りにバスの姿が。

運転士さん以外に人影は見えず

何となく予想していた通り、乗り込んだのは私一人だけ。一番後ろの広い座席に腰掛け、車窓を楽しむことにしました。

バスはかつての奥州街道を一路、南へ。趣のある町並みが続きます。

東邦銀行のカラフルな看板を見ると「福島県に来たぞー」と実感しませんか?

車窓にレトロな建物が!

1883(明治16)年に竣工したという「旧伊達郡役所」は国の重要文化財で、国内に残る郡役所の建築としては最大規模とのこと。この時は工事中でした。いつかゆっくりと訪れてみたいものです。

そして、福島県を感じるものと言えば、この車内広告も印象に残りました。

東京電力福島第一原子力発電所の燃料デブリ取り出し(中央)、ALPS処理水の海洋放出

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から15年が経ち、仙台で普通に暮らしていると意識することも減った気がしますが、まだまだ終わりの見えない現在進行系の社会問題です。

隣の県に行くだけで接する情報の質や量、そして地域社会への影響度も大きく変わることを実感し、地図に太く引かれた県境の線に一体どれほどの意味があるのだろう?

と、ローカルメディアに関わっている一人として考え込んでいるうちに、バスは伊達市に入っていました。片側2車線の国道4号を快調に進んでいきますが、乗客は相変わらず私だけです。

巨大モールの建設現場

右手には、2026年11月に開業予定の「イオンモール伊達」が見えてきました。

東北中央道の伊達桑折ICに隣接し、福島県内最大規模の商業施設になります。
名取市のイオンモール名取では福島ナンバーの車もたくさん見かけますが、開業後は福島の人たちが宮城に来る機会も減ってしまうのでしょうか。だとすれば、ちょっと寂しい……。

4/6 途中下車して「鶏づくし」ランチ

福島市に近づくにつれて建物の増えてきた車窓を眺めつつ、私は先ほどから、降りるバス停をどこにするか迷っていました。そのまま乗っていれば福島駅に連れて行ってくれるのですが、せっかくなので、中心部よりも手前に美味しいお昼ご飯にありつけるチャンスは無いものか?と、Googleマップで検討していたのです。福島交通はGoogleマップでルートやバス停の位置が表示されるので便利!!

どこにでもありそうな国道沿いの景色

熟慮を重ねた結果、私が降車ボタンを押したのは福島市に入って数分の「瀬上(せのうえ)中央」というバス停でした。周辺には国道沿いらしく多くの店が建ち並んでいますが、今回は「ごはん屋moa」さんに入ってみることにしました。

後で知りましたが、2026年5月にオープンしたばかりのお店でした。

選択理由は「身体に良さそう」だったから。

看板のニワトリでお分かりの通り、鶏肉にこだわり抜いた「鶏料理」の専門店です。親子丼や水炊きラーメン、唐揚げ定食などを1000円前後で楽しむことができます。

着丼!!

私がいただいたのは「とりづくし丼」(税込900円)です。鶏のあらゆる部位が載っているので、いくら食べても全く飽きが来ず、癖になる一杯!!
今度は他のメニューも食べてみたいですし、宮城県にも出店してほしいくらいです。ごちそうさまでした!

ごはん屋 moa(モア)

所在地:福島市瀬上町字町裏6-1
営業時間:10:00~13:30 ※食材がなくなり次第終了
SNS:https://www.instagram.com/gohanya_moa/

5/6 旅先のブックオフは良いぞ

さて、バスをここ瀬上中央で降りたのには、もう一つ理由があります。

実はバス停から住宅街を8分ほど歩いた先に、阿武急の瀬上駅があるのです!

先ほど名取駅で券売機の仕様によって諦めた阿武急に(だいぶ短距離ではありますが)乗ることができます。リベンジを果たしましょう。

……とは言え、日曜の昼ということもあり、列車は1時間に1本しかありません。「ごはん屋moa」を出た段階でも次の列車まで40分以上ありましたが、これまた都合の良いことに、隣にはブックオフ 福島瀬上店が!

♪本を売るなら

せっかく遠くに来たのにチェーン店なんて、と侮ることなかれ!ブックオフは店ごとに商品が全く違うので旅先でも楽しめるんですよね〜。惹かれる本を無数に見つけ、あっという間に時間切れ。3冊ほど購入し、のどかな住宅街を早歩きで瀬上駅を目指します。

眼力重視の飛び出し坊や

6/6 赤い電車(2両)でゴールへ

高身長強制かがませガード

瀬上駅は福島駅から数えて3つ目の無人駅。公式キャッチコピーは「りんごの里」で、すぐ裏手にはリンゴ畑が広がっています。

高さ1.8mという、道幅の割に低すぎるアンダーパスをくぐって近代的なホームに上ると、淡い色の塗装が多い気がする東北には珍しい、ビビッドな赤色の印象的な列車が入ってきました。

「♪ 赤い電車は 羽田から」「いいえ、槻木からです」

くるりの名曲「赤い電車」が自然と脳内に流れますが、ロケーションから列車の長さまで、何もかも違います。

 

参考:本家の「赤い電車」に乗っかれる横浜市の京浜急行電鉄本社前

なお、阿武急のことは関東在住、東北出身メンバーによる東北応援プロジェクト「けっぱって東北」の皆さんが歌っています。

と、さんざん寄り道をしてきましたが今度こそ福島駅に到着です。

阿武急の福島駅は福島交通飯坂線との共用。ほんのり懐かしさの漂う終着駅です。

終章:寄り道は最高!※タイパ・コスパ除く

時刻は13時53分。自宅を出てから3時間以上かかりました。
東北新幹線に乗れば仙台駅から30分以内で着くことを考えると、タイパとしては最悪の行程です。
コスパで言ってもそんなによろしくありません。桑折駅前から瀬上中央までのバス代が地味に高い&阿武急待ちのブックオフで衝動買いしている時点で……。

でも、楽しかったからいいんです。自己満足は人生の必須アミノ酸みたいなところがありますからね。

時間もお金もそこそこかかりましたが徒労感は全く無く、何ならこの先も「あみだくじ」のように進んで、明るいうちに白河の関を越えられるのか試したい気分でした。

しかし、そもそも高速道路で来なかったのは帰り道を心配してのこと。一人で道草を楽しめる童心と、現実問題を考えて無難なほうに流れる理性との間で揺らめきながら、30代の私はどうにか破滅を回避しています。あぶねー。

福島県庁近くのビル2階にある「本と喫茶 コトウ」さん。和やかな雰囲気でゆったりくつろげました。

本と喫茶 コトウ

所在地:福島市大町9-21 ニューヤブウチビル2階
営業時間:12:00~19:00(定休日:火曜)
SNS:https://www.instagram.com/kotou.books.cafe


 

ー完ー

取材・執筆:佐々木かい