仙台のクリエイターさんを応援する、発信の場となるメディアへ
ウラロジ仙台チャレンジクリエイター名鑑は、仙台を中心に活動しているクリエイターさんを紹介するコーナー。
このコーナーで取り上げたクリエイターさんには、ウラロジ仙台で不定期連載を行っていただいております。
ウラロジ仙台という作品発表の場を提供することで、クリエイターさんの作品づくりをサポートするとともに、仙台を中心に活動する仲間として協力していければと考えています。
世界を愛するアーティスト・ぱっちくちくさん
今回ご紹介するのは、宮城県出身のアーティストであるぱっちくちくさんです。
ぱっちくちく《光ピカピカハウスは、ほんとにあるよ》https://x.com/ikiteruyomite/status/1772860906973593603
絵の制作を中心に活動しているぱっちくちくさん。SNSでウラロジ仙台の編集長である恐山Rを発見し、仙台で面白そうなことをしている人だ!と勢いでご連絡してくださったのがきっかけで、ウラロジ仙台でも連載を持っていただくことになりました。
ぱっちくちくさんは、「形の掴めない、心にある希望を描く」ことをコンセプトに制作を行っているのだとか。仙台市で過ごしていた学生時代の思い出から現在の制作活動を通じて表現したい思いまで、独特の語り口と雰囲気で語ってくれたお話をぜひとも皆様にもシェアしたく、今回はインタビュー形式でぱっちくちくさんをご紹介させていただければと思います。
先日スタートした連載と併せてお楽しみください!
2024年6月11日(火)14:00
恐山R:……既読ついてないけど大丈夫かな……まあちょっと待ちますか。
編集S:はい!
※この日のインタビューはオンライン通話で行いました。事前にお送りしていたメッセージに既読がついていない、という話をしています。
(数分後、ぱっちくちくさんが通話に参加したとの通知。)
恐山R:あっ。
編集S:あっ!ぱっちくちくさん?
ぱっちくちく:すみません、今聞こえるようになりました……。
恐山R:よかった~!
編集S:こんにちは!まずは自己紹介させてください。私、ウラロジ仙台編集部のSと申します、初めまして。
ぱっちくちく:初めまして……。
恐山R:恐山・R・クロフォードです。ウラロジ仙台の編集長をしています、よろしくお願いします。
ぱっちくちく:ぱっちくちくと申します。絵を描くのが好きです、よろしくお願いします。
編集S:よろしくお願いします!それでは早速インタビューというか、色々お話させていただきたいんですけども。いま自己紹介していただいたんですが、もう少し詳しくプロフィールや活動についてお聞きしたくて……
ぱっちくちく:はい、あの……一応コンセプトとして、「形のつかめない、心にある希望を描く」っていうのが……すいませんちょっと、水飲んでいいですか?寝起きすぎて声が……
編集S:!? あっ大丈夫です、どうぞどうぞ!
恐山R:それはもちろん、しっかり飲んでいただいて。
ぱっちくちく:(ごくごく)……はい!これでさっきよりマシになった気がします。
恐山R:ほんとだ!声が元気だ。
編集S:申し訳ないです、性急に本題に入ってしまって。
わからないこと、つらいことのなかにある希望
シームレスにインタビューに戻ってくれるぱっちくちく:私、そもそもめちゃめちゃ鬱病なんですけど。自分の心のなかに、「こういう形の希望があるな」っていうのを探し出して……でもその形はよくわからないし、見えないものだから。それを絵にすることで視覚化できるし、見えるものになって、「希望」って自分で言えるようになる。
編集S:作品にすることで目に見えるようになるんですね。目に見えるようにするっていう行為として、絵とは違う形の作品にすることはありますか?
ぱっちくちく:世に出してるものはイラストだけなんですけど、最近音楽やりたいなと思って頑張ってます。自分の好きな服着て好きなメイクしてっていうのも十分、「こうなりたい」っていう欲望を形にできているので、希望だなって思います。
編集S:ぱっちくちくさんにとっては「こうなりたい」「こういうことをしたい」って思うことそのものが希望って感じなんでしょうか。
ぱっちくちく:それも希望だし……「わからないもの」っていうのは、不安にもなり得るけど希望にもなり得ると思っていて。どうせ外れるって思って宝くじを買うんじゃなくて、当選確率2倍!って言われたらついつい買いたくなっちゃうような。そういう、わからなさのなかで不安じゃなくて希望の方をつくりたい。
恐山R:ワンチャンあるかも、みたいな。
ぱっちくちく:そうですね。だからファンタジーっぽい世界観になりすぎないようにしてます。
編集S:ちゃんと叶いそうな希望であるように。
ぱっちくちく:はい、「こうなったらいいな」の妄想の延長線上からは外れないように。
ぱっちくちく《no text》https://x.com/ikiteruyomite/status/1850893890431353329
編集S:想像力を活かして制作している人って、現実ではあり得ないようなものをあえて作品にしている印象もあるんですが。むしろその逆で、ちゃんとリアリティーのある……
ぱっちくちく:わかりやすく言うと、ディ◯ニーランドをつくりたくて。
編集S:えっ。
恐山R:そうなんだ。
編集S:確かにファンタジーだけど現実ですね、ディズ◯ーランド。
ぱっちくちく:そうなんですよ。色々な人の力で現実だけど夢のようにつくられてる。目指すところはそこです。
編集S:め、めっちゃかっこいい……
恐山R:キャラクター絵画系の文脈の方で作品を確立してきた人たちっていうのは、鬱屈とした感情をそのまま絵に反映しているっていう方もすごく多くて。希望を見出そうって方向性の方は私、もしかするとぱっちくちくさんのほかにはほとんど見たことないかも……だからすごくいいなって。これはただの感想ですけど。
ぱっちくちく:その話を聞いてて思ったんですけど、私初めて大好きになったバンドがamazarashiなんですよ。
ぱっちくちく:amazarashiも曲の最後に希望を入れてくるんです。憂鬱だけを歌った歌って結構あると思うんですけど、「憂鬱だけどこういう希望があるかもしれない」っていう、逆転の発想の希望が入った歌が多くて。意識はしてなかったけど、中学生のときからずっと聴いているので影響を受けてるかもしれないです。
恐山R:なるほど。特に好きな曲とかありますか?
ぱっちくちく:いっぱい好きなんですけど……『奇跡』って曲があって。最初の方はすごく共感できる、憂鬱っぽい歌詞なんですけど。
これわりとやけになってつくったって、作詞作曲している秋田ひろむさんがおっしゃってて。Cメロ辺りで、悔しさとか痛みとかも奇跡と思えたなら無価値なことも特別になる、ありのままで奇跡なんだって言ってて、これって逆転の発想で出てくる希望だなって。こういうところに影響を受けてるかもって、今お話していて気付きました。
可愛らしくも力強い作風の源泉は逆張りにある……かも?
編集S:ぱっちくちくさんのイラスト自体は、どちらかといえば可愛らしい感じと形容されるテイストだと思うんですけども。実際にはとてもタフというか、力強い作品なんですね。
ぱっちくちく:ありがとうございます。力強いっていうのは昔から結構言われてて。小学校の授業で絵を描いたり書道をしたりしたときも、力強い作品だねっていうのは言われてました。根本的な力の強さ……気の強さ?みたいなのはあると思います。
編集S:え、やっぱり……かっこいいかも。めっちゃ。
ぱっちくちく:やったあ。
恐山R:制作の背景を知れると作品もまた一層よく見えてきて。
ぱっちくちく:絵って、一瞬で見て飛ばされちゃうこともある。その一瞬でどれだけ「見たい」と思ってもらえるかが大事なので、結構詰め詰めで描いてます。
恐山R:X(旧:Twitter)のメディア欄を拝見していても思いますが、アイキャッチ的な見せ方が上手いですよね。でも既存のフォーマットに乗っかっているわけでもない。
ぱっちくちく:そうですね。こうやったらよく見えるよ、みたいなものは逆張りオタク的に使いたくない気持ちがすごくあるので。1回ばーって描いて、どうしたらよく見えるかなって修正しながら……だから1回目の案をじっくり練るってことはあまりないです。瞬間で大体の形は決めちゃって、そこからどう魅せられる作品にしていくかの戦い。美術の先生に怒られそうな描き方してます。
ぱっちくちく《だめなのかなあ?》https://x.com/ikiteruyomite/status/1800060324495950253
心を込めて、命を削って
編集S:好きなバンドがamazarashiということでしたが、ほかにも好きなもの、影響を受けているかもと感じるものはありますか?音楽でもいいしアーティストでもいいし、漫画でもなんでも。
ぱっちくちく:『3月のライオン※』の影響はすごく受けていると思います。羽海野チカ先生の。
『ハチミツとクローバー』等の著作で知られる漫画家・羽海野チカ(うみのちか)による漫画作品。主人公は幼い頃に家族を失った桐山零。零がプロ将棋棋士としての道を進む中での成長や葛藤、家族愛や絆が描かれている。登場人物たちのこまやかな心象風景の描写と、柔らかい絵柄が読者の心を掴んでいる名作。
ぱっちくちく:まだあの領域にはたどり着けていないんですけど……あの作品はすごく丁寧に丁寧に希望を描いてくれている。どれだけ心を込めてこの絵を描いているのか、って結構見たらわかる感じがするんですけど、『3月のライオン』は全てのページに心が込められているのがわかるんです。あんなにすごい漫画家の先生がここまで命を削って描いてるんだから自分もさぼるわけにはいかないな、っていう喝の入れ方をしますね。
編集S:自分も頑張ろうっていうモチベーションになりますよね。
ぱっちくちく:羽海野チカ先生って、心象風景を絵にしたりたとえ話をしたりするのもすごく上手なんです。漫画って実は絵はそんなに重要じゃなくて、話が面白ければ読めると思ってるんですけど、そのなかでも特に読み飛ばされちゃうようなコマにも大きな一枚絵を描くのと同じような力が込められている。そこが大好きです。
編集S:確かに、文字だけ読んでさらっと流してしまうコマもいっぱいありますね。そこも手を抜かないんだ。……先ほどもなるべく詰め詰めで描いているとおっしゃっていましたが、ぱっちくちくさんもひとつひとつの絵に心を込めて描こうと。
芯がぶれない理由、制作についての思いを言葉にすること
編集S:一応インタビューなのに、さっきから感動しちゃって全然上手く回せなくなってきた。普通にかっこよすぎて泣きそう。
恐山R:大丈夫?みんなで泣く?
編集S:いや……私も頑張らないと。ええと、これまでのお話と重なる部分もあるかと思うんですが。「希望」を表現する媒体としてなぜ絵を選んだのか、何か理由はありますか?
ぱっちくちく:絵を「選んだ」って感覚はあまりないですね。小さい頃から絵を描くのが好きで。中学生の頃も(授業中に)ノートを取りたくなくて、ずっと絵を描いてました。先生にも「ずっと絵を描いてる人」って認知されたから、毎回ノートを覗きに来るようになっちゃって……
編集S:ノート取ってるか毎度チェックされてる。
ぱっちくちく:だから自然に、美術予備校に通ったりもして。「私にしかできないことをやること」に自分の生きる意味を感じるから……私のバックボーンを持って希望をつくることって、私にしかできないから。それの表現媒体として、身近にあった絵を自然と選んだって感じです。
編集S:絵は元々ずっと描いていて、だんだん表現したいことが明確になってきた感じですかね。
恐山R:言い方は失礼になってしまうんですけど、すごくしっかりされてますよね。ぱっちくちくさんと同じような世代の若いアーティストで、考えとかコンセプトについて突然聞かれて、ここまでスムーズに言語化できる方ってあまりいないと思うんです。作品を通してしたいこと、見せたいことが明確にある。
ぱっちくちく:私自身がふよふよしてる人間なので、ちゃんと「これをやってるんだよ」って整えておいてあげないと、ある日何がしたいのかわからなくなっちゃいそうで。だからこれ、って自分のなかでちゃんと決めてます。
編集S:ぱっちくちくさんがそうして芯を持って制作してる絵を見て、自分のなかにある漠然とした形のないものに目を向ける、手触りを感じられるようになるって人も多いと思います。それってすごく……見た人を……元気にしてくれそうですよね、きっと。
恐山R:語彙が足りてないなあ。
ぱっちくちく:自分のなかにある妄想で終わらせたくない、って思いがあって。「貴方の心のなかにもこういうきらきらがあるんだよ」ってことが伝わったら嬉しいです。
ぱっちくちく《no text》https://x.com/ikiteruyomite/status/1708729083859976613
編集S:ファンの方々もぱっちくちくさんのメッセージを受信してくれてると思います、SNSでの反応を見ていると。すごくあたたかなファンコミュニティですね。
サブカルだけどサブじゃない。当たり前の顔でメインを張ろう
編集S:ぱっちくちくさんがウラロジ仙台に連絡をくださった経緯についてお聞きしてもいいですか?
ぱっちくちく:定期的にSNSのフォロワー欄を漁っているんですけど、そしたら面白そうな人(※恐山R)がいて。
面白そうな人・恐山R:うんうん。
ぱっちくちく:よく見たら仙台の人だったので、勢いで連絡しちゃいました。私も何か描きたい!と思って。
編集S:ぱっちくちくさんも出身が宮城ということで。
ぱっちくちく:はい。仙台の高校に通ってたので、仙台市にも結構縁があります。カラオケ大好きだったので、わざわざ一番町のディズニーストアの上にあるJOYSOUNDの直営店まで歩いていってました。仙台駅近くの高校に通ってたんですけど、直営店は料金が安かったから。あとは当時ポケモンにはまってたので、PARCOのポケモンセンターにもよく行ってました。
編集S:よすぎる、この青春エピソード。
恐山R:ほんとにな。ぱっちくちくさん的には、これからウラロジ仙台でどんなことをしていきたいですか?目標とか、なんでもいいんですが。
ぱっちくちく:仙台で当たり前にサブカルチャーとして扱われているものを、当たり前の顔してメインカルチャーとして描きたいですね。たとえば、田舎で派手な格好をすると偏見の目で見られるじゃないですか。そういうのも「当たり前にメインだ」ってことを描きたい。
編集S:めちゃくちゃいい。私、サブカルチャーの価値をサブであることに見出すのが苦手なんですよ。
ぱっちくちく:えっ、わかります。サブカルチャーだから好きって方もきっといらっしゃるんですけど、好きな分野がたまたまサブカルだったって人の方が多いと思うので。
編集S:だから隙あらばメインになりたい。
ぱっちくちく:そう。
編集S:メインとサブって、明確に上下関係があるワードじゃないですか。そうじゃなくて、それぞれがひとつのメインストリームとして在っていい。
恐山R:通りがいいんですよね、サブカルって言葉。
編集S:サブカルだからどうこうじゃなくて、単純にこれが好きなんですって、当たり前の顔して言えるようになると嬉しいですよね。
ぱっちくちく:そうなんですよ。サブカルチャー界隈を見てると、これはサブカルだから許されるって理由で色々している人が散見されるので……意味わかんないと思ってるんですけどね、ケーキを手づかみして食べるのがいいみたいな。あれってサブカルだから許されている甘えだと個人的には捉えていて。こういう理由で手づかみしてるっていうのがあれば納得できると思うんですけど、なんか可愛くて黒髪でボブの子がケーキをぐしゃってするのが美しい、ぐらいの認知じゃないですか。
サブカルチャーって言葉に甘えるな!って。サブカルチャーはあくまでサブに分類されているだけであって、サブであっていいという意味ではない。
編集S:そうですよね、サブカルチャー的な記号をなぞっていればサブカルになれるわけではないはずなんだけど、ちょっとイメージだけひとり歩きしてるというか。確かにね、黒髪ボブケーキ手づかみお風呂場、みたいな……
ぱっちくちく:そうそうそう!
恐山R:ちょっと前だと黒髪ロングセーラー服の女の子が包丁を持ってるみたいな。そこに文脈があればいいけど記号化しちゃって、結果商業的に消費されちゃって、もったいないですよね。最初はちゃんと意味や文脈があったはずなのに、色んな人に波及していくなかで意味が薄れていってしまう。
ぱっちくちく:そういうのがサブカルとしてまとめあげられていることが嫌で。だって犯罪者の真似をしたら奇人になるわけじゃないですか。でもサブカルっぽい美しいことの真似なら文脈がなくてもしていいってみんな思ってる気がして。なんかそれっておかしくない?みたいな気持ちです。
編集S:いやもう……心から共感です。本当にそう。
恐山R:ウラロジではもうサブとかじゃなく、メインですが?って当たり前の顔してやりたい放題やってもらいましょう。めちゃくちゃ楽しみ!
ぱっちくちく《no text》https://x.com/ikiteruyomite/status/1725420066525827119
というわけで、ぱっちくちくさんのインタビューでした。いかがでしたでしょうか。
ぱっちくちくさんのお話が興味深すぎて、この面白さをどうお伝えすればいいか悩みまくった結果世に出すまでにかなり時間がかかってしまいました。本当に……筆が遅くてすみません。
だってぱっちくちくさん、言うこと全部がパンチラインなんだもん。サブカルチャーはあくまでサブに分類されているだけであってサブであっていいという意味ではない、ここまでストレートにぶっ刺してくるセンテンスはなかなかないです。共感したりぎくっとしたり、とにかく心のやわらかなところに刺さった方も多いのではないでしょうか。イラストだけじゃなく話す言葉まで作品然としていて、根っからのアーティストなのだなあと強く感じたことでした。
ぱっちくちくさんのストイックな思いで生み出される可愛らしいイラストの数々を楽しめる交換日記は、今後もウラロジ仙台にて連載予定です。これからの更新もぜひ、お楽しみに!
インタビュイー:ぱっちくちく
記事制作・インタビュー:編集S
付き添い・編集:恐山・R・クロフォード
サムネイル(右):ぱっちくちく《帰ろっ》https://x.com/ikiteruyomite/status/1842157581374222486
ぱっちくちく(宮城出身・アーティスト)
絵です 世界を愛しています。キラキラを拾い集めるっ★ みんなの夢守る。頭がごちゃごちゃてす。みててね。乙女の祈り。。♥。。わたしの大切 生きること 暮らし 少女 わたしのたからもの ♥ ご依頼等ありましたらDMまたはメールまで、まってます。
作品等まとめリンク:https://lit.link/pattikuku