【つれづれエッセイ】佐々木陽「記念獣」

陽さんのエッセイ、初お披露目

記念すべき第1回目のウラロジ仙台チャレンジクリエイター名鑑は、エッセイスト・佐々木陽さんのイントロダクション回でした。

そして今回はついに、陽さんのエッセイを掲載いたします!
こちらは、陽さんが初めてウラロジ仙台へ送ってくださったテキストでもあります。幼い頃の自分を客観的に、けれどどこか温かな視線で見守る陽さんの原稿を拝読して、ウラロジ仙台編集部はぜひ一緒に作品をつくっていきたいと陽さんにお願いすることになったのでした。
幼い陽さんの柔軟な発想に触れられるエッセイ、ぜひお楽しみください。

「記念」にまつわる、忘れられないひとつの思い出

記念────思い出となるような物を残しておくこと、またその物自体を指す言葉。
と、国語辞典には書かれている。この漢字は小学生までには習うものだし、その頃にはおおよその意味もつかんで、日常的に使えるようになる言葉だろう。
ところでこの「記念」という言葉に関して、きっと大したことではない、けれど自分の中では忘れられない、そんな出来事がひとつある。
幼少の頃、家族でテレビを見ていたときのこと。
『あっぱれさんま大先生』という番組のエンディングテーマ曲の中に、「揺れるきねんじゅう」という歌詞が出てきた。当時はネットなど普及していない時代である。偶然耳にした歌の歌詞をすぐ調べることなど出来なかった。まだあまり世界や言葉について知らない年頃だったこともあり、当時の自分は歌詞に出てきた知らない単語をそのまま、文字通りに「きねんじゅう」として飲み込んだ。飲み込んだのだが、どうにも引っかかる。まだ生まれて数年しか経っていないにもかかわらず、魚の骨以外にも喉に引っかかるものがあると知ってしまったのだ。
「きねんじゅう」とはなんだろう?
幼い俺は、わずかな知識しかない、プリンのようにつるつるな脳みそで一生懸命考えた。「きねん」はわかるが、「じゅう」とは?
例に漏れず戦隊ものや特撮ものが好きだった当時の自分は、「じゅう」は「銃」もしくは「獣」だと、そう思った。銃も獣も、戦隊ものや特撮ものではしばしば登場するモチーフなのだ。
とはいえ幼いながらも番組のテーマやコンセプトはなんとなく察していて、『あっぱれさんま大先生』という番組の雰囲気には銃だの獣だのといった言葉はそぐわないということも感じとっていた。その辺りの事情も子どもなりにかんがみて、「獣というには怪獣のことなのだろうけれど、やさしい怪獣もいるんだろう」「まだ番組に登場はしていないが、きっとそのうちやさしい怪獣である”きねんじゅう”が登場するに違いない」と確信するに至ったのであった。

エンディングテーマの歌詞に出てくる「きねんじゅう」とは、子どもたちをやさしく見守る「記念獣」だったのだ。


▲陽さんが描いてくださった「記念獣」。子どもにも読みやすいひらがなのパネルを掲げた、とてもかわいらしい怪獣です。(編集部註)

 

けれど結局『あっぱれさんま大先生』に記念獣なる怪獣が現れることはなく、いつしか番組自体が終了していた。揺れていたのは「記念獣」ではなく「記念樹」だったと知るのは、それからさらに数年後のお話。

今思えば、なんと自由な考え方だろう。少ない知識を駆使し、常識も固定概念も飛び越えて。そうやって考えることに楽しみを覚えたおかげで今の自分があるとも言える。あの出来事は、俺の中では確実に「記念」になった。

ありがとう、あっぱれさんま大先生。ありがとう、本当は存在しない、記念獣。
そしてこの記事を見てくれたあなたに、最大のありがとう。今日という日は、あなたが俺の文章を読んでくれた記念日だ。
きっとどこかで、あのときの記念獣も、揺れながら見守ってくれているはず。

 

陽さんのエッセイが読めるのは(今のところは)ウラロジだけ!

幼少期のユニークな思い出を振り返る陽さんのエッセイ、いかがでしたでしょうか?
文中でもご紹介した「記念獣」のイラストは編集がお願いして陽さんに描いていただいたものなのですが、とても素敵に仕上げていただきました。


こちらは陽さんご提供の没テイクたち。試行錯誤してくださったことが伺えます。どの子もかわいい!ギターのコードと記念獣たちのコントラスト、味がありますね。よく見たら裏にうっすらサ○エさんがいるな……。

今後も陽さんのエッセイ連載はコンスタントに続けていく予定です。
次回の更新もお楽しみに!

仙台のクリエイターさんを応援する、発信の場となるメディアへ

昨年7月、現在の体制にリニューアルしたウラロジ仙台。
今でこそ編集部の面々が中心となって制作するコンテンツがメインとなりましたが、以前は外部のライターさんにも記事を執筆していただいていました。ウラロジ仙台としての活動もまだまだ手探りな中ではありましたが、自分たちの情報発信の場としてだけではなく、仙台を中心に活動するクリエイターの方の作品発信も応援していきたいという思いがあったのです。

そして更新・運営の体制がそれなりに安定してきた今、ウラロジ仙台チャレンジクリエイター名鑑と題して、再び外部のクリエイターさんによるコンテンツを掲載していく場をととのえました!
Webメディアとしてはまだまだひよっこのウラロジ仙台ですが、仙台を中心に活動する仲間として協力し合い、一緒に作品をつくり、発信していくお手伝いができればと考えています。

ウラロジ仙台では、作品を発表したいクリエイターの方を募集しています!

ウラロジ仙台では、地元・仙台を中心に活動しているクリエイターの方々を応援しています。

作品をweb上で発表する機会を作ることで、創作活動やコンペへの応募に向けてモチベーションがほしい」「もっと多くの人に見てもらいたいから一緒に発信方法を考えてほしい……そう考えている方は、ぜひウラロジ仙台編集部(代表メール:info@studio-soda.com)まで、作品(もしくは作品に関係する企画・アイディアなど)を添えてご連絡ください。

エッセイ・小説・漫画、その他ジャンルは問いません。
ウラロジ仙台編集部と一緒に、魅力的な作品をつくってばんばん世の中へ出していきましょう!

 


佐々木陽(ささき・みなみ)


宮城県石巻市生まれ、石巻市立青葉中学校、石巻工業高校卒業。その後すぐに働き始め、今に至る。工場勤めで、ライン作業中に神社仏閣へ思いを馳せる毎日。

頭の中は音楽と深海魚。来世はバブルリングに巻き込まれるクラゲになりたい。

Twitter:@AKB40AGE


 

執筆:佐々木陽
編集:S