チャレンジクリエイター名鑑No.2でご紹介した、フリーライター・佐々木かいさん。
真面目でお硬いイメージを払拭し、苦手としている主観的な発信に挑戦していきたい……!というかいさんのやっぱりどこか真面目な思いを受けまして、ウラロジ仙台では、かいさんへの無茶ぶり企画「無茶ぶりクエスト」の連載をスタートすることになりました。
むにゃむにゃ通り商店街にて、予算1,000円以内でお土産をゲットせよ!
「千円をお渡しするので、むにゃむにゃ通り商店街で私たちにお土産を買ってきてください!」
「むにゃむにゃ通り商店街」とは、地下鉄南北線の五橋駅前の交差点から、東にまっすぐ、地下鉄東西線の連坊駅の方へと続く道のことである。周辺には仙台一高、仙台二華中高、仙台青葉学院短大など、学校がとても多い。2023年春には東北学院大の五橋キャンパスもできたので、学生の街として一層人通りが増えた。また、河原町方面とを結ぶ新しい道路も開通し、まさに仙台で最もホットな商店街の一つである。魅力的なお土産を買えないはずは無い。何だべ、楽勝でないの?
入学式に向かう新一年生のように胸を躍らせながら、地下鉄五橋駅前の交差点を東へと出発した。お土産を買うスポットとして、真っ先に思い浮かんだのは、「七曜星」である。五橋駅にもほど近い人気店で、生食パンやクリームパン、旬の果実をごろっと包んだフルーツ大福などを取り揃える。だが、取材したのは月曜で定休日。「七曜星なのに休みの曜日があるのはいかがなものか」と一瞬思ったが、潔く諦めてさらに東へと進む。
ここからは、気になるお店に当てずっぽうで突撃する作戦へと切り替える。早速見つけたのは通りの向かって左側にある、かわいらしい外観のお菓子屋さん。お店の名を「洋菓子工房 ぷちまるき ろくえもん」と言うそうだ。そっと店内をのぞくと、美味しそうなケーキなどがショーケースに見える。一風変わった店名も含めてとても気になったが、「暖かい日にケーキを持ち歩いて大丈夫だろうか?」と心配になり、入るのを断念した。大丈夫、むにゃむにゃ通りはこの先も続いている。きっとどこかで持ち歩きに適したお土産にも巡り会えるはずだ。
お土産=甘いもの、という発想を転換した方が良いのではないか?と次に訪れたのは、向かって右手にある「SPARK COFEE ROASTERS(スパーク・コーヒー・ロースターズ)」。「おいしいコーヒーで、一日が輝く」というコンセプトを掲げ、近隣だけでなく国内外にファンを持つ、大人のための自家焙煎コーヒーショップである。店内でこだわりの一杯を味わえるほか、コーヒー豆、ドリップバッグなども販売しているので、まさに大人の手土産を選ぶにはふさわしい。
と、入店するまでは考えていたのだが、店内に漂うやさしい香りに「飲みたい!」という気持ちが先行してしまう。とりあえず、お土産は一休みしてからでも良かろう。数あるメニューの中で最も惹かれた「仙台みそキャラメルラテ(店内:650円)」を頂いた。
ふわりとやわらかな口当たりに続いて、味噌の風味がほわんと広がる。幸せだなぁ。味噌は近くの荒町商店街にある老舗の味噌醤油店のものを使用しているという。そのうち荒町も歩きたいなぁ。あ、編集長殿、今の650円は自分用だから「ノーカン」ですよね!
店を営む田中さん夫妻に取材の趣旨を伝え、写真撮影やお土産情報の収集にご協力いただきました。突然の訪問にも関わらず、快くお話を聞かせていただき、本当にありがとうございます!
次に訪れたのは、「鈴栄商店」。入り口の楽しげなディスプレイに惹かれた。地域の人に親しまれている八百屋さんである。
店主の鈴木秀明さんによると、お店は1925(昭和元)年の創業で、もうすぐ100年の節目を迎えるという。鈴木さんにお話を伺っていると、買い物に来ていた常連さんたちをお待たせしてしまっていた。残念ながらお土産ゲットとはならなかったが、街の歴史を見つめ続ける老舗を見つけることができた。
JR線の陸橋を越えて、さらに東へと進む。そろそろお土産を買う場所を見つけなければならない。お祭りの道具を扱うお店、異彩を放つイカ焼き店など、気になるところは数あれど、なかなか決めることができない。ついに地下鉄連坊駅の手前、3月に開通した都市計画道路との大きな交差点まで歩いてきてしまった。私の認識では、「むにゃむにゃ通り」とはこの辺までではないか、と思う。思っていた。
勘の鋭い読者の方なら、お気づきのことと思う。実は、「むにゃむにゃ通り」の終点はとっくに通り過ぎていた。商店街の境目は、先ほど越えてきたJR線の陸橋だった。そんなことも知らず、私は交差点の近くにあるお店に入って、社長さんにこう告げられたのである。「あー、うちは『むにゃむにゃ通り』じゃないんだよー」。がびーん。
※先述&サムネイルにあるイカ焼き屋さんも、むにゃむにゃ通りではなかったようだ。
すごすごとUターンして西へ進み、再びJR線の陸橋を越える。すぐ左手に、お菓子屋さんを見つけた。先ほど五橋側から歩いてきた時には、店内のショーケースにケーキが並んでいるのを見て、反射的に「あー、また持ち歩きできないか…」と思ってしまい、スルーしていた。が、反対の連坊駅側から歩いてくると、奥の商品棚にたくさんの「焼き菓子」が並んでいるのが見えたのである!おお!これなら暖かい日に持ち歩いても大丈夫なはずだし、日持ちもするだろう!
ワクワクしながらお邪魔した「ガトーオバラ」は、創業からもうすぐ70年を迎える老舗。3代目の小原康宏さんと、お母様の恵美さんが笑顔で出迎えてくれた。店内にはかわいらしいもの、懐かしさを感じるものなど、様々なお菓子が並んでおり、ますます心が弾んでくる。私は恵美さんに企画の趣旨を説明した勢いで、調子に乗ってお願いをしてみた。
「予算千円で、おすすめの詰め合わせを作ってくれませんか?」
「…え、…やってみましょう!笑」
「ありがとうございます!」
無茶ぶりクエストに挑戦しているのに、お店の方に無茶ぶりをしてしまうという、挑戦者あるまじき邪道に手を染めてしまったが、ともあれフィナーレが近づいてきたぞ!恵美さんは流れるように焼き菓子を選んでくださった。
「じゃあ、マドレーヌはどう?」
「いいですね!」
「リーフパイは?」
「いただきます!」
「クロカントって、知ってる?」
「分かりません…それも欲しいです!」
「クリームマロンはどう?」
「最高です!」
「ロシアケーキも」
「ください!」
「二華クッキーってあるのよ」
「おお!」
あれよあれよという間に、合計6点という充実のお買い物になった。これで千円くらいではないか?とのことだが、驚異的なコストパフォーマンスだ。あとは運命のお会計である。
- マドレーヌ(150円)
- リーフパイ(150円)
- クロカント(150円)
- クリームマロン(150円)
- ロシアケーキ ピーナツ(130円)
- ロシアケーキ レーズン(130円)
- 二華クッキー(130円)
…さあ、願いましては?電卓を叩いていた恵美さんが、微笑んだ。
「990円です!」
「おおおおっ!」
魔法も暗算も使っていないが、奇跡は起きる。千円札を差し出し、返ってきた10円玉1枚を握りしめると、心のなかで蓮の花がポンポンと開き、エアロスミスが絶唱した。そして、自分の中で何らかのステータスが上がる効果音が聞こえた。
ちょっと何を言っているか分からないと思うが、全く予想していなかったクライマックスである。予算いっぱいに収まっただけでなく、「お土産」としても最高の出来ではないか?これはもう、クエストは文句なしのクリアと言って差し支えないだろう。
編集長殿、次の無茶ぶりは何ですか?引き続き何卒宜しくお願い致します。「むにゃむにゃ通り」ならびに連坊の皆様、本当にありがとうございました!
むにゃむにゃ通り商店街では1,000円でこんなに素敵なおやつが買えるぞ
チュートリアル的にちょっと優しめの内容でしたが、かいさんはウラロジ仙台編集部からのミッションを見事クリアしてきてくれました。
ですが無茶ぶりクエストはここからが本番。少しずつ無茶ぶり度を上げたり上げなかったりしつつ、かいさんには今後も様々なミッションに挑戦していただく予定です。
まだまだ生真面目さが抜けきらないかいさんの語り口がどう変化していくのかにも要注目!次回の無茶ぶりをお楽しみに~!
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著者紹介
佐々木かい(ささき・かい)
フリーの聞き手・書き手。1990(平成2)年、仙台市生まれ。地方新聞社の記者、社会福祉法人の広報職などを経て現職。主に地元企業の人材採用や情報発信のお手伝いなどに面白さを感じています。【急募】仕事と同じくらい楽しいこと【服装自由】
執筆:佐々木かい
協力:むにゃむにゃ通り商店街ならびに連坊の皆様
編集:S