【仙台市太白区 秋保】秋保の杜 佐々木美術館&人形館10周年 記念インタビュー|佐々木正芳、佐々木克真

以前「人形館へ泊まろう」企画でお世話になった秋保の杜 佐々木美術館&人形館が、今年2023年で開館10周年を迎えました!

秋保の杜 佐々木美術館&人形館とは

2013年に開館した宮城県在住の画家・佐々木正芳氏の個人美術館。佐々木正芳氏による絵画・彫刻などの作品を展示している「美術館」と、人形作家による作品を中心に展示している「人形館」の2棟に分かれていて、建物としても面白いつくりになっているのが特徴です。

▼「人形館へ泊まろう」前編&後編

ウラロジ仙台編集部としても思い出深い場所である佐々木美術館&人形館が開館10周年の節目ということで、佐々木正芳先生と館長の佐々木克真さんからお話をお聞きしました!

▲佐々木克真さん(左)、佐々木正芳さん(右)

佐々木美術館&人形館 開館10周年を迎えて

──この度は佐々木美術館人形館開館10周年、おめでとうございます。今のお気持ちをお聞きかせ下さい。

正芳さん:もう10年になるか、よくやってこれたなぁ、と。10年の間に美術館は消えてしまうかもしれない。それってあり得るんですよ。

克真さん:とにかく必死で走り続けている10周年ですね。

やっぱり、黙っててもお客さんは来ないので、お客さんが来ないと存続の危機になってしまうんです。絶えず何か仕掛け続けていかなければお客さんは途絶えるので、ずっと必死で過ごしてきた10年でした。

今もアキウルミナの準備をしたり、もう来年のことを考えなきゃ、みたいな感じでずっと追われています。

■アキウルミナとは

「アキウルミナ-AKIULUMINA-」は秋保じゅうの光のインスタレーションスポットを周遊して楽しむイベントです。『「光のもり」をつくりたい!』という想いのもと、2020年より地域連携事業としてスタートしました。

「アキウルミナ-AKIULUMINA-」公式サイトより抜粋

https://www.akiulumina.jp/

克真さん:2023年3月1日から12月3日までの期間、10周年のリレー展示企画を行っていますが、これまでにないくらい重要な作家の皆さんに参加していただいてまして、中には国際的に活躍されてらっしゃる方もいます。

そういう人たちがみんなこの10周年のイベントに参加してくれたっていうのは、ようやく美術館&人形館での活動が認められたような気がして大変嬉しく思います。

佐々木正芳先生について

──正芳先生は何歳から絵を描かれていらっしゃったんですか。

正芳さん:絵を描き出したのは1945年。日本がポツダム宣言を受諾した年です。

──正芳先生は「物質主義への警鐘」や「政治の圧力への抵抗」をメッセージとして作品を描かれていましたね。

正芳さん:戦時中に世の中で言われていたこと、周囲が言っていたことが必ずしも正解ではなかった。だから疑いながら作品を描き続けるようになったんです。

  美術館の設立者でもある佐々木正芳は、昭和6年生まれ。少年期に戦争を体験し、信じ込まされていたものが崩れ去り、すべてを疑い、芸術活動だけを信じて作品作りにのめり込んでいきました。諷刺的な作品も多く、それらに込められたメッセージは40年近くたった作品においても全く色あせることなく、現代に当てはめることができます。物質主義への警鐘や政治の圧力への抵抗といったモチーフを、エアブラッシュでソリッドに描いた作品群は、怖い絵だと感じる人もいるようです。しかしその絵に出てくる人物たちは、どこか滑稽で憎めない要素を持っています。エアブラッシュを置き、絵筆に戻ってからの作品には諷刺の対象の人物ではなく、現代を見つめる人物が描かれることが多くなっています。やはり父である佐々木正芳は、人間が好きなのであろう。だから70年も人間を描き続けているのでしょう。

秋保の杜 佐々木美術館&人形館公式サイト「ようこそ秋保の杜 佐々木美術館&人形館へ」より抜粋

──克真さんのサイトでのコメントにて「エアブラッシュを置き、絵筆に戻ってからの作品には風刺の対象の人物ではなく、現代を見つめる人物が描かれることが多くなっています。」とありますが、絵筆に戻るきっかけはあったんでしょうか。

正芳さん:使ってるスプレーが体に良くないなと感じたのが大きいですね。防毒マスクしてやっていたけど、いつまでもやってるとろくなことないぞと思ってやめたんです。あとはエアブラシでの表現でやれることはみんなやりきったっていう感じがありましたしね。


▲エアブラッシュで制作された作品《黙劇No7 -予感-》

──私が先生を知るきっかけとなった作品は《ぬぎたい》でしたが、今日拝見した油画《手だてⅡ》も、今まで見てきた立体的で写実的なタッチから線画の力強いタッチになっていたことが非常に印象深かったです。今後の先生の作品も楽しみにしています。


《手だてⅡ》

──今後の佐々木美術館人形館の目標を教えて下さい。

正芳さん:やっぱり、秋保を文化の拠点としていくことでしょうね。ここは宮城県を代表する文化の拠点の一つだと自負しております。

克真さん:僕の目標は、スタッフを雇えるようになることです。今はほとんどのことを夫婦二人でやってるので、気の置けない分かち合える人を一人でも二人でも雇えるようになれたらいいですね。

──去年の「アキウルミナ」で行われた「夜の美術館」の様子を動画で拝見させていただいたんですが、性別や年代問わず、幅広い客層の方々が来ているという印象がありました。地域で根付いていくために、先程おっしゃていた「仕掛け」であったり、努力をされてきたんですか?

克真さん:そうですね。やっぱり美術館オープンして真っ先に「美術って全然認められてないんだな」って痛感したんです。

駐車場まで来たのに見ないで帰ったりする人とかもいて「何で見ていかないんだろう」と疑問だったんですが、恐らく多くの人が「美術を見て楽しむ」ってことが全然できないわけですよね。

正芳さん:絵の上手い下手っていうのはあるでしょ。でもね、一生懸命描いて悪いってものはないよ。子どもが描いた絵で悪い絵っていうのはない。

下手くそっていうのはあるけどね、それはちょっと不器用なだけで、そのうちみんな「自分の線」を引くようになるんだよ。力強い線であったり、本当に繊細な線であったりね。それぞれの線を引いてそれぞれ描いてみると、みんなその後に成りのいいものが全部出るの

あとは学校の先生ってね、絵が苦手な人が多いんだよ。その苦手意識が影響して上手く子供達に伝わっていかなかったのかもしれない。

克真さん:美術館を開いて一番危機感を感じたのは、正芳が言う様にやっぱり教育から変えないとダメなんだなっていうことです。

要は子どもたちに絵を好きになってもらわないと、我々が生き残れないかもしれないという危機感なんですよね。だから学校に絵を教えてくれって言われたら喜んでいくようにしてるし「夜の美術館」とか「子どもたちで牛を描こう」といった企画をやるのも、やっぱり地域の子どもたちがもうちょっと身近に絵に触れることができるようにしていければなっていうことから始めてるので。

絵が好きな子っていうのはうちの幼稚園(※)にいっぱいいて、そういう子たちは安心なんですけども、やっぱりほとんどの子は絵が苦手とか、絵心がなくて絵を描いたことがない子が「絵が苦手」とか言っちゃう。

※エコールノワール幼稚園

佐々木正芳と妻である故・佐々木あゆみが1961年に創設した幼稚園。当初は絵画教室としてスタートしたが、1968年に認可を受けてエコールノワール幼稚園となり、造形教育を中心に子どもの教育に取り組んでいる。現在は長男である佐々木 拓真が園長である。

http://ecolenoir.jp/idea/

正芳さん:要は「描く」という経験がなさすぎるんです。もう今の人はあんまり鉛筆持たなくなったでしょ。だから子どもも親が描いている姿なんて見ない。子どもっていうのは物を手で握ることができるようになったら、なんか棒切れで地面に描いたりするんです。手を動かすとどこにもその跡が残っていくんだからこんな面白いことないんだよね。

でも大人はそれを見て「ダメだ!」って止めさせちゃう。誰でも自由に絵は描けるし、好きなようにやればいいんじゃないかと思いますね。

──2023年も「アキウルミナ」が10月21日(土)~11月19日(日)、「AKIULUMINART(アキウルミナート)」が2023年11月18日 (水)〜12月24日(日)に開催されますね。今回の見どころを教えていただきたいです。

■AKIULUMINARTとは

秋保にある施設でアート作品を展示することでいつもとは違った雰囲気に彩り、楽しんでもらうアートイベント。昨年2022年はカフェやレストラン、ワイナリー等での展示が行われた。

https://www.akiulumina.jp/art.html

克真さん:「アキウルミナ」の方は今年は「夜の美術館」を7日間開催します。いろんなパフォーマンスとかコンテンツとかを楽しめられるように楽しんでいただけるようにしたいなと思っています。

「アキウルミナート」では、寺や神社の境内などに宮城県在住のアーティストが様々な作品を展示します。期間中は期間限定での巨大絵画の室内展示や、住職とコラボしてのライブペイントなども企画調整中です。

また、秋保町内の3つの小学校と中学校が力を合わせて、巨大なオブジェ制作に取り組みます。テーマは「未来の秋保 〜100年後の秋保に残したい〜」どんな作品ができるのかお楽しみに!

──最後に、美術に関心がある方ですとか、今創作をされている人たちへメッセージをお願いします。

正芳さん:先ほども言いましたが、誰でも自由にやって欲しい。誰しも必ず何らかのその人の特質みたいなものは持ってて、やってれば出てくるんだよね。

この人がこういうことをやったらもっといいんじゃないかとかいうようなことはだいたい思いつかない。逆に、今新しく絵を描こうとしている人とかって、やっぱりこっちが思いもよらないような新しいものを作り出したりしてくれるので、むしろそれを楽しみにしています。

克真さん:現在、日本では美術・アートは社会や教育において軽視されがちなのですが、美術やアートは生活に欠かせないものだと考えています。特に子どもの発育には、ものを見て捉える力が必要不可欠と考えますが、現代の日本人はかなり衰えています。

佐々木美術館ではアーティストの作品の発表の場を与えるとともに、アートが生活においてもっとスタンダードなものになるように、素晴らしい作品との出会いを増やしていけるようにしていきたいです。

取材を終えて

私自身は母や祖母が絵画などを好きだった影響もあり「美術を楽しむ」ということが自分の中では自然なことでしたが、今回お二人の話を伺い、美術教育の大切さを考えさせられました。今後美術、アート業界が続いていく為には、より多くの人々が美術に触れる機会が重要になってくるのではないでしょうか。

また、2023年の6月19日より、宮城県美術館が改修工事の為に休館となりました。それにより、宮城県内でわかりやすく大規模な展覧会を鑑賞する機会が2年以上なくなってしまうことになります。

ウラロジ仙台ではこれからも今回取材をさせて頂きました秋保の杜 佐々木美術館&人形館の様な魅力的な私設美術館やギャラリーを紹介していき、皆さんが宮城県で芸術を楽しむ日々が続くような発信を行なっていきます。

秋保の杜 佐々木美術館&人形館

仙台市太白区秋保町境野字中原128-9
TEL:022-797-9520
開館時間:10:00~17:00
(月曜休館・月曜日が祝日の場合は翌日)
※冬季間は予約営業です

公式サイト:http://akiunomori.jp/

取材・執筆:花