【インタビュー】ホワイトハッカー専攻ではどんな勉強をしているの?仙台デザイン&テクノロジー専門学校・在校生にきいてみた

 

昨年の2023年夏、花は激怒していた。

愛用していたWEBサービスがランサムウェアの被害により利用出来なくなってしまったからである。

「ランサムウェア」とは

パソコン上に保存されたデータを使用出来ないようロックし、解除する為の金銭等の対価を要求する身代金型の不正プログラム

サイバー犯罪をテーマにした漫画『王様達のヴァイキング』で概要を知っていたけど、まさか自分が利用するサービスが巻き込まれるとは……!!犯人が許せない…俺がホワイトハッカーになって成敗するしかねぇ…

「ホワイトハッカー」とは

サイバー攻撃を行うブラックハッカーと同等以上の能力を備えたセキュリティエンジニアのこと

そう意気込んで調べてみたものの、花は年齢的にも技量的にも難しそうと即座に判断。花は永遠の17歳な上、ゴリゴリの文系なのである。
宮城県警でサイバー捜査官になるには35歳までの年齢制限がある。

これは自分には無理そうだから、未来のホワイトハッカーに任せよう!調べた時に仙台の専門学校で「ホワイトハッカー専攻」コースがあるのを見かけたけど、一体どんな人が通ってるんだろう?

その疑問を調査するべく、今年の6月に仙台デザイン&テクノロジー専門学校の学園祭にお邪魔しつつ、ホワイトハッカー専攻に在籍中の2年生・Oさんと教務部長・和田さんへインタビューさせて頂きました!


▲校内を見学している時にサーバールームを発見!


▲ホワイトハッカー専攻の展示。ホワイトハッカーについての紹介がありました。

きっかけはYouTubeの動画

ー本日はよろしくお願いいたします!早速質問なのですが、Oさんがホワイトハッカーを目指すきっかけというのはありましたか?

▲2年生Oさん(ご本人の希望により顔、本名は非公開)。学園祭も実行委員として参加するなど活動的です!


▲教務部長・和田さん。Oさんと共にインタビューさせて頂きました。

Oさん:最初にホワイトハッカーの存在自体を知ったのがYouTubeで、ホワイトハッカーについて紹介する動画を視聴したのがきっかけです。そこから調べていくうちに、今の日本はITの流れに乗るのがすごく遅いと知りました。ホワイトハッカーセキュリティエンジニアの分野は、今の日本にとってとても需要があると考えたので、ホワイトハッカーを専攻に選びました。

ーYouTubeで知るというのは現代的ですね!具体的に今の進路にしようと決めたのは何歳ぐらいでしたか?

Oさん:高校2年生の頃です。ホワイトハッカーの存在を知ったのも高校ぐらいからでしたね。

授業について

ー実際に授業を受けてみての気付きや、新たな発見はありましたか。

Oさん:元々高校でプログラム経験があったわけでもなく、本当に初心者からのスタートでした。 入学当初はプログラムが英語でバーッて書いてあるのを見て「あ、なんだこれは。読めない」と思ったんですけど、 学んでいくうちに次第に読めてくるようになりますしし、意外と数学と英語が重要なんだなってのは分かりましたね。

ー現在Oさんは2年生ですが、どういう授業を受けてるのでしょうか。

Oさん:そうですね、1年生の頃は基礎的な言語を学びました。ウェブサイトを作るHTMLやC言語、Pythonなどです。
2年生からいよいよサイバーセキュリティ演習という本格的な授業が始まったって感じですかね。セキュリティの守り側から学ぶのではなく、サイバー攻撃の攻め側から学び、そこから相手の考え・思考を読み取って対処していく教え方だったので、実践も含めて結構わかりやすいです。

ー「攻め側から学ぶ」ですか。

和田さん:ある意味「軍師」と一緒なんですよね。「とりあえず城を固めるぞ」ではなく「相手はきっとこう攻めてくるから、こっち側にこういう防御を固めよう」「こういう風に布陣しよう」って考えるのがホワイトハッカーなんです。単に「どの方向から来るかわかんないから、もう全部固めよう」だと、やっぱりできる範囲って限られてくるので。


▲学園祭の展示でも具体的なことが書かれていました!

ー「軍師」と同じポジションって格好いいですね!ちなみに和田さんから見てOさんはどんな印象でしょうか。

和田さん:真面目ですね。真面目ですし、クラスの中の中心になって今回の学園祭なんかもちょっと積極的に参加していただいてるっていう。
ハッカーって一般的には1人でカタカタやってるイメージがあると思うんですけど、実際はチームや組織の中で動くこともあるんです。そういった意味では、本校ではスキルだけでなく、人と人とのコミュニケーションもしっかり学べるので、ホワイトハッカーを目指す上で強みになると思います。

ーコミュニケーション能力も必要なんですね。

和田さん:そうですね。もちろんプログラム技術も重要ですけども、やっぱりPC画面の向こうにいるのも人なので、その人がどういうこと考えてるのか知ることも大事なことです。
ホワイトハッカーは守らないといけないものがたくさんあるので、1人だけでやって「守れませんでした」という訳にはいかないじゃないですか。なのでチームで行動することはすごく必要になってきます。

気になっているサイバー犯罪について

ーここ最近サイバー犯罪に関するニュースを見聞きするとは思うんですが、お二人が特に気になってるニュースはありますか?

Oさん:生成AIでコンピューターウイルスを作った人が逮捕されたというニュースですね。

本来、生成AIはウイルスを作れない様に設計されているはずなんです。でも、それができてしまうセキュリティの浅さに気づきましたし、日本国内で起きた身近な犯罪ということで危機感を覚えました。
他にはDMM Bitcoinの暗号資産が不正流出した事件も気になりました。

過去にあった事例ですと、アメリカでは「マルウェア」っていう悪意のあるプログラムに感染して流出したケースもありますね。こういったことが起こるのはセキュリティの甘さや、従業員の意識不足といった原因もあるので、セキュリティ強化についてはまだまだ伸びしろがあると感じています。

和田さん:身近なところでいうと、SNS投資詐欺とかフィッシング詐欺ですね。こういう犯罪は誰でも被害に遭う可能性があるので、ビットコインの事件の様に遠い話ではなく、意外と身近なところに潜んでいることだと感じるところはあります。

ーOさんは学校卒業後は将来的に、ホワイトハッカーとして企業に就職を希望していたり、具体的な目標はありますか?

Oさん:そうですね。最初はセキュリティエンジニアとして企業に入って数年間学んだら、海外で働きたいなとか、自分で会社を立ち上げたいなとは思っています。
その為に今は、CEH(認定ホワイトハッカー)という資格の取得を目標に頑張れたらなと思ってます。

CEH(認定ホワイトハッカー)とは

Certified Ethical Hackerの略。EC-Council(セキュリティ専門知識を証明する国際資格)認定の国際的な情報セキュリティ資格

ー今回のインタビューでCEHという資格を初めて聞きました。どのくらい難しい資格なのでしょうか。

和田さん:CEH(認定ホワイトハッカー)はセキュリティの国際的な資格であるEC-Council認定資格の一つです。EC-Council認定資格の中にはCCT(認定サイバーセキュリティ技術者)、CND(認定ネットワークディフェンダー)などもありますが、CEHは更にその上位に位置付けられた資格となります。幅広い知識と理解が必要となり本校でも学年に合わせて資格を段階的に実践するカリキュラムを組んでいます。

未来の新入生へのメッセージ

ー和田さんにお聞きしたいのですが、入学希望者に対する試験はどういう形式なのでしょうか。

和田さん:本校は面接と作文ですね。特殊な仕事ですので「かっこいい」って思うだけで入ってしまうと後でイメージと現実のギャップでついていけなくなる可能性もあるため、面接と作文で入学希望者自身の認識を確認しています。入学希望者全員と面接を行いますし、必ず1度は体験授業に参加してもらっています。

ー面接と体験授業を行うことで、入学希望者の入学後のミスマッチを防ぐことができるんですね。最後にOさんと和田さんからホワイトハッカー専攻に学びに来たい、興味を抱いている未来の新入生へメッセージをお願い致します!

Oさん:一言でいうと「そうぬるくはないぞ」(笑)。自分も入学するまでプログラミングをやってなかった身だったからわかるんですけど、やっぱり難しい!覚える内容はすごく多いし、数学と英語嫌いだったら本当についていけないだろうなと思うぐらい。
でも、その分わかってくると楽しさもあるので、そこは諦めないで取り組んでほしいかなと思います。前提知識として英語と数学ができた方が全然いいと思いますけど、できることならプログラミングという環境に慣れておくのも1つの手かなとは思いますね。

ー在校生のコメントはリアリティがあるなあ……それでも、一歩踏み出したい若者に向けて、和田さんからもエールのコメントをお願いします!

和田さん:ニュースやドラマでもよく見かけるようになった、ホワイトハッカーや能動的サイバー防御、セキュリティエンジニアなどは私たちが普段使うすべてにおいて重要な仕事となります。
今、私たちが安心して様々な通信を使えるのも多くの方がセキュリティをしっかり整えているためであり非常に身近な存在です。どうしても最初は「むずかしそう」というイメージももたれますが、みんなはじめは初心者であり、できないことをできるようになるために学校も存在します。
経験者・未経験者かで考えるのではなく、誰かのためにという強い気持ちを持ってチャレンジしてくれたらと思います。

インタビューを終えて

実際にホワイトハッカーについて学ぶ方に貴重なお話を聞けて良かったです。
そして奇しくもインタビューを終えた数日後(2024年6月上旬)、KADOKAWAへのサーバーへサイバー攻撃が行われる事件が起きました。(2024年8月に無事復活)

気になっているサイバー犯罪について伺った時に「サイバー犯罪は意外と身近なところに潜んでいることだ」とおっしゃっていましたが、まさにそれを肌で感じ取り、改めてホワイトハッカーの存在の偉大さを実感しました。Oさんが今後ホワイトハッカー等のセキュリティの分野で活躍する日が待ち遠しいですね!

また、今回のインタビューを通じてサイバー犯罪へのリテラシーを高めたり、ホワイトハッカーという職業並びに「仙台デザイン&テクノロジー専門学校」ホワイトハッカー専攻に興味を持って頂けましたら幸いです。

ろじうさ
ろじうさ
下記のスケジュールでホワイトハッカーの体験授業が開催されるよ!興味を持ったら是非チェックしてみて!

ホワイトハッカーの体験授業

2024年10月13日(日)12時~16時30分
2024年10月27日(日)12時~16時30分
2024年11月9日(土)12時~16時30分

仙台デザイン&テクノロジー専門学校情報

■ホームページ
https://www.sca.ac.jp/

■ホワイトハッカー専攻紹介ページ
https://www.sca.ac.jp/course/white_hacker.html

■アクセス
〒983-0852 仙台市宮城野区榴岡4丁目12-10
JR「仙台駅」東出口より徒歩7分

取材日:2024年6月8日
取材・執筆:花