こんにちは。暑さ対策の名目でカリカリ梅が止まらない佐々木かいです。いきなりですが、「ジオラマ」(特定の場面を再現する立体模型)っていいですよね!限られた空間に思い思いの世界や物語を表現することに、ロマンを感じます。
東北工業大学不破研究室の学生は2025年春、仙台の南の副都心として発展する太白区の長町地区をとてもリアルに再現した建築模型を完成させました。一般向けには5月31日のイベントでお披露目。太白区民として、ジオラマ好きとしても見逃すわけには行きません!子どもの頃は鉄道模型に憧れ、カタログを穴が空くほど読み返したものです。ワクワクしながら会場に向かいました!

当日は雨模様でした。遠くで雷もゴロゴロ……
雨ニモ負ケズ大盛況!
模型が展示されたのは、長町駅前プラザで開かれたイベント「長町まちづくり広場」(太白区役所長町地域活性化推進室主催)です。完成した模型を見ながら、長町についてゆるく語り合おうというもの。当日は強い雨の降るあいにくの天気でしたが、たくさんの人が詰めかけていました。遠方からも含め、30人以上は来ていたでしょうか。
私が会場に着いたのはイベント開始の20分ほど前。入口では高齢の女性がお二人、すでに満杯の傘立てにやっと傘を収め「これはもう一つ(傘立てが)要るねえ」と苦笑いしています。私も傘をたたみながら「やれやれ、ですねえ」と会話に加わり、「地元から来られたんですか?」と尋ねると、「長町にお嫁に来てから、もう60年になるのよ」とサラリ。大先輩、これは大変失礼いたしました!
長町を200分の1で完全再現!
会場には、お目当ての模型がすでに展示されていました。早速、じっくりと見てみましょう!

JR長町駅西口から長町一丁目駅の方向(北側)を望む
模型は仙台市が東北工業大学との包括連携協定に基づき制作を依頼したもの。大きさは縦5.5m、横1.8mあり、広瀬橋交差点付近から長町駅西口付近まで、南北約1kmほど続く街並みを200分の1スケールで再現しています。

広瀬橋交差点付近から南側を見たところ。風景に見覚えのある方も多いのでは?

実際の風景はこんな感じ。
驚くべきは、再現度の高さです。とにかく細かい!
学生の皆さんによると、制作期間は約6ヶ月。再現した建物は、マンションなどの大きな建物が50棟、商店や戸建て住宅などの小さな建物が85棟に上ります。マンションなどは1棟ずつ撮影し、外観や高さ、色を検討した後、3Dモデリングソフトでデータを作成し、カットしたパーツに一つ一つ着色、組み立てていったとのこと。一つの建物を制作するだけで4〜5日を要することもあったそうです。
その他に電柱や信号機、街路樹、ガードレールや配電盤、さらに歩道のタイルまで、実際に歩いて調査した街並みを基に、長町を構成するあらゆる要素を徹底的に再現しています。
……想像を絶するような、とんでもなく根気の要る作業ですね。

模型作りを指導した不破正仁准教授
不破准教授「道沿いの模型をよく見ると、どれも細長い形をしています。新しい建物であっても、江戸時代までに作られた短冊状の敷地を受け継いでいることがわかりますよ。駅も複数あるので、歩いて楽しめる資源に恵まれた街です」

確かに!細長い奥行きのある建物が並んでいますね。

模型制作のリーダーを務めた千葉洸暉(ひろあき)さん(大学院1年)
千葉さん「なかなか思うように行かず苦労しましたが、とにかくリアリティを追求して頑張ってきました。20人くらいの仲間と一緒に作り上げたので、こうして形になり、とても嬉しいです!」
先輩方に聞く長町の魅力とこれから
来場者の皆さんも、それぞれ感心して模型を見つめています。

お店の辺りを指差す赤井澤さん
中でも、JR長町駅の辺りを熱心に見つめていたのは、傘立てでお会いした「大先輩」の一人、赤井澤孝子さん(86)です。赤井澤さんが嫁いだのは、大正時代に創業した老舗の紙屋で、現在は文房具やオフィス用品などを販売する㈱赤井沢。今も長町駅の向かい側に本店があり、太白区の方には赤と黒を基調とした看板でおなじみかもしれません。そう言えば、お召し物の色も同じだ!
赤井澤さんが結婚を機に長町に越してきたのは、約60年前。当時は市場や商店街にたくさんの人が訪れ、活気に満ちていたそうです。
赤井澤さん「私は郊外の出身だから、長町の市場によく買い物に来ていてね。まさか、そんなにぎやかな街の真ん中に住むことになるとは思わなくて、嬉しかったのよ」。
ー学生さんが作った模型を見て、いかがですか?
赤井澤さん「あらためて、長町はいいところだなって。街並みは変わったけれど、今も人情があって、本当にいいところよ」

赤井澤さん(右)と平澤さん(左)
赤井澤さんと一緒に訪れていたのは、長年のお友達だという平澤とき子さん(83)。平澤さんのお宅は、こちらも長町きっての老舗である瓦屋さんです。
平澤さん「模型で見ると、街並みが変わったことを実感するね。これから若い人たちの時代にはどうなっていくのか、楽しみだよ」
ー長町のまちづくりにリクエストはありますか?
平澤さん「昔からある文化も大事にしてほしいね。十八夜観音堂(長町一丁目)なんて、すっかりビルに囲まれちゃって。参道を少しでも作ってくれたらね」→十八夜観音堂をお参りした記事はこちら
長年暮らしている方も大絶賛の建築模型。文句なしの力作ですが、今後どのように活用されていくのでしょうか。まちづくりのために作られたのはわかるのですが……。

加藤隆さん
その辺りについて、長町でさまざまなイベントやつながり作りの「仕掛け人」として活躍する、一般社団法人ながまちマチキチの代表理事、加藤隆さんに聞いてみました。
ー模型ができたことで、どんなことを期待していますか?
加藤さん「街について、同じものを見ながら話し合えるようになるのは大きいと思いますよ。長町のイメージは住んでいる人同士でもみんな違うので、模型を通じて認識を揃えることができれば、まちづくりの議論がより前に進むはず!」
本物の長町散策もぜひ!
長町では今、「歩いて楽しい街並みづくり」をテーマに、より魅力的なエリアにしようという取り組みが進行中です。また、模型が作られた後も新たなマンションの建設計画が明らかになるなど、長町の風景はどんどん変化しています。模型は変わり続ける街の「今」という瞬間を切り取った資料としても貴重なものになっていくのでしょうね。
仙台の街と言えば、どうしても仙台駅前や一番町などを連想するかもしれません。でも、実際に歩いてみるとお分かりいただけると思うのですが、長町も本当に面白い街です。マンションの谷間に個性的なお店や味のある風景をいくつも見つけられると思います。全国の他の都市でも、琴似(札幌市)や六本松、西新(福岡市)のように、都心部から少し離れたところにある街が最近人気を集めているとのこと。長町もトレンドに乗れるはずです!長町頑張れ!
読者の皆さんもぜひ街歩きを楽しんでみてくださいね。グッと来る発見があったら、#ウラロジ路上観察で投稿を!
取材日:2025年5月31日
取材・執筆:佐々木かい
協力:太白区役所長町地域活性化推進室、東北工業大学不破正仁研究室