【猫神様、クソデカたけのこ】ゲームアプリ『ぷにっとまるもり』開発者に宮城県・丸森町の奇妙な話とか聞いてきた【ポストの刃】

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丸森町から可愛いパズルゲームが登場

ウラロジ仙台編集部・恐山Rです。今週はスマホゲー好きにうってつけのニュースをお知らせです。

2022年4月29日(金)、丸森町の移住定住促進団体「まるもりんく」がスマートフォン向けパズルゲームアプリ『ぷにっとまるもり』をリリースしました。

丸森をテーマにした落ちものパズルゲーム。同じ絵柄のボールを指でなぞって繋いでみよう!たくさん繋いで高得点を目指そう!ボールの絵柄は「丸」「森」「斎理屋敷」「ねこの肉球」「たけのこ」の5種類。AppStoreよりダウンロード可能

今回は、「まるもりんく」 でデザイン面やディレクションなどを担当する浅野瑞穂さん(通称・みーさん)とエンジニアの橋本沙耶花さん(通称・うぱさん)に『ぷにっとまるもり』開発秘話を始め、丸森町のちょっと…いや、ちょっとどころかだいぶ変わっていて、「流石、丸森…ッ!(さすもり)」なエピソードなどをお聞きしてきました。

▲「まるもりんく」のみーさん(左)とうぱさん(右)

『ぷにっとまるもり』はいわゆる「落ちゲー」で、スマートフォンの画面上で表示されるアイテムを指でなぞって 消し、そのスコア得点を競うものです。丸森町に所縁のある「たけのこ」「齋理屋敷」「肉球(猫神様)」などがアイテムとして登場します。

▲丸森町は猫を大切にする「猫神信仰」が強い町です。宮城県で猫神様が祀られている石碑のうち72%、全国にある石碑のうち52%が丸森町にあります。

▲2022年4月22日〜24日には丸森町八雄館イベントホールで「いっさいがっさい猫だらけグッズ即売会in丸森」も開催。猫ちゃんにまつわる雑貨がずらりと並んでいました(写真は「アトリエ月まる」さんによる丁寧な手描きアクセサリー!)。

「作りたかったから生まれた」パズルゲーム

ーどういった経緯で、『ぷにっとまるもり』は生まれたんでしょうか。

うぱさん:互いに丸森町の「地域おこし協力隊」なのですが、みーさんと話している時に「こういうアプリゲームの制作をやってみたいなあ」という話題になって「あ、私アプリとか制作できるよ」って。お互いに協力して実現できそうだ、ということで制作の話が進みました。

みーさん:自分はデザインはそれなりにできるけれど、Webやシステム関係に関してはお客さんに訊ねられても専門的なことはお答えできないし、うぱさんはillustrator(グラフィックソフト)の操作が不慣れだったので、お互いの得意分野を補い合いながら、まちに関わる活動をしていけたらと思って。それで今後活動を一緒にやっていくにあたって「まるもりんく」と名乗り、活動を始めました。

ーということは、活動開始当初から『ぷにっとまるもり』の構想があったんですか。

うぱさん:いえ、元々は違うゲームを作っていたんです。丸森では養蚕がさかんなので、猫を操作して迫り来るネズミから蚕を守るタワーディフェンス系のゲームだったんですが、うまくまとまらず、だんだん情熱が冷めてしまってボツに…(笑)。そのうち、いわゆる落ちゲー(パズルゲーム)を作りたくなって、その方向で勝手に制作を始めた感じです。『ぷにっとまるもり』は誰に頼まれたわけでもなく、作りたくて作ったんです。


▲ボツとなった蚕を守るゲームの開発途中画面。こちらもシュールで面白そうなのですが…。

ーアプリの見どころや楽しみ方を教えてください。

みーさん:丸森町役場や丸森町の地域おこし協力隊の仲間、「まるもりんく」公式LINEをフォローしてくれている方に開発中のゲームをテストプレーしてもらい、感想や意見を貰いながら制作に臨みました。貰った意見をもとに、ハイスコアの記録や制限時間がギリギリになるとカウント表示に色がついたり、警告音が鳴ったりするよう工夫しました。

うぱさん:基本は「5歳くらいの子どもがプレーできるかどうか」というのを大切にしました。親が目を離していても子どもが勝手に遊べるイメージで、分かりにくい言葉や凝ったシステム、余計な広告が無いように工夫しましたね。あと、ゲーム中に登場する齋理屋敷に気づいてもらえるかがポイントかなと(笑)

▲江戸時代後期〜昭和初期にかけ栄えた豪商・齋藤理助(通称・齋理)の屋敷やコレクション品を展示している「齋理屋敷」。

▲エッジの効いたエピソードや展示物が充実していて、なかなか尖っています。薬研、お隣の薬局に返してあげて。


▲黒いボールが齋理屋敷イメージとのこと。

みーさん:普段は紙媒体やWebページのデザインを担当することが多く、これまでゲームアプリ制作に取り組んだ経験がなかったため、ボタンの配置や画面の見やすさなど、他のゲームなんかも参考にしながら手探りで取り組みました。

ートップ画面のポストのキャラクターも気になりましたが。

みーさん:「ひっぽすとさん」ですね!私たちは丸森町の筆甫(ひっぽ)地区に拠点を構えていて。そこって、元々まちの交流拠点になるような商店だったんです。ひっぽすとさんは、その敷地内にある定型内の郵便物しか入らないレトロなポストをモデルに制作したキャラクターで、昔から地域で馴染みのあるポストを新たにキャラクターにして、アプリやホームページなどありとあらゆるところに登場させています。

▲こちらがひっぽすとさんのモデルになったポスト。面構えが違うぜ。

うぱさん:筆甫ってスーパーマーケットやコンビニもないので、そのポストと自販機がすごく目立つんですよ。筆甫に入ってきた時、大体最初に目につくのがポストと自販機。

みーさん:商店にある自販機って普通、閉店したらそのタイミングで撤去されるじゃないですか。でも、『夜は暗いし人口も少なくなってきている地域だから、ちょっとした灯りになれば』という家主さんの意向のもと、残しているみたいです。

インフラ整備もDIY精神 パワフルすぎる地域「筆甫」

ー筆甫地区は2022年3月時点で人口479人/233世帯とのことですが、少数精鋭の地域なんですね。

うぱさん:地域独自の電力会社ありますし。

ー地域独自の…電力会社…?

みーさん:筆甫には「ひっぽ電力株式会社」があります。地域内でエネルギー・電力が循環する仕組みです。例えば、大きな地震があって他の地域が停電になっても筆甫は「丸森町 筆甫まちづくりセンター」を中心に非常電源がつくようになっているので電気が点くんですよ。上水道が通ってないエリアも、井戸水を活用して頑張っています。

うぱさん:元々、昔から『自給自足で生きよう』みたいな雰囲気がある地区みたいで。

みーさん:丸森町にある8地区の中でそういう気持ちが一番強い地区なんだと思います。

ーDIY精神が強すぎるのよ。

みーさん:あと、筆甫の奥地に地域おこし協力隊の仲間がオープンしたゲストハウス「まるもりホステルができたので、ぜひ来てみてください!古民家を改修したゲストハウスで、多分泊まったら現地の住民が何人か来てくれるはずですし、最終的には10人くらいで夕食を食べることになるんじゃないかな、親戚感覚で(笑)。結構頻繁に泊まりにきてくれる方は多いみたいです。

うぱさん:福島県相馬市の方も面白がって頻繁に来てくれているそうですよ(笑)。相馬市、近いので。

みーさん:筆甫には県内外問わず、コアなファンが多いんです。丸森町 筆甫まちづくりセンターがイベントの広報をしたら、定員がすぐ埋まるほどです。定期的に筆甫に来てくれているサイクルチームやクライマーの方たちがいらっしゃるんですが、地域の一斉清掃(筆甫クリーンアップ大作戦)にも参加してくれますし。

ー地域清掃って町内会などから清掃日のお知らせが来て、地域の人たちが掃除するイメージなんですが…。「筆甫クリーンアップ大作戦」というイベント感覚だと地域外の方も参加しやすいものなんですね。

みーさん:そうなんですよ。筆甫地区は高齢者も多くて…そうなると、地域の中の細かなエリアごとの清掃って難しいじゃないですか。地域の一斉清掃にすることで、余裕のあるエリアの人たちが手が足りないエリアへサポートに行けるんですよ。

ポストに草刈り機の替え刃!?事件

うぱさん:そういえば筆甫では無いですが、他の地区では清掃日のお知らせと一緒にポストに草刈り機の刃が刺さっていたこともありましたねえ。替え刃いただけるのはありがたいけど、草刈り機持ってる前提かよ〜!って(笑)。

ー流石丸森町、さすもり。

流石丸森エピソード、いろいろ

ー掘れば掘るほど「流石丸森」なエピソードが出てくるのですが、他にも印象的だったことなどありますか。

うぱさん:阿武隈急行線・丸森駅の案内板の電気が、日中は点いてるのに夜消えるとか、そういうのでいいんですか。

みーさん:丸森町役場のロビーに真っ赤なパンツが飾られています。特産品とのことで、こういった光景も丸森町ならではなのかなと。

うぱさん:あとは角田市から丸森町へ入ってくるときに渡る「丸森大橋」という大きな橋があるんですが、日本に5つしかない貴重な構造の橋らしいですね。

解説「丸森大橋」
丸森大橋は、2012年に丸森橋の下流に開通。「トラス橋」でありながら「アーチ橋」でもある、日本国内で 5 例目の特殊な形状を持っています。

 

ー待って、情報量多すぎる。

 

▲こちらは恐山Rの何気ないツイートに引用RTでいただいた情報。丸森町、宮城県内でも意外な話題多すぎ。

うぱさん:あとはそうですね。丸森町に住み始めたばかりの頃にびっくりしたのが、タクシーが20時でおしまいになってたことでしたね。タクシーって、終電の時間以降に活躍するのに!(笑)

ーうっかり遅い時間になっちゃった時こそ、タクシー使うのに!(笑)

みーさん:町の中心部の丸森町役場の前の信号も20時くらいになると点滅しますし、地区によっては信号機が全くない地域もあります(笑)。普通、長距離移動する時は信号待ちの時間などを踏まえて移動時間を考えるじゃないですか。でも、普段信号に引っかかる機会が少なすぎて仙台市内に行く時なんかも「思ったより時間かかるなあ」と感じちゃうんですよね。

ー丸森町もそうなんですが、仙台市以外の郊外地域を周ってみると「やべえな」って思うこと多いんですよね。仙台には無いものがたくさんあって。

みーさん:県北出身ですが、県南は予想できないことばっかりですね…。

うぱさん:自家用車が消防車だったりとか…住み始めた時は驚くんですけど、住んでいるうちにそういうことにも慣れて、思考がバグっちゃうんですよ。それが当たり前になるから。

ー現地に住んでいる人ならではのお話が聞けて面白かったです。では、今後の「まるもりんく」の展開についてお聞きしたいです。

みーさん:実は『ぷにっとまるもり』に次ぐ第二弾のアプリを開発予定で、できれば2022年のうちにリリースしたいです。「まるもりんく」としては来年春に法人化を目指しています。新しいものを作るにはまず昔のものを知って保存して、何らかの形で展開することが大切だと思っているので、人口が少なくなってきているこのまちで、丸森町のことを残していく手段の一つかなと思います。

アプリ制作以外の面でいうと、資料保存に力を入れたいなと思っています。現在は事務所を構えるときに空き家(元・商店)から出てきた資料をアーカイブ化する動きの準備中です。動画や観光名所案内などを通して、「丸森町のいま」を保存する動きができたらと思うんです。

うぱさん:ねえ、お話してる時に突然申し訳ないんだけど…今ドア叩いて訪ねてきた人からたけのこ貰っちゃった…

みーさん:でっか。

ーデカ過ぎんだろ…。突然クソデカたけのこが手に入った。なんで?

うぱさん:取材中でも、デカいたけのこが手に入る。そういうまちなんですよ、丸森町は。

今回はリリースしたゲームアプリの制作秘話に加え、丸森町の奇妙な話もお聞きできて、大満足!丸森町未体験の皆さんこそ、ぜひ流石丸森(さすもり)な丸森町へ足を運んでいただきたいです。

そして、iOS使いの方はぷにっとまるもり遊んでみてくださいね!

取材・執筆:恐山R
写真提供:@O_ZI3
インタビュイー:まるもりんく(公式HP