チャレンジクリエイター名鑑No.2でご紹介した、フリーライター・佐々木かいさん。
真面目でお硬いイメージを払拭し、苦手としている主観的な発信に挑戦していきたい……!というかいさんのやっぱりどこか真面目な思いを受けまして、ウラロジ仙台では、かいさんへの無茶ぶり企画「無茶ぶりクエスト」の連載をスタートすることになりました。
前回は太白区と若林区の過酷な巡礼ルートを苦しみながらも踏破し、33箇所中8箇所をクリアしましたが、今回はどんな道のりをたどることになるのでしょうか。仙台三十三観音残り25箇所を巡る旅、スタートです!
かつて東北の中心地だったという薬師堂エリアへ
25番札所 陸奥国分寺
古代東北の要の母なる御堂

今回も、仙台三十三観音を逆打ちで巡っていきます。前回はかなり無理のある行程で名取川沿いにある札所を巡りました。結構巡れたと思っていたのですが、まだ4分の1くらいなのですね。いやはや。今回はいくつ巡れるでしょうか?最低5か所くらいは巡りたいところ。
25番札所は、陸奥国分寺です。お寺の名前にピンとこなくても、地下鉄東西線の「薬師堂」という駅名をご存知の方も多いのではないでしょうか。若林区役所の最寄り駅で、区内各地へのバスも数多く発着しています。
地域の拠点となっている現代の薬師堂エリアですが、実は地下鉄の開業する遥か昔のそのまた昔の1000年以上前には、若林区どころか東北地方の中心的な場所だった歴史があります。

薬師堂駅からJRの貨物線をくぐると、右手に陸奥国分寺の境内が広がります。通り沿いで目を引く建物は、参拝前に陸奥国分寺の歴史を学習することができるガイダンス施設です。
陸奥国分寺は、仙台市内に現存する中では最も古い歴史を持つ寺院と言われています。今から1300年近く前の奈良時代、聖武天皇の詔(みことのり=命令のようなニュアンス)によって全国に建立された「金光明四天王護國之寺(いわゆる国分寺)のうち、最も北に置かれたものです。
発掘調査で、建立直後は金堂・講堂・七重塔などを擁する大きな寺院だったことが分かっています。しかし、世が平安時代から鎌倉時代へと移り変わる1189年、戦火で焼失し、衰退の道をたどることになりました。

その後、室町時代に再建され、さらに1607年、伊達氏によって建てられたのが「薬師堂」です。桃山時代様式の単層入母屋造り、本瓦葺の建物で、国の重要文化財に指定されています。堂内には薬師如来像などが安置されているそうです。
江戸時代以降は薬師堂が陸奥国分寺の中心的な建物となり、地域の人々からも「お薬師さん」と呼ばれて親しまれるようになりました。現在は毎月8日に「お薬師さんの手づくり市」が開かれ、たくさんの人でにぎわいます。


表情豊かな狛犬も鎮座しています。何となく境内をぶらぶら散歩しているだけでも十分に楽しいです。

薬師堂に向かって左手に、小ぶりながら鮮やかな朱色に塗られた「准胝(じゅんでい)観音堂」を見つけました。

朱色が本当に目を引きますね。
「准胝観音」とは、仏教で無数の仏を生み出す母のような存在だと言います。仙台六代藩主の伊達宗村が、母の遺志を継ぐ形でお堂を建てたそうです。なお、観音像は別の場所に祀られています。

薬師堂の隣にある授与所で、准胝観音堂の御朱印をいただくことができました。御朱印をいただく時は、必ず参拝後にお願いしましょう!
余談
今回は薬師堂(と同じ境内にある准胝観音堂)を訪れましたが、岩手県に本社を置き、東北地方などに400店舗以上を展開するドラッグストアと言えば、薬師堂ではなく「薬王堂」です。もしこの辺りに出店したら「薬王堂仙台薬師堂店」になるのでしょうか?紛らわしい!
……と思っていたら、秋田県由利本荘市にはすでに「薬王堂由利本荘薬師堂店」が存在するようです。冗談のつもりが、現実に先を越されていました。薬王堂さん、さては狙いましたね?
近くには、同じ名前の駅(由利高原鉄道鳥海山ろく線の薬師堂駅)もあります。仙台の薬師堂駅ユーザーの皆さんはぜひ、各地にある薬王堂、もとい薬師堂を巡礼してみてくださいね。
24番札所 国分尼寺
巡礼完結!?あらゆる観音を巡れる境内
25番札所から歩いて5分ほどの白萩町には、24番札所の国分尼寺もあります。一緒に巡っていきましょう。

ちょうど貨物線を珍しい列車が通っていきましたが、先へ進みます。

途中にあるローカルなお店も気になりますが、先へ進みます。
国分尼寺は、国分寺と同時期に聖武天皇の詔によって全国各地に建てられました。国分寺の「奥の院」として位置づけられたと言われています。

訪れたのは3月。境内には梅の花が可憐に咲いていました。

威厳を感じる本堂です。お庭も見応えがあります。
まずは本堂を参拝し、境内を歩いて観音堂を探してみたのですが、それらしきものは見当たりません。御朱印をいただくのも兼ねて寺務所で尋ねると、本尊の聖観音菩薩は本堂の奥に祀られているとのこと。独立した観音堂は無いのですね。そして、「墓地にある三十三観音にもお参りしてくださいね」と。
え!?ここだけで三十三観音を巡礼できるんですか!?
まさか10か所目にして、シリーズは突然のフィナーレを迎える……のでしょうか?

墓地に出向くと、確かにありました。
通路の両側に三十三の観音が解説付きで祀られています。墓地なので広角での撮影を遠慮し、全貌をお伝えできないのが残念ですが、ごく短い距離で三十三観音にお参りすることが可能です。前回の苦行(自業自得)は何だったのでしょう……これにてシリーズは完結!めでたしめでたし!
……とはなりませんよね。分かっています。

「巡礼、楽しんでくださいね」という優しい励ましとともに、御朱印をいただきました。
今回は陸奥国分寺、国分尼寺という、仙台市内でも有数の歴史を誇る2つの寺院を巡りました。仙台出身ながら、どちらもじっくりお参りするのは初めて。ご紹介したスポット以外も見どころがとても多く、心穏やかに散策することができました。読者の皆さんも、古代からの時の流れに思いを馳せながら、訪れてみてはいかがでしょうか。
あれ?
2か所しか巡れていないぞ???
33番札所からスタートして、今が24番だから……残りは23か所!?
序章を含めれば3本も連載しておいて、3分の1も巡れていないのは由々しき事態です。途中で薬王堂だの撮り鉄だのふざけているからこんなことに!
クエストは長期戦必至の様相です。明日はどっちだ!?
ちっとも進まない巡礼の旅


地元の観音堂から調子よくスタートした仙台三十三観音逆打ち巡礼の旅。
ルート取りに多少のトラブルがあったにせよ、初回から8箇所も巡れて幸先良し……と思いきや、ここにきて突然歩みがゆっくりになってしまいました。
一箇所一箇所丁寧に描写していただいてもいいのですが、このままでは地元癒着型Webメディアというよりも観音堂癒着型Webメディアになりかねないため、今後は少々駆け足で各観音堂を紹介していただけるようかいさんと協議を重ねております。薬王堂だの電車だのといった余談はカットされたりされなかったりするかもしれませんが、何卒ご了承ください。詳しい話が聞きたい方はかいさんに直で連絡してみてね!
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著者紹介

佐々木かい(ささき・かい)
フリーの聞き手・書き手。1990(平成2)年、仙台市生まれ。地方新聞社の記者、社会福祉法人の広報職などを経て現職。主に地元企業の人材採用や情報発信のお手伝いなどに面白さを感じています。【急募】仕事と同じくらい楽しいこと【服装自由】
執筆:佐々木かい
編集:S