堅物記者の無茶ぶりクエスト #8-6 【仙台三十三観音逆打ち巡礼 街中蝉しぐれ編】

おでかけ部

チャレンジクリエイター名鑑No.2でご紹介した、フリーライター・佐々木かいさん。

真面目でお硬いイメージを払拭し、苦手としている主観的な発信に挑戦していきたい……!というかいさんのやっぱりどこか真面目な思いを受けまして、ウラロジ仙台では、かいさんへの無茶ぶり企画「無茶ぶりクエスト」の連載をスタートすることになりました。

無茶ぶりクエストとは
ウラロジ仙台編集部から課された若干無茶なお題・ミッションのクリアを目指し、その過程をコラムにして提出していただくという連載企画。佐々木かいさんの「苦手分野にも挑戦していきたい」という心意気を応援するものであって、決して彼が突然の無茶ぶりに右往左往する様を見て楽しみたいとかそういうことではありません。

前回の記事更新から2ヶ月、巡りたてほやほやの巡礼レポがかいさんから寄せられました。

前は半年空いたと思うと、身内の贔屓目を抜きにしても結構いい調子なんじゃないでしょうか。この無茶ぶりを思い付いたときにはここまでの長期クエストになるとは予想できていませんでしたが、かいさんが頑張ってくれて嬉しいです。自分だったら絶対にやらないことだし。鬼?

逆打ち巡礼の旅・第6弾、ぜひお楽しみください。


 

いつ終わるのやらと言われてから随分と経ちますが、今回もめげずに巡礼の旅を続けていきたいと思います。残すところ、あと11か所ですからね!3分の1ですよ!!

第1番 法楽院観音堂 青葉区川内亀岡町
第2番 観瀧庵観音堂 青葉区新坂町
第3番 資福寺観音堂 青葉区北山1丁目
第4番 永昌寺 青葉区新坂町
第5番 昌繁寺観音堂 青葉区新坂町
第6番 荘厳寺観音堂 青葉区新坂町
第7番 大願寺観音堂 青葉区新坂町
第8番 宝光院観音堂 青葉区本町1丁目
第9番 満願寺観音堂 青葉区本町1丁目
第10番 善入院観音堂 宮城野区原町1丁目
第11番 仙岳院 青葉区東照宮1丁目

※「仙台三十三観音」成立当時の寺院が廃寺となり、現在は別の寺に祀られています。

11番 仙岳院 2つの世界遺産を結ぶ仙台の「筆頭」寺院

仙山線で仙台から1駅目

今回の巡礼はJR仙山線の東照宮駅からスタート。その名の通り、二代藩主伊達忠宗が1654(承応3)年に創建し、江戸幕府を開いた徳川家康を祀っている「仙台東照宮」の最寄り駅です。

駅から公園の脇を東照宮の鳥居に向かって進み、宮町通りの踏切を渡ったところに11番札所「仙岳院」はあります。

夏空に映える厳かな山門

仙岳院は、仙台東照宮の「別当寺」として創建された天台宗の寺院です。別当寺とは、神仏習合が一般的だった江戸時代、神社を管理するために置かれたお寺を指します。仙岳院は、東照宮の祭祀料として与えられた知行地などの管理……つまり莫大な費用のお金の管理も担っていたようです。

仙台には由緒正しき寺院が数多くありますが、仙岳院は「仙台藩一門格筆頭寺院」に位置づけられ、歴代住職は平泉・中尊寺の別当*を兼任していました。

※別当=最高責任者のようなもの。厳密には寺務を統轄する役職。

こうして見ると、重厚な山門や板塀からも格式の高さを感じさせますね。

境内に入ると市街地との境目が意外とオープン

本堂は、山門から奥に進んで右に90度曲がったところにあり、少々変わった配置のように感じました。本尊は釈迦三尊(釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩)で、本尊は釈迦三尊(釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩)で、あわせて東照宮の本地仏とされた薬師如来、その脇侍である日光・月光両菩薩、薬師十二神将も祀られているそうです。

本地仏……また馴染みの無い言葉が出てきましたね。本地仏とはシンプルに言うならば「神と対応する仏」

厳密にいえば神仏習合のもとで、それぞれの神の本来の姿と考えられた仏・菩薩のことだそうです。平安時代に広がった「本地垂迹説(ほんちすいじゃくせつ)」では、仏や菩薩が日本の人々を救うため、神の姿を借りて現れたと考えられていました。

徳川家康は死後、「東照大権現」として神に祀られ、その本来の姿に当たる本地仏は薬師如来とされました。仙岳院に薬師如来と日光・月光両菩薩、薬師十二神将が祀られているのも、こうした東照宮信仰と神仏習合の名残なのですね。

紫陽花の色は土壌の成分によって変わるんでしたっけ

巡礼したのは紫陽花の季節で、欧米からの観光客と思しき女性がニコニコしながら写真を撮っていました。

さて、観音堂にお参りしましょう。

祀られている十一面観世音菩薩は「小萩(こはぎ)観音」と呼ばれているそうです。

小萩観音の歴史は仙岳院よりも古く、1189(文治5)年の源頼朝による平泉征討にまで遡ります。平泉を拠点に繁栄を極めていた奥州藤原氏が滅亡に追いやられた、東北の歴史を語る上で避けて通れない大事件です。NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも描かれていましたね。

当時の奥州藤原氏の当主は4代泰衡(やすひら)。敵対勢力となれば一族郎党容赦なく斬り捨てられていた時代ですが、前の当主だった3代秀衡(ひでひら)の三男の娘である幼子は、家来の石塚民部守時(もりとき)と妻に命を救われます。守時の妻の名前を「小萩」と言い、今の色麻町付近にいた守時の弟のもとに身を寄せて、後に出家。1205(元久2)年に仙台付近に移りました。守時と女児の死後はこの辺りにお堂を建てて、女児の御持仏だった十一面観世音菩薩を祀り、冥福を祈ったと伝えられています。

奥州藤原氏の滅亡によって平泉は荒廃しましたが、後に平泉を領内に置いた伊達政宗も、中尊寺金色堂の修復や寺領の保護に関わったことが知られていますね。

仙岳院と縁の深い日光東照宮と平泉の中尊寺は、現代ではどちらもユネスコ世界文化遺産に登録されています。巡礼以前から格式の高いお寺であることは何となく知っていましたが、2つの世界遺産の物語を「架け橋」のように結んでいる場所だったのですね。

10番 善入院観音堂 ねずみ年生まれと原町っ子の拠り所

江戸時代から続く原町商店街

仙岳院から日を改め、次は10番札所の善入院観音堂にお参りしました。

善入院は宮城野区の原町商店街にあり、路線バスの「第四合同庁舎前」が最寄りです。商店街の仙台駅寄りの入口に近く、JR仙石線の陸前原ノ町駅からは少々距離がありますが、沿道には個性豊かなお店が点在しているので、お散歩がてら向かうのも楽しいと思います。

子年生まれの守り本尊。ぜひ他の十二支の守り本尊も探してみてください

道沿いには、日の丸にねずみの描かれた看板がありました。善入院は干支の子(ねずみ)年生まれの守り神とされているほか、「原町の観音様」としても広く親しまれているそうです。子年生まれという方は、ぜひチェックしてみてくださいね。ちなみに私は……年齢非公表でお願いしますヒヒーン。

石段や碑のゴツゴツ感にドキドキ

本堂は通りから細長く伸びる敷地を進んだ先にあります。「蔵王大権現」の力強い文字が刻まれた石碑も印象的です。傍らには樹齢200年以上とされる大きなイチョウの木もそびえ、決して広くないながらも「パワー」を感じる境内です。訪れたのは夏真っ盛りで、蝉が元気に鳴いていました。

額も独特の趣がありますね。右側の額に記されているのは、文字なのでしょうか……?

本尊は千手観音菩薩で、他にも大勢至菩薩、聖観世音菩薩も祀られています。

言い伝えによると、現在の青葉区八幡付近に住んでいた白根沢喜兵衛という人が夢でお告げを受け、今の泉区大沢の辺りで3体の仏像を発見した後、「自宅に置いておくのは忍びない」ということで、修験者を通じてお堂を建ててもらったのが始まりとのこと。当時は別の名前の寺でしたが、廃仏毀釈で廃寺になった後に再興し、1933(昭和8年)に弘前の善入院と「合併」して今の形になったそうです。
なお、毎年2月16日には開帳されるとのこと。

お地蔵様ズ

本堂の左手には、「油掛地蔵」などのお地蔵様が。

他にも無数の碑が祀られていました。

四方八方から降り注ぐ蝉しぐれを浴びながら、古くからこの辺りの人たちの「心の拠り所」として大切にされてきた歴史に思いを馳せたのでした。

8番 宝光院観音堂/9番 満願寺観音堂 ビルの谷間から「仏様が見てますよ」

さらに別の日、青葉区本町にある満願寺に向かいました。ここにはかつて錦町公園付近にあり、仙台空襲で本堂が焼失した宝光院の聖観世音菩薩も祀られており、2つの札所が同居しています。

場所は仙台駅や県庁からも徒歩圏内で、まさに都会のど真ん中です。お寺の敷地は「銀杏坂」とも呼ばれる愛宕上杉通に面していますが、普段は裏手にある路地からしか出入りできないというトラップが用意されているのでご注意ください。

境内はビルの谷間にあります。
本堂も立派なのですが、向かい側の東北電力本店ビルの存在感が凄まじすぎました。

ちなみに、隣には宮城県神社庁もあります。

神様、仏様、ウラロジ仙台編集部と読者のみんなをお守りください。
そして東北電力様、しがないフリーランスの私に仕事を発注してくd……

 

仏 様 が 見 て ま す よ

 

邪(よこしま)な心でお参りなんてするものではありません。

駐車マナーは言うまでもありませんが、いつも誰かに見られているという気持ちで、清く正しく美しく生きていこうと思います。はい。

今回の巡礼はここまで。

……

え?まさか、今回でフィニッシュだと思っていました?

そんなわけないじゃないですか!こんなに暑い中で全部巡ろうものなら、ライターの干物が出来上がっちゃいますよ〜

邪念を捨て、次こそいよいよラストスパートをかけたいと思います。秋からは本気出す!


もうちょっとだけ続くんじゃ

読者の皆さんにも共感いただけるかと思うのですが、仙台三十三観音フル巡礼に挑戦するハードルはかなり高いですよね。何せ目的地が33もあるわけですから。

「ちょっと面白そうだけど自分でやるにはハードルが高いなあ」と感じる遊びを、ライターの目を通じて我々も追体験し楽しむことができる。これってメディアの醍醐味のひとつだと思うのです。

「ハードルが高いと思っていたけどこれなら自分にもできそう、やってみたい」と思えたらそれも最高。「ハードルが高いから自分は近場にだけ行ってみよう」「レポを見て楽しもう」でももちろん素晴らしい。かいさんが頑張ってくれたおかげで我々にはたくさんの選択肢が生まれていて、それが心にゆとりを、暮らしに花を添えてくれているんだなあ。ライティングという仕事はかくも人の営みを豊かにする一助となるものなのか、と実感するものであります。かいさん今までありがとう、そしてこれからもよろしくね!

さて強度の高い無茶ぶりを上手いこと肯定したところで、今回の無茶ぶりクエストは一旦締めとさせていただきます。

次はおそらく最終回(と先に言っておくことで退路を断つ)!

長きにわたってお送りしてきた仙台三十三観音逆打ち巡礼の旅、フィナーレまで一緒に見届けていただけると嬉しいです。ではまた次回!

執筆:佐々木かい
編集:編集S(観音)

参考文献

NPO法人楽遊ネットワーク宮城『仙台の三十三観音巡り専用御朱印帳』https://nporakuyou.web.fc2.com/

宮町商店街振興組合HP
https://www.omiyamachi.com/%E4%BB%99%E5%B2%B3%E9%99%A2

東日本鉄道文化財団「善入院千手観音堂保存整備事業」
https://www.ejrcf.or.jp/culture/sendai22.html

本町商店街振興組合HP
http://www.s-honcho.com/guide/index.html