堅物記者の無茶ぶりクエスト 番外編その2【親の顔ほど見た道で「街歩き」させられた件】

場所

チャレンジクリエイター名鑑No.2でご紹介した、フリーライター・佐々木かいさん。

真面目でお硬いイメージを払拭し、苦手としている主観的な発信に挑戦していきたい……!というかいさんのやっぱりどこか真面目な思いを受けまして、ウラロジ仙台では、かいさんへの無茶ぶり企画「無茶ぶりクエスト」の連載をスタートすることになりました。

無茶ぶりクエストとは
ウラロジ仙台編集部から課された若干無茶なお題・ミッションのクリアを目指し、その過程をコラムにして提出していただくという連載企画。佐々木かいさんの「苦手分野にも挑戦していきたい」という心意気を応援するものであって、決して彼が突然の無茶ぶりに右往左往する様を見て楽しみたいとかそういうことではありません。
前回の無茶ぶりクエスト番外編では、専門家の先生や編集長とともに仙台三越で化石を探すわんぱく取材を敢行しました。

実は当日、仙台三越に集合する前から我々の取材はこっそりスタートしていました。
化石を探す前哨戦(?)として我々がご指南いただいたのは「街歩き」のコツ。仙台暮らしの長い私たちにとっては歩き慣れた道を見つめ直し、新たな楽しみを見出す……そんな遊び方について、かいさんの視点でレポートしてもらいました。

この記事を読めばいつもの通勤・通学路がまた違った顔を見せてくれるかも。無茶ぶりクエスト街歩き編、どうぞお楽しみください!

いつもの道がこんなに楽しい。街歩きのコツを学んでみた

最近、「街歩き」がとてもアツいです。
サングラスの大御所タレントがぶらぶら歩くテレビ番組はレギュラー放送を終えてしまいましたが、名所旧跡や有名店などを(まるで修学旅行のように)巡る従来の観光とはひと味違う、旅の楽しみ方が広がってきているのを感じます。歩いて楽しめる都市=ウォーカブル・シティは、岩手県盛岡市が昨年、米・ニューヨーク・タイムズ紙に大きく取り上げられた時にもキーワードの一つとして注目されました。

では、「街歩き」は地元の街でも面白いものなのでしょうか?
個人的には、「絶対面白い!」と思うのですが、では、「どうやったら楽しめるの?」と聞かれると、具体的な方法を説明するのは難しいものです。何度も通ったことのある道のりであれば尚の事。今回は、そんな「親の顔ほど見た」道のりで、街歩きの楽しさを伝授してもらおうというわけです。

案内してくださるのは、街歩きの愛好家・渡邉曜平(わたなべ・ようへい)さんです。今回は青葉通一番町の藤崎本館前をスタートし、目的地の仙台三越を目指します。実は、渡邉さんには以前お届けした仙台三越での化石探し回で専門家の先生をご紹介いただき、当日も同行していただきました。その際「せっかくの機会なので、道中で街歩きのコツを伝授していただけませんか?」とお願いしたところ、快諾していただいたのです。本当にありがとうございます!
さて、目的地までは商店街をまっすぐ歩くと10分少々で着いてしまいます。しかし、道のりは一つに限りません。どんなルートをたどるか楽しみでしたが、先生とのお約束の時間まであまり余裕が無かったこともあり、オーソドックスに商店街を北上することになりました。

おなじみの商店街(ぶらんど〜む一番町)(2022年撮影)

実はマニアックな路地裏探検を期待していたので、拍子抜けでした。何せ、藤崎本館から仙台三越までの商店街ですよ?仙台市で生まれ育って(ピー)年、これまで何千回と往復した気がする、おなじみのルートです。しかも、あまり時間がありません。新しい「発見」に出合うことはできるのでしょうか?

街歩きのポイント① 壁を見つめてみよう!

いきなりですが、壁です。皆さんは、建物の壁を気にして街を歩いていますか?私は気にしていません(この時以外は!)。建物にどんな店が入っているかに目が行って、壁に注意を払うことはあまり無いと思います。

渡邉さん「壁に使われる石材やタイルには様々な種類があるので、見比べながら歩くととても面白いですよ!」

では、出発地点の藤崎本館から「壁」を見ていきましょう。

あらためて見ると、少し赤みがかったような灰色の中に無数のつぶつぶがあります。集合体恐怖の人にはちょっとキツイかもしれませんが、引きで見ると、重厚で高級な印象を受ける壁面です。渡邉さんによると、「岡山県で採れる『万成石(まんなりいし)』という石材が使われているのではないか」とのこと。

万成石は、淡紅色の華やかな見た目が特徴で「桜御影(さくらみかげ)」とも呼ばれています。戦前から洋風建築などの建材として重宝され、東京・銀座のシンボル「和光本店」にも使われているそうです。東北を代表する百貨店の玄関口で、万成石は華やかさや気品、高級感を演出する役割を果たしていたのですね。

街を歩くと、無数の「壁」があることに気づきます(当たり前ですが)。ビル自体の壁面に加え、テナントのイメージに合わせて外装が二重、三重に施されているところもあるので注目です。海外のハイブランドが入居するビルには「いい石材」が使われていることが多いのだとか。壁面を見つめるあまり、お店の人やお客さんに迷惑をかけないように気をつけましょう。

シンプルなタイルもよく見ると少しずつ違います。

おや?これは……化石なのか!?

愛用の『原色 石材大事典』を手にしている渡邉さん

渡邉さん「日常的に眺めていると、本物の石材か、模様をプリントしただけなのかを見分けられるようにもなりますよ!」

街歩きのポイント② 街中の自然(植生)を楽しもう!

ビルの壁に注目しながら一番町を北へ向かう一行ですが、渡邉さんの教えてくれる楽しみ方は壁だけではありません。

「ぶらんど〜む一番町」の一角で、ふと、街路樹を見上げてみると……

おや?

……木の幹に何かいる!?

私は野鳥観察を趣味の一つとしているのですが、一番町のど真ん中にキツツキがいるとは思ってもみませんでした!赤い帽子を被ったような特徴的な見た目からして、「アカゲラ」という鳥(がモデルの何か)だと思われるのですが、なぜこの場所にいるのか、全く分かりません。もし経緯をご存知の方がいらっしゃったら、ぜひ教えてください!

ちなみに、キツツキの中でも、アカゲラよりも小さな「コゲラ」という種類であれば、青葉通や肴町公園といった中心部の街路樹や公園でも姿を見ることができますよ!

渡邉さん「街路樹を見るのも意外と面白いんですよね」

様々な植物を見ることができる一番町四丁目商店街(2021年撮影)

杜の都・仙台の街路樹と言えば定禅寺通や青葉通のケヤキ並木が有名ですが、他の街路にも、様々な樹木が植えられています。今回歩いた一番町の商店街でも、足元に季節の花が植えられていたり、古いビルの壁にツタが絡みついていたりと、意外なほどたくさんの種類の植物に出合うことが可能です。商店街によっては、季節ごとに違った表情を楽しんでもらおうと、あえて木の種類を揃えずにさまざまな樹種を植えているところもあるそうですよ。

古いビルの一角で見かけた力強い植物たち

街路樹に注目し始めると、視線が少し高くなったのに気づきます。意外なところでキツツキを発見したように、視点の高さを変えるだけで、見慣れているはずの街の景色はとても新鮮です。最近は手元のスマホに気を取られてしまいがちという方、たまには斜め上を見てみませんか?

ということは、さらに視点を高くしてみると、もっと面白くなりそうですよ!

街歩きのポイント③ とにかく見上げてみよう!

普段の目線では、ビルの1階にばかり目が行きがちです。そこで少し視点を上げてみると、思わぬ風景に出合うことができます。

恐山R「ビルの上のほう、何だかかわいいですね!」

◯で囲んだ辺り、メッシュ素材のような雲型の飾りが何だかかわいくて目を惹く

一番町のアーケードのうち、「ぶらんど〜む一番町」は天井がとても高く、道幅も広いので、ビルの3階あたりの様子まで見ることができます。一番町四丁目商店街は道の中央には屋根が無いので、建物の全体像を見渡すことも可能です。あらためて見上げると、窓の形や配置、普段はあまり目に入らない看板、フロアごとに違う壁面など、様々なポイントに気づくことができました。

同じように、視点を普段よりも少し下げて、足元に注目するのも楽しいそうです。最近は、ご当地のデザインが施されたマンホールも観光の呼び物として注目されていますよね。

そう言えば、一番町四丁目に何か所かあるこの模様、どういう意味なんだろう……?

渡邉さん「定礎も素材や書体などに違いがあって、見比べると面白いですよ」

※定礎(ていそ):ビルなどの建設を始める時に、工事の安全を祈って設置する礎石のこと。

「定礎」も、一つ一つ見ていくと奥深い世界なのだそうです。先ほどの「壁」もそうですが、ビルの数だけ建てた人たちの願いや想いが込められていることに思いを馳せずにはいられません。定礎だけを探して進む街歩きも面白そうです。

渡邉さんとの楽しい時間はあっという間で、一行は目的地の仙台三越に到着しました。この後の模様については、こちらをご覧ください!

視点をずらすと、街はもっと楽しい!

横にも、上にも、足元にも……。
見慣れていたはずの一番町の風景にも、少し視点をずらすだけで様々な「発見」がありました。「親の顔ほど見た」と冒頭に書きましたが、仙台に生まれて(ピー)年経っても、まだまだ知らないことだらけです。むしろ、発見すればするほど新しい「謎」を呼びました。
今回渡邉さんに教わったポイントを活かして、「ひたすら壁を楽しむ」「ずっと上を見る」といった、街歩きの「縛りプレイ」をしてみるのも楽しそうですよね!
……さて、どんな縛りプレイがいいですかね〜?個人的には店やビルの名前から動物の名前を探す「動物縛り」とか楽しそうなんですが、どうでしょう?あ、「植物縛り」でも可です!誰か一緒にやりませんか?……え、どうしたんですか?街歩きの話しかしていないですよ???

街歩き、まだまだ奥が深そう

藤崎本館前から仙台三越まで……という、仙台、いや宮城、むしろ東北在住の人ならきっと誰もが一度は歩いたことがあるだろう道のり。
見慣れたいつものアーケードなのに、ちょっと視点を変えるだけで様々な発見がありました。普段は目的地と目的地をつなぐ線でしかなかった道が、見方を変えるとこんなに楽しく興味深い遊び場になるとは……街歩き、侮れない。
皆様も時間に余裕のあるときには、上を見たり下を見たり石を見たり、ぜひいつもと違うところに目を向けてみてくださいね。そして何か面白い物を見つけたら #ウラロジ路上観察 のハッシュタグをつけてX(旧:Twitter)などに投稿するのだ。

今回は化石観察前の時間を使ってのかなりタイトな取材となってしまいましたが、もっとしっかり時間を確保してより詳しいお話を伺いたいな~と(勝手に)画策しております。
街歩きガチ勢の皆様、座してお待ちください。

次回の無茶ぶりクエストのお題はまだ未定となっております。匂わせできない!
また編集長と相談しつつ愉快な無茶ぶりを考案する予定ですので、そちらも楽しみにお待ちいただければ幸いです。
それではまた次回の無茶ぶりクエストでお会いしましょう~!

ウラロジ仙台では、作品を発表したいクリエイターの方を募集しています!

ウラロジ仙台では、地元・仙台を中心に活動しているクリエイターの方々を応援しています。

作品をweb上で発表する機会を作ることで、創作活動やコンペへの応募に向けてモチベーションがほしい」「もっと多くの人に見てもらいたいから一緒に発信方法を考えてほしい……そう考えている方は、ぜひウラロジ仙台編集部(代表メール:info@studio-soda.com)まで、作品(もしくは作品に関係する企画・アイディアなど)を添えてご連絡ください。

エッセイ・小説・漫画、その他ジャンルは問いません。
ウラロジ仙台編集部と一緒に、魅力的な作品をつくってばんばん世の中へ出していきましょう!

 

著者紹介

佐々木かい(ささき・かい)

フリーの聞き手・書き手。1990(平成2)年、仙台市生まれ。地方新聞社の記者、社会福祉法人の広報職などを経て現職。主に地元企業の人材採用や情報発信のお手伝いなどに面白さを感じています。【急募】仕事と同じくらい楽しいこと【服装自由】

執筆:佐々木かい
編集:S