ずっとずっと夢中になれる!魅惑のサークルたち
今回からウラロジ仙台で始まった「あいつら全員、同好会!」は、宮城・仙台で活躍するおもしろ同好会・サークルの活動内容やその起こり、裏話などをインタビュー記事として特集していくコーナーです。同好会・サークル活動は仕事や学校の授業ではないからこそ、バカみたいに夢中になってしまう魅力が隠れているはず。面白くて、しょうもなくて、とっても愛おしい……そんな活動を続ける人々をご紹介していきます。
今回は『食ティッシュ研究』『路地裏ステッカー図鑑』シリーズなどの評論同人誌を手がける同人サークル「南のエデン」の及川さんにお話をお伺いいたしました。
尖った作風のサークルのはじまりは……
──「南のエデン」というのはサークル名、という認識で良いでしょうか?
及川さん:そうですね。元々、地元の友達とのLINEでのグループラインがありまして。その名前が「南のエデン」だったんですよね。当時『東のエデン』というアニメを見てた時にちょうどグループ名を考えてたんで、適当につけたのが、ずっと今でもグループ名になってて。
そのメンバーで色々やろうってなったんで、そのまま「南のエデン」として、コミケサークルに出店するようになったって流れですね。
『東のエデン』とは
2009年4月より6月までフジテレビ系深夜アニメ放送枠「ノイタミナ」にて放送されていた監督・神山健治さん、キャラクターデザインに漫画家の羽海野チカ先生を起用したオリジナルストーリーアニメ作品。記憶喪失の青年・滝沢と彼が所持する謎の携帯電話を巡るサスペンスアクション。
──『東のエデン』のタイトルをもじったサークル名ということは、最初は二次創作での活動だったんですか?
及川さん:いえ、初めからオリジナルでっていう方向でした。コミケに出店してなんか面白いことが出来ればいいねって学生の時から友達と話していたんです。
「具体的に何をやるか?」って案を出していった時に『食ティッシュ研究』のアイデアをまず自分が出したんです。
▲「食ティッシュ」とは読んで字のごとく「ティッシュを食べる行為」。南のエデン発行の同人誌『食ティッシュ研究』では様々なティッシュの食べ比べを行い、「口溶け」「舌触り」「喉越し」「味」「デザイン」の項目で評価及びレビューが掲載されています。
なぜティッシュを食べようと思ったのか
──この『食ティッシュ研究』をやろうと思い立ったきっかけもお聞きしたいです。
及川さん:「南のエデン」メンバーとは別の知り合いなんですけど、「昔貧乏だった時代があった」みたいな色々話してた友達がいて。「ティッシュに醤油をつけてポン酢をつけて食べてた」とかなんか、そういうエピソードをちらっと聞いたことがあって(笑)。
自分達も、小学生の時に甘いローションティッシュを舐めてみたりしながら友達と遊んでた記憶があるなぁ、と思い出しました。
それからティッシュを食べてる人を割とその時期(2018年頃)SNSでもちらほら見かけていたような気がしてたので、実際にティッシュの食べ比べをやってみたら割と話題性があるんじゃないか?と感じてこのテーマに決めました。
▲『食ティッシュ研究』より
突発的なアイデアなんですけど、ある程度完成度の高い作品のようなクオリティに見えるように、デザインも多少配慮して、印刷業者にちゃんと頼んで作りました。本文もフルカラーなので結構費用は掛かったんですが、売り上げは意識せず、楽しんでいこうってスタンスでした。
仕事の一環でYouTubeのサムネイル作ったりとか、そういうデザイン周りのちょっとした手伝いとかは細かくやってたんで、本を作る時もデザインを担当したりしました。
──本文のデザインがとてもわかりやすくて読みやすいです!この食ティッシュの方は実際にティッシュメーカーに関わる人のインタビューもあるし、見所がいっぱいですごい。
及川さん:ティッシュメーカーの方へのインタビューはメンバーのつてで実現したものだったんです。
──甘いティッシュがある理由とかも知って「なるほどな」って勉強になります。「食ティッシュ」というタイトルに沿って実際に調理方法が記載されていて、そこもインパクトがありますね!
及川さん:調理は、焼いたり、蒸したり揚げたり、一応醤油つけたりとか、ドレッシング使ってやってみたりとかってのはあったんですけど、ちょっと載せられるような見た目になんなかったものが多くて(笑)。そういうのはちょっと却下して、載せられるものを選びました。
甘いティッシュがある理由やどんなレシピが載ってるのかが気になった方は是非「食ティッシュ研究」をチェック!
──コンビニやドラッグストアでは見たこともないような高級ティッシュまで試してるんですね。
及川さん:1箱1000円のティッシュとか、しかも1箱で買えないロット買い限定とかもあって。1種類のティッシュのロット購入で3箱3000円とかもありました(笑)。
──パッケージからしてなんか高級感溢れてて、見てるだけでも震えます。
及川さん:そうなんですよね。560枚入り、4枚重ねという超贅沢なものもあったり。
──試食した後の残りのティッシュは普通に日常でも使ったと思うんですけど、それぞれの使用感の違いはありましたか?
及川さん:違いがありました。鼻をかむときもやっぱりこうダメージ少ないなみたいな感じはありますね。
──数千円単位の高級ティッシュとかって、お店とかで買えるんですか。
及川さん:店舗で見かけることはほとんどなく、ネットでしか買えないものが多かったです。専門的なところじゃないと買えないんだなって実感しました。
──本を発行した時の周囲の反応はどうでした?
及川さん:SNSで宣伝はしてみたものの「コミケ当日そんなに来ないだろう」と思ってたんですけど、コミケカタログのサークルカットを見て来てくれた人が結構いて。その時とその次のイベントで本が完売するぐらいだったんです。
それがモチベになってサークル活動の継続と『路地裏ステッカー図鑑』の発行へと繋がりました。
▲仙台の路地裏の壁や電柱といった場所に貼られているステッカーの詳細を図鑑形式にまとめた一冊。仙台在住の皆さんなら見たことのあるステッカーに関する情報が掲載されているかも!?
大人の自由研究として!ストリートカルチャーの歴史にも着目
──南のエデンさんの出される本って、王道のオリジナル同人誌みたいな感じがあって、面白いですよね。
及川さん:自分達がコミケに出る際のジャンルはいわゆる「評論」と呼ばれるジャンルなんですが、「評論」ジャンルって「大人の自由研究」みたいなイメージがあったんで、自分としても皆が楽しめるジャンルの本を出せたなと感じています。
──『路地裏ステッカー図鑑 ~仙台編~』も、サークルのメンバー全員で制作されたんですか?
及川さん:メンバーの中で仙台に残っているのは自分だけなので、これは自分がメインで作っていますね。食ティッシュ本よりもちょっと真面目な路線で行こうって感じではあったんですけど、ちょっと自分個人的に昔から気になってたジャンルというのも理由のひとつです。
そういう路地裏に貼ってるステッカーの詳細、という内容だったんで、今回は自分主体で動いてましたね。
──よく見ると表紙に掲載されてるステッカー、見掛けたことがあるし、以前ウラロジ仙台 編集長のらむねさんがインタビューされてたEDQNさんのやつだ!
及川さん:グラフィティアーティストのEDQNさん、結構会いに行ってますね。詳細情報がわからないステッカーが結構多くて…。
「このステッカーのことわかりますか?」って聞いて「これは有名なグラフィティのアーティストの方のですね」と教えて貰ったりしていました。EDQNさんは詳しいので、自分にとってステッカーの先輩ですね。
▲仙台フォーラス1F・KOZYの一角に拠点を持つグラフィティアーティストのEDQNさん。ストリートカルチャーや仙台の街のあちこちにボムられたステッカーの元ネタにもお詳しい。
──ステッカーにも色々ルーツがあるんですか?
及川さん:そういうルーツみたいなのはあるんです。ステッカーの元ネタが海外発祥とかだったりして。ちなみに、ステッカーを貼る行為を「ボムする」って言うんです。
最初はスプレーアートで、グラフィティアートが描かれていたんですけど。スプレーアートって人目につかずになかなかできることじゃないですよね。あらかじめ作っておいたステッカーを貼る、だと人目につかない上に簡単じゃないですか。
それを至るところにベタベタ貼るということがグラフティアーティストの人が自分の名を広めるみたいな目的などから、その文化が根付いてるらしいです。
さて、どこだ。 pic.twitter.com/R70JEzpaL6
— 【金曜更新】ウラロジ仙台 (@urarozi_sendai) October 27, 2022
──ステッカーが貼られる行為って、そういう歴史があったんですね!
及川さん:自分も最近知ったんですけど、見てる分には面白いですよね。法律や条例の観点で言えば、ダメなんですけれども。
──ステッカー自体に目で楽しむ楽しさっていうのが、すごい詰まってていいですよね。
及川さん:ぱっと見で面白そうみたいに思ってもらえるのが、やっぱ一番というか。「あんまり考えなくても見れる本」って結構自分も好きなんで、本を作る時もそういうのがいいなって感じました。
──GoogleMapでステッカーを貼った場所がわかるって、すごい画期的!
▲仙台駅周辺を歩いてると目に入ってくるこのステッカーの製作元も掲載されています。
及川さん:これは、仙台市の一番町・柳町周辺にあるブックカフェバー「へんてこ屋」の店主・ミカさんのアイディアです。「QRコードを載せてみたら?」って。
──これがあることによってちょっと街を冒険して実際に見に行ってみようってなれますよね。そういえば、さっきおっしゃってた「大人の自由研究」とか、そういうのにはまったルーツってあります?
及川さん:昔からコミケには一般参加してたんですけど、はじめの頃はいわゆるBL本とか、18禁とかそういうイメージが強かったんですよね。だけど実際に会場を見渡してみると、ハンドメイドの雑貨が売ってたり、興味をそそられる本っていうのが「評論」っていうジャンルの中に結構あって、コミケ行くたびに買ったりはしてて。自分らも出すんだったら漫画とかは描けないし、こういう評論系のジャンルかなっていうのは、昔から思ってはいました。
──2022年の冬コミで新刊『路地裏ステッカー~秋葉原編~』が発行されましたが、見所などあれば教えて下さい!
及川さん:新刊のステッカー本については、前回の仙台編とページ数は変わらないのですが、ステッカーの種類が倍に増えており、デザインも前より力を入れたので比較的濃い内容にはなっているかなと思います。ステッカーの種類が多くて大変ではありましたが仙台と比べると見たことのないステッカーが多いので、その詳細を調べるのも楽しかったです。
▲新刊「路地裏ステッカー~秋葉原編~」には2種類のステッカーがノベルティで付いています!
同人誌はコミックだけではない!サブカルをもっと好きになろう
──2023年の目標はありますか?
及川さん:コロナ禍の影響でコミケの来客数が減ったりしてたのが最近やっと盛り返してきた感じはあるんですけど、まだまだ昔ほどじゃないなって体感があるんで、もっとコミケの、さらに言えば評論ジャンルをもっと多くの人に知ってほしいなという気持ちがありますね。
サークルとして、そういうのをこれからも広めていきたいと感じています。
──最後に読者にメッセージをお願い致します!
及川さん:サブカルチャーってやっぱ面白いんで、もっとサブカルチャー好きが増えて、そういうコンテンツ好きな人や、どんどん発信もしたりする人、サブカル好きが増えてほしいな、と思いますね。
──サブカル同人誌が好きで良く購読していたのですが、今回こうして作り手の方のお話を聞けて新鮮でした!
「評論」ジャンルで活躍するサークルのお話を聞いて
「評論」という言葉だけ見ると、一見堅苦しく難しい印象を受けますが、サブカル同人誌が「評論」ジャンルのひとつだと知り一気に親しみが湧きました。また、及川さんがおっしゃっていた様に、サブカル好きが増え、更に盛り上がりを見せていって欲しいですね。
その為にも「ウラロジ仙台」は今後もサブカル好きとして情報発信を行い、仙台のサブカルシーンを一層盛り上げていきたいと思います!
今回のインタビューで登場したサークル「南のエデン」の同人誌は文庫喫茶バー&雑貨店「へんてこ屋」の店舗及び通販サイトにて購入可能。気になった方は是非チェックしてみて下さい!
執筆:花
委託販売情報
店名:へんてこ屋(Sloth room)
電話番号:080-6019-4710(お電話でのお問い合わせは営業日の営業時間内にお願いいたします)
住所:宮城県仙台市青葉区一番町一丁目11-34三浦輪業商会ビル2階202号室
営業時間:*平日15:00、土日祝13:00OPEN/月曜Sloth room予約営業
定休日:毎週火曜、不定休(営業情報はSNSをチェック)
駐車場:無
※新型コロナウイルス感染症の感染状況によって営業時間・営業日変更の可能性がございます。
HP:https://hentekoyam.wixsite.com/mysite
へんてこ屋 通販サイト:https://hentekoya.stores.jp/
仙台の同好会情報、お待ちしています!
「あいつら全員、同好会!」では、仙台市内を中心に活動しているちょっと風変わりなサークル・同好会へのインタビューを続けていきます。
- 母がやっているサークル活動が何とも個性的だからぜひ紹介してほしい
- マニアックなものを作っているサークルがいるらしいんだけど
- 私の通う大学には謎のサークルがあるので話を聞いてきてほしい
- こんなサークルは仙台市内の大学にもある?
……などなど、動機は何でも OK!自薦他薦問いませんので、以下のメールアドレスにてお知らせください。情報、お待ちしております!
info★studio-soda.com(★を@に変えてください/担当 ウラロジ仙台 恐山R)