【2023年 完全版】青葉通仙台駅前エリア社会実験・MOVE MOVEとは何だったのか②

青葉通仙台駅前エリア社会実験・MOVE MOVEとは何だったのか②

2022年実施・青葉通仙台駅前エリア社会実験、その後

<怒涛の前編はこちら>

ウラロジ仙台では「陰キャなりにキラキラまちづくり界隈に首をつっこんでみる」ムーブを陰キャがゼロから考えるまちづくりシリーズ(略してゼロまち)と題して、2022年の春先から青葉通仙台駅前エリア周辺でのまちづくりの話題を追ってきました。


▲青葉通仙台駅前エリア社会実験「MOVE MOVE」全景

仙台市からの無茶振りお願いを受け続けたことで、ひと回りもふた回りも成長した感じがあるウラロジ仙台、青葉通仙台駅前エリア社会実験「MOVE MOVE」のその後を語る市民参画イベントが2023年10月に開催されることを小耳に挟みました。


 

……ウラロジ仙台ちゃん、登壇ゲストとして呼ばれてないが?

陽キャの光で溶けそうになりながら取材を頑張り、血の涙を流しながら丁寧に編集し、横つながりのコミュニティを構築しつつ、まちづくりとは無縁のインドア派読者にもちらほら影響を与えてきたつもりであったが、どこにも名前がないのなんかムカつくなという単純な動機でまた取材に行ってきました。今回は「どうして、MOVE MOVEなの?」「MOVE MOVEでどんなことをやったの?」の部分にフォーカスしていきます。

※「ゼロまち」シリーズは仙台市都心まちづくり課のご依頼・ご協力のもと取り組んでおります。

「MOVE MOVE」の失われた記憶をとりもどす

仙台市のホームページでは既に検証結果やアクティビティの様子がアップされています。

こんな膨大なデータをまとめて下さった効果検証チームの皆さんのご苦労は計り知れない。
ただ、ページが多い……専門用語も多い……。

「ああ、なんかやってましたけどあれって結局なんだったんです?」「資料多いわバカタレ」となっている皆さんと一緒に今回のトークイベントで「なんか2022年に駅前でやってましたよね」をまず思い出そうってわけですね。

第1部の様子(撮影:佐藤早苗)

どうして、MOVE MOVEなの?

クロストーク②では社会実験の利活用や空間の居心地調査を担った宮城大学 事業構想学群 助教 友渕先生&宮城大学の学生さんたちを聞き手に、若手クリエイターが関わってきたプロセスについてお答えいただきます。回答は社会実験準備事務局のクリエイティブチームです。


撮影:佐藤早苗

<聞き手>

宮城大学 事業構想学群 助教
友渕 貴之さん
宮城大学 事業構想学群
及川 和怜さん
宮城大学 事業構想学群
相澤 佑斗さん

<回答者>

【社会実験準備事務局】
ビジュアルデザイン統括
小松 大知さん
空間デザイン統括
貝沼 泉実さん
プロモーション統括
伊藤 愛発さん
ブランディング統括
奥口 文結さん

 

社会実験の名称

人の性質や特徴を表す言葉として「ひととなり」という言葉があります。

街にも「ひととなり」があっていいのではないか。ここを拠点に活動する人同士が連携し、交流が活性化されることで街としての『ひととなり』が育つのでは?」という仮定から導かれたのが今回の社会実験に関するステートメントやデザインです。

▲空間デザイン、ビジュアルデザイン担当のクリエイティブチームと共に考えた社会実験のネーミング案は、60案以上ありました。青葉の中心とか、ちょっとパフィーとかサカナクションみたいなのもある。

「この膨大なアイディアの中、『myaku myaku』という案に決まりそうになったあたりで、大阪万博のキャラクターがミャクミャク様という名前に決定したという知らせもあって、えらいこっちゃとなった」と事務局の皆さんも大混乱だったとのこと。

最終的に決まったのが「MOVE MOVE」。ひととなりを表すために、人のこの流れを作っていろんな交流を生み出すことで、青葉通に血が通い、巡りが良くなる。これを踏まえて、「MOVE」を2回繰り返す「MOVE MOVE」に決まりました。

 

なぜキーカラーが赤と青?

「青葉通を実際に歩いてみると赤〜黄色系の色が各所で使われていることが多いのに気づいた」と話すのはグラフィックデザイン担当の小松さん。ケヤキの緑の補色として赤や黄色が無意識的に使われてたんじゃないかっていうところを1つの根拠と捉え、ユニバーサルデザインにも配慮しながら赤と青の色味を決めていったそうです。



撮影:佐藤早苗

 

あの空間の狙いは?

Q. 貝沼さんが空間デザインを検討されていた時は、どのような利用者の方を想定されていましたか。僕は事前の段階では、「バス待ちのために滞在する人が多くて、社会人の方の通行がほとんどだろうな」という想定だったんですけど、(社会実験での居心地調査で)参加してみると実際は子どもが多かったことがなんか、予想外で。(聞き手/宮城大学 事業構想学群 相澤 佑斗さん)


撮影:佐藤早苗

A. お答えします!(空間設計統括・貝沼 泉実さん)
普段は、オフィスビルやお店に向かう方など目的を持って通る方が多いイメージですが、社会実験でもあるので、これまであんまり通ったことのない方も含めて、様々な世代の方が来てくれたら良いんじゃないかっていうイメージはありました。結果として、予想外に子連れの方の需要があったりと、駅前に無料で居られる公共の場所があることは、かなり豊かなことだと感じました。

相澤さん:ありがとうございます。現状だと、仙台の中心部って特に子連れの方とか、違う目的地へ向かうにも歩く距離が長いから遊びに来るのが難しいと思うんです。
ああいった空間があることで、そういう人たちも気軽に来てくれるようになって、仙台がもっと賑わっていくのかなと気付かされました。

 

一過性のイベント?

Q. 「ただ社会実験を行っても話題にならないから」という理由で(イベントのように)PRするという理由はわかりますが、イベント化してしまったら、日常とは異なる非日常、将来につながる成果=市役所の財産になるのでしょうか?(観覧者の方より)

A. お答えします!(プロモーション統括・伊藤 愛発さん)
PRを大々的にしたというところで言うと、イベントとして取り上げてこのような違和感を感じた方も多いと思います。ただ、その点はコンテンツの組み方でカバーしていました。たとえば、日によって人を集中させない時間帯を意図的に作っていましたし、朝〜夜の時間帯それぞれの使われ方もデータを取って、今年度深掘りをしています。

 

MOVE MOVE どんなことをやったの


撮影:佐藤早苗

クロストーク③では社会実験の運営(コンテンツ取りまとめ)や出店に関わった方々が社会実験期間中にどんなことをやっていたか、そして期間中はどんな風景が生まれていたか。そして、青葉通のあの辺のエリアがどうなったら良いか話します。進行は奥口さんです。

<話し手>

東北大学 学生団体Pompadour
鹿股 とほこさん
小西畳工店 二代目一級畳製作技能士
小西 康博さん
株式会社SENSE 代表取締役
山岸 えりさん
社会実験準備事務局 コンテンツ統括
伊藤 小百合さん(愛称・りんごちゃん)

(進行……社会実験準備事務局 奥口さん)

 

──まず、コンテンツは具体的にどんなものがあったのかというのをコンテンツ統括の伊藤さんと一緒に振り返っていきたいですね。

りんごさん:コンテンツは約63の出店者が関わっていて、イベントのような取り組みをまずやってみる部分もありましたが、逆に何もなく日常的な雰囲気を作るというのもコンテンツを組み立てていくポイントの一つでした。


撮影:佐藤早苗

 

ワークショップ


▲小西工務店によるワークショップや畳ベンチの提供もありました。いい香りでしたね〜(撮影:佐藤早苗)

小西さん:小西畳工店で出店した畳コースター製作ワークショップでは幅広い世代に参加いただいたのはもちろん、県外の方も立ち寄ってくれたのが印象的でした。東京、埼玉から来ました、新潟からコンサートを観た帰りがけに 何やってるんだろうと寄ってみましたとか、おじいちゃんおばあちゃんのお土産にしたいんです……という具合に。

▲市民参画イベントの入場者にも畳コースター製作キットが配布されていました。たしかに、おみやげとしてもちょうどいいサイズだ。

▲社会実験で設置した「畳ベンチ」も会場に!

 

焚き火


▲挑戦的な取り組みの一つ、焚き火!仙台駅前の風景を見ながら見ず知らずの人と語らう面白いコンテンツでした。

りんごさん:この場所で焚き火をすることによって様々な交流が生まれるんだっていう熱意を持って取り組んだ方がたくさんいらっしゃって実現できたということ、皆さんに伝えたいなと思います。

許認可についてはウラロジ仙台でめちゃくちゃ丁寧に取材しましたしね。
恐山R
おう。読者の皆さんはこれも見てくれよな。

 

ランウェイ


▲学生団体Pompadourを中心に運営されたランウェイ。美しさだけではなく、「自分が着たい服を着て自己表現」がコンセプトで、多種多様なファッション・衣装の参加者が見られました。

青葉通駅前エリアがどんな場所になったら嬉しい?

──山岸さんは開催期間中、お子さんも連れてきてくださっていましたがどうでしょう。

山岸さん:特別遊ぶものがなくてもこういう場所があるだけで、子供たちって誰かとすぐコミュニケーションできたり、 遊べるおもちゃ見つけてきて遊んでみたりできるので……こういう場所があるっていうのは、すごくお子さんにとっても親御さんにとってもいいんじゃないかなっていうのは私も感じます。


▲もちろん遊び場、遊具があっても盛り上がります。

山岸さん:土日だけじゃなくて、例えば普段ご夫婦のどちらかがお仕事に行ってて、もう片方の親御さんがお子さんと2人っきりなご家庭もあると思うんですけど、ずっと2人っきりって結構孤立するんですよ。誰にもその時しんどいことを共有できないとか、互いに話しかけてもコミュニケーションが通じないしどうしよう……みたいな。そういうときちょっと出かけて、誰かいたらいいな〜っていう場所に出かけるだけでもすごく救われるはずですし、そういう場があるのはすごく意義があることだなと私は思っています。

りんごさん:親子連れが安心できる場所という話題の一方で、開催期間中に会場に立ち寄ってくれた黒ずくめのお兄さんから聞いたエピソードを思い出しました。「普段公園に足を踏み入れると、ただファッションで黒が好きなだけなのに不審者だと思われるんです。仙台駅前だとそういう格好してても変に思われないみたいで、なんか一緒に輪の中に入れた」って。あまりにも安全安心を求めるが故に、世代ごとで使う場所が暗黙の了解のように別れている。興味深いです。

恐山R
とても他人事だとは思えねえエピソードだな。



▲振り返ってみると、ランウェイの開催日はいろんな人がいて、それが自然だった。


▲ちなみに弊編集部、赤とかオレンジの服着ないよ。

山岸さん:安全安心を優先しすぎて過保護になりすぎちゃうと、お子さんの創造性をかえって阻害しちゃってる部分もあるかもしれませんしね。親目線で考えても、もうちょっとフリーに、いろんな方と関われる場所はいいですよね。

──働くお母さん目線の話題も続きましたが、学生さん目線だとどうですか。

鹿又さん:学都仙台と言われている割に就職タイミングで東京など県外に行く人が多くて、「それってなんでだろうね」って話した時に、宮城・仙台で働く人を含めて、 大人のことをあまり知らないんじゃないかっていう話が身内で上がったんですね。なので、仙台で働いてるキラキラした大人の人と関わるような機会があったらいいなって考えていて。


▲「仙台駅のこう周りでああいう無償でゆったりできるスペースみたいなのがあった時に大人の方とお話できたら面白いんじゃないかなと考えていました。悩みがあるとき、ふらっとそこに行けば誰かしらがいて、集まってお話できるような」と加えて話す鹿又さん(写真左)

鹿又さんはキラキラしたくて学生団体Pompadourに入ったって言ってましたもんね。眩しいな……。

これからどうなっちゃうの

仙台市・颯田さん
将来ビジョンの策定に向けて、市民参画イベント等でご意見をいただきながら&あらゆる人を巻き込みながら取組みを進めて行きます。現在の状況はAOBADORI MOVEをご覧ください。

再開発やまちづくりにはたくさんの人が関わっていて、急に動かせるようなものではありません。青葉通仙台駅前エリアはどうなっていくのか、今後も動向を追っていきましょう!

失われた記憶を更に補完できた

一度ウラロジ仙台で「MOVE MOVE」を追っていたこともあって、記事の冒頭でも説明した通り「おさらい」の感覚で聞いている部分もありましたが、今回は効果検証チームの話、当日出店者として参加した方々の声を聞くことで、さらに新たな視点で「MOVE MOVE」の全貌を把握出来ました。
恐山R
実際、いろんな立場の人のツッコミや質問が入ることでぐっと「なんだったのか」の解像度が上がったんじゃないですかね。
「まちづくり」「社会実験」という字面だけで見るとどうしても堅い印象を受けますが、様々な立場や世代を交えたクロストークを目の当たりにしてより身近に感じられた方も多いのではないでしょうか。我々が登壇して話すより有意義な時間だったことは間違いないですね!

ゲストとして呼ばれなかったことを微妙〜に根に持つウラロジ仙台編集部。入場特典のニューヨークロール食べたくせに。

ただ、こういうキラキラした「表」ストリートがあってこそ「裏」ストリートが輝くのだ。

 

その逆もまたしかり!陰キャがゼロから考えるまちづくりシリーズ、第二部スタートです!

 

取材日:2023年10月15日
取材:
執筆・編集:S、恐山R
取材協力:登壇者の皆様、仙台市 都心まちづくり課