堅物記者の無茶ぶりクエスト #8 【コンビニ行脚の次は、仙台三十三観音を巡ってきてよ!】

場所

チャレンジクリエイター名鑑No.2でご紹介した、フリーライター・佐々木かいさん。

真面目でお硬いイメージを払拭し、苦手としている主観的な発信に挑戦していきたい……!というかいさんのやっぱりどこか真面目な思いを受けまして、ウラロジ仙台では、かいさんへの無茶ぶり企画「無茶ぶりクエスト」の連載をスタートすることになりました。

無茶ぶりクエストとは
ウラロジ仙台編集部から課された若干無茶なお題・ミッションのクリアを目指し、その過程をコラムにして提出していただくという連載企画。佐々木かいさんの「苦手分野にも挑戦していきたい」という心意気を応援するものであって、決して彼が突然の無茶ぶりに右往左往する様を見て楽しみたいとかそういうことではありません。

今回の無茶ぶりを考案するきっかけとなったのは、セブンイレブンアプリの「バッジ機能」のサービスが終了したことでした。

このバッジ機能を使ってコンビニ行脚に勤しんでいたかいさん。お店巡りマスターのプラチナバッジを目指して各地のセブンイレブンを巡っていたそうなのですが、惜しくもプラチナバッジ獲得前にサービス自体が終了してしまったのでした。

……が、何も「行脚」するものはコンビニに限らなくてもいいはず。2万箇所以上の攻略対象があったセブンイレブン行脚のボリューム感には敵いませんが、巡礼するべきものは他にもあります。たとえば……

 

仙台三十三観音とかね!

 


▲本人不在の場で勝手に無茶ぶりアイデアが飛び出す。

唐突に無茶ぶりされるかいさんの姿はこちらの記事からご確認ください。

というわけで、今回の無茶ぶりは……

セブンイレブンよりは少ないとはいえ33箇所もの攻略ポイントがあるため、今回の無茶ぶりクエストは複数回に分けてお送りしたいと思います。
本記事では、そもそも仙台三十三観音とは何か、どうやって各地を巡るのかなど、基本情報やレギュレーションについてご紹介します。仙台三十三観音を巡るかいさんの旅路にぜひお付き合いください!

33カ所なら余裕っしょ

セブンイレブンアプリからバッジ機能が無くなり、ローソンやファミリーマートに行く機会も人並みに増えてきた今日この頃です。時々、セブンイレブンの新店情報を目にすると一瞬気になってしまいますが、そんな癖もいずれ無くなってしまうのでしょう。日々のモチベーションのうち数%を失い、嘆いていたところにやって来たのが、今回の無茶ぶりクエストです。

細かな目的を考えず、淡々と各地を巡り、小銭を支払いながら記録をつけていく……。
確かに、セブンイレブン行脚は「現代の巡礼」と言える行為だったのかもしれません。

……と言う発想自体、何だか「罰当たり」のような気もしてきましたが、こんな気持ちのまま巡礼をしても大丈夫でしょうか?

▲アプリで最後に記録したのは「仙台愛子東店」でした

では、今回「無茶ぶり」で巡ることになった仙台三十三観音について、一通り予習しましたのでシェアしていきます。

仙台三十三観音とは

世界には、信仰の拠点である教会や寺院を巡拝するコース(巡礼路)がいくつもあります。国内でよく知られているのは、「お遍路さん」でおなじみの「四国八十八ヶ所」でしょうか。国内で最も古いとされるのは、大阪、京都、奈良、和歌山、兵庫、滋賀、岐阜の2府5県に点在する33の寺院(観音)に参拝する「西国巡礼」で、約1300年の歴史があるそうです。

こうしたコースは他にもいくつか存在します。このうち、仙台で西国巡礼と同じ33か所の観音を巡るのが、仙台三十三箇所観音霊場(仙台三十三観音)です。仙台城のお膝元、川内亀岡(青葉区)の法楽院観音堂を一番札所として、城下や近隣で観音像を祀っている場所を大体時計回りで巡り、三十三番札所である向山(太白区)の鹿落観音堂に至ります。

仙台三十三観音は、伊達家四代藩主である伊達綱村が元禄時代(1688〜1704年)に選定したと伝えられています。歴史好きにはいわゆる「伊達騒動」を乗り切ったことで知られる綱村ですが、鹽竈(しおがま)神社をはじめ、今も残る多くの寺社を造営・建立した人物でもあるそうです。仙台三十三観音も、地域の信仰や寺社の存在を重んじた綱村ならではのアイデアだったのかもしれませんね。

(以下、本文中では札所の番号を洋数字で表記します)

▲札所になっている観音堂の一つ

仙台三十三観音 札所と所在地(地名は現在のもの)

1 法楽院観音堂 川内亀岡
2 寶嶺山 充国寺 北山
3 資福寺 観音堂 北山
4 通寶山 永昌寺 北山
5 昌繁寺 観音堂 北山
6 荘厳寺 観音堂 北山
7 大願寺 観音堂 北山
8 宝光院観音堂 本町
9 満願寺観音堂 本町
10 善入院観音堂 原町
11 眺海山康国寺 東照宮
12 慈恩寺 観音堂 榴岡
13 松風山 金勝寺 榴岡
14 大林寺 観音堂 新寺
15 愚鈍院 観音堂 新寺
16 成覚寺 観音堂 新寺
17 阿彌陀寺 観音堂 新寺
18 光壽院 観音堂 新寺
19 皎林寺 観音堂 荒町
20 満谷山 圓福寺 石名坂
21 瑞雲寺 観音堂 連坊
22 福現山 保壽寺 連坊小路
23 松音寺 観音堂 新寺
24 陸奥国分尼寺 白萩町
25 陸奥国分寺 木ノ下
26 両全院 観音堂 日辺
27 満蔵寺 観音堂 日辺
28 円乗寺 観音堂 上飯田
29 祐善寺 観音堂 今泉
30 高福院 観音堂 今泉
31 落合観音堂 四郎丸
32 常蔵院 観音堂 長町
33 鹿落観音堂 向山

北山や新寺・連坊といったお寺の多い地域に集中しているだけでなく、26〜30番は若林区の六郷地区にあるなど、郊外にもそれなりにあります。31番の落合観音堂に至っては、名取市との境が目の前です。これらの札所をいかに効率よく巡れるかが、今回のポイントになってくるかもしれません。

ちなみに、仙台で「観音さま」と言えば、「仙台大観音」を連想する方も多いのではないでしょうか。いつからか「仙台のラスボス」と呼ばれるようになり、海外からのお客さんにも大人気のようですが、仙台大観音の建立は1991(平成3)年のことです。残念ながら、仙台三十三観音には含まれていません。

▲日常風景に溶け込んでいる姿が国内外で大人気です

なぜ「三十三観音」なのか?

では、なぜ札所は「33か所」なのでしょうか。
仏教では、観音菩薩は釈迦の慈悲心を体現する存在とされています。あらゆる形の苦難から人々を救う力があるとされる観音菩薩は、救済の時、三十三の化身を現して法を説くと言い伝えられてきました。
「西国巡礼」の札所は、この数字になぞらえて、33か所が置かれたとされています。時代が下ると、西国巡礼にあやかる形で各地の観音堂を33(地域によっては34)か所巡るコースが作られるようになり、それらに仙台三十三観音もならったようです。

なぜマイナーに?

仙台三十三観音巡りは、江戸時代には庶民の間で盛んに行われていたと言います。でも、今ではほとんど耳にすることはありません。
廃れてしまった理由はいくつか考えられますが、戊辰戦争(1868〜69年)で仙台藩が新政府軍に敗れたことや、時を同じくして進められた「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく=仏教を排斥する運動)」の影響を避けては語れないようです。これにより、仙台周辺では多くの寺社が荒廃し、廃寺になるところも相次ぎました。仙台三十三観音の札所でも、廃寺になり観音堂だけが残されているところや、定められた当時とは別の寺に観音像を祀っているところも少なくありません。中には私有地の一角になっている所もあるのだとか。
古いお寺というと、時を経ても変わらず残っているイメージもあるかもしれませんが、実際には時代の変化に大きな影響を受けていることが分かります。
また、これは後に巡り始めてから痛感することになるのですが、定められた当時とは交通事情が様変わりしています。交通手段自体は発達しているのですが、巡礼の「動線」が今の交通網と合っておらず、巡りにくくなっていることも影響しているのではないでしょうか。

▲私有地にあるお堂(参拝で立ち入ることは可能)

巡り方に決まりはある?

ありがたいことに、仙台三十三観音巡りには、詳しいルールは決められていません。江戸時代のように全てを徒歩で巡る必要もなく、クルマで巡っても問題は無いようです。四国の「お遍路さん」のように白装束をまとう必要もありません。また、札所を順番通りに巡らなければならないという決まりも無いので、どこから始めても大丈夫です。これは意外に思われる方も多いのではないでしょうか。行ける時に行けるところへフリースタイルで楽しめるのが、仙台三十三観音巡礼なのです。

なお、順番通りに巡ることを「順打ち」、逆から巡ることを「逆打ち」と言います。最もポピュラーな巡り方が順打ちなのは言うまでもありません。ウェブで「仙台三十三観音」と検索すると、順打ちで楽しまれている方のブログをいくつか見つけることができます。今回の取材にあたっても、参考にさせていただきました。

ならば、私も順打ちで行くべきかというと、そう素直に思えないのが私という人間であり、ウラロジ仙台というメディアです(?)。すでに多くの方々が巡り終えている順打ちを後追いするよりも、あえて逆から巡ったほうが面白いのでは、と思ってしまいました。
ちなみに、逆打ちは一般に順打ちよりも難易度が高いことから、「四国八十八ヶ所」などでは順打ちの3倍の功徳が積める(!)ともされているそうです。特に「うるう年」のご利益が大きいらしいですが……去年だったかー!
調べた限り、「逆から巡ると地獄行き」といった恐ろしい記述を見つけることはできなかったので、今回は「逆打ち」でチャレンジすることにしました。

今回のレギュレーション!

自由に巡ってもいいとは言え、全く何の縛りも無いのは何となく無粋に感じます。
そこで、簡単なルールを設けました!

  1. 移動は徒歩のほか、鉄道、路線バス、レンタル自転車など公共の乗り物とすること。
    先人のように全て徒歩というわけにはいきませんが、自家用車を使わないことにはこだわりたいと思います。自転車が公共の乗り物なのかは議論の余地がありますが、常識的な範囲(距離・時間)で利用する分にはOKとさせてください。
  2. 全ての札所に「キャッチコピー」をつけること。
    ただ淡々と巡るだけではつまらないので、それぞれの札所の特徴を表す一言コピーを(勝手に)つけていきたいと思います。少しでも仙台三十三観音のことを身近に感じてもらえたら嬉しいです。
  3. 札所ではウラロジ仙台の発展と、メンバー・読者の健康を願うこと。
    「宝くじが当たりますように」といった私利私欲に走ることなく、あくまでもウラロジ仙台の未来とメンバー・読者の息災を願う……清い心で巡ることにします。

いざ、33番札所「鹿落観音堂」へ!

セブンイレブンアプリのバッジ機能サ終をきっかけに、仙台三十三観音巡りに出立することになったかいさん。
順番通りに巡るよりも難易度が高いとされている「逆打ち」に挑戦する道中の様子は、次回以降の無茶ぶりクエストでたっぷりお届けします!
仙台三十三観音を知らなかった方も、いつか巡ってみたいと考えていた方も、そしてかつて巡ったことがある方も、かいさんが辿る道程を一緒に見守っていただければ幸いです。

それではまた次回の無茶ぶりクエストでお会いしましょう!

ウラロジ仙台では、作品を発表したいクリエイターの方を募集しています!

ウラロジ仙台では、地元・仙台を中心に活動しているクリエイターの方々を応援しています。

作品をweb上で発表する機会を作ることで、創作活動やコンペへの応募に向けてモチベーションがほしい」「もっと多くの人に見てもらいたいから一緒に発信方法を考えてほしい……そう考えている方は、ぜひウラロジ仙台編集部(代表メール:info@studio-soda.com)まで、作品(もしくは作品に関係する企画・アイディアなど)を添えてご連絡ください。

エッセイ・小説・漫画、その他ジャンルは問いません。
ウラロジ仙台編集部と一緒に、魅力的な作品をつくってばんばん世の中へ出していきましょう!

 

著者紹介

佐々木かい(ささき・かい)

フリーの聞き手・書き手。1990(平成2)年、仙台市生まれ。地方新聞社の記者、社会福祉法人の広報職などを経て現職。主に地元企業の人材採用や情報発信のお手伝いなどに面白さを感じています。【急募】仕事と同じくらい楽しいこと【服装自由】

執筆:佐々木かい
編集:S